2022年10月17日

心不全治療薬のエンレストは少量でもいいかも

心不全治療薬のエンレストは少量でもいいかも
 
Dose-Response to Sacubitril/Valsartan in Patients With
Heart Failure And Reduced Ejection Fraction


41017.PNG



 一般的な治療ガイドラインは目標を掲げてそれに向かって進むことを勧奨していますが
心不全においても高用量の治療薬が効果ありとするデータが多くある一方で、目標用量に
漸増する利点も示されています。
なぜならば、多くの患者さんが低用量で治療されて効果を示しているからです。
心不全治療のガイドラインでは、エンレスト200mgを1日2回服用で勧めています。
しかしランダマイズ試験後の実際の臨床現場では、その後漸減する用量で治療されており
ACE阻害薬と比較しても遜色がないとされています。
最近のデータによりますと、目標のエンレスト200mg×2/日に達成している患者は14%との
事です。

 今回、低用量のエンレストでも効果は高用量と同程度との文献がありましたのでブログ
します。


1) 方法
   心駆出率が40%以下の心不全(HFrEF)患者794名を登録しています。
   エンレストの平均用量を112mgの低用量群、342mgの中用量群、379mgの高容量群の
   3群に分けて12か月経過観察をしました。
   主要転帰はNT-Pro-BNPと心駆出率(本院での主な検査)
   その他(high-sensitivity cardiac troponin T, soluble ST2, atrial
   natriuretic peptide, urinary cyclic guanosine monophosphate),
   Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire-23 scores, and parameters
   of cardiac reverse remodeling(left ventricular EF, indexed left
   atrial and ventricular volumes, and E/e’)です。


2) 結果
   NT-Pro-BNPと心駆出率及び心リモデリングに関して、3群に差はありませんでした。




      41017-2.PNG


     ・NT-Pro-BNPは血液検査での心不全マーカー
     ・LVEFは心エコー検査での心駆出率(正常は60%以上)


3) 考察
   本論文はPROVE-HF研究の後解析です。エンレストの投与量を3群に分けて解析して
   います。
   高用量群は若い人、血圧が高い、男性、ベースラインで腎機能が良い人が主体でした。
   エンレストの副反応である血圧低下、めまいは低用量群に多い結果でしたが、低用量で
   十分で漸増が出来にくい人が、この群を占めていたためと想像しています。
   現実には400mg/日を達成している人は14%で、100mg/日の人は51%です。
   今後はエンレストの成分用量の見直しも検討されるべきかもしれません。






私見)
 心駆出率40%以下とは明らかな心不全患者さんです。利尿薬、SGLT-2阻害薬、ジギタリス
 製剤などがガイドラインに載っています。新しいエンレストも各方面から推奨されています。
 実地医家の肌感覚では50mgを1日2回投与から抜け出せませんでした。
 私の座右の銘「ソフトランディング」がいいのかもしれません。

 副院長をはじめ職員の皆さん、よろしく。








1 エンレスト 本論文.pdf

2 エンレスト.pdf

3 心不全治療薬の三種の新器.pdf

4 ARNIを中心とした心不全治療の再考.pdf

5 心不全治療薬のエンレストは万能薬か.pdf










posted by 斎賀一 at 17:58| 循環器