2022年10月03日

2型糖尿病における血糖降下薬

2型糖尿病における血糖降下薬

Glycemia Reduction in Type 2 Diabetes − Glycemic Outcomes
[N Engl J Med 2022;387:1063-74]



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 2型糖尿病の治療基準は、ヘモグロビンA1c(以下A1c)を用いています。
また従来のガイドラインでは、治療薬の第一選択薬はメトグルコです。
それに他の血糖降下薬を追加していくのが一般的ですが、血糖降下薬の比較解析した研究が
今まであまりなかったとの事です。

 今回雑誌NEJMに、メトグルコに追加した薬剤を比較検討した論文が掲載されています。


1) 方法
   対象はU型糖尿病の30歳以上、罹病期間10年未満で、メトグルコを少なくとも500mg/日
   以上服用しており、スタディの6月前まではその他の血糖降下薬を服用していない。
   更に今後の追加薬剤として注射薬も選択可能で、ヘモグロビンA1c値が6.8〜8.5%の患者
   を対象とした試験です。
   追加される血糖降下薬は、よく使用される4種類の血糖降下薬で、その有効性を比較して
   います。
   参加者を、インスリングラルギンU-100(グラルギン;持効型つまり長時間作用インス
   リン)を投与する群、スルホニル尿素薬グリメピリド(アマリール)を投与する群、
   グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬リラグルチド(ビクトーザ)を投与する
   群、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬シタグリプチン(ジャヌビア)を投与
   する群に無作為に割り付けました。
   主要転帰は、ヘモグロビンA1c値7.0%以上としています。
   年4回測定し、結果は測定した次の受診時に確認されました。
   二次的代謝転帰は、糖化ヘモグロビン値7.5%超が確認されることとしています。
   持効型インスリンのグラルギンは、二次的代謝転帰つまりHgA1cが7.5以上の時に適応と
   なっています。
   三次的代謝転帰は、二次的代謝転帰後に持効型インスリンのグラルギンの使用の有無とは
   関係なくHgA1cが7.5以上の場合としています。

2) 結果
   2型糖尿病に対してメトホルミンを服用していた5,047例が、平均5.0年間追跡されま
   した。
   ヘモグロビンA1c値 7.0%以上の累積発生率には、4 群間で有意差が認められています。
   主要代謝転帰の発生率は、グラルギン群(100 人年あたり 26.5)と
   リラグルチド群(26.1)が同程度で、グリメピリド群(30.4)と
   シタグリプチン群(38.1)よりも低い結果です。
   ヘモグロビンA1c値7.5%超(二次的転帰)に関しては、群間差は主要転帰と同様の傾向
   を示しています。ベースライン時のヘモグロビンA1c値が高かった参加者では、グラルギン
   リラグルチド,グリメピリドが、シタグリプチンよりも効果がありました。
   重症低血糖の頻度は全体として低かったが、グリメピリド群では患者の 2.2%に発現し、
   グラルギン群(1.3%)、リラグルチド群(1.0%)、シタグリプチン群(0.7%)よりも
   有意に頻度が高い傾向です。リラグルチドの投与を受けた患者では、
   ほかの3群の患者よりも消化器系副作用の頻度が高く、体重減少が大きかった。

4) 結論
   4種類の薬剤は、いずれもメトホルミンに追加した場合にA1cを低下させていました。
   しかし、A1cの目標値の達成と維持には、グラルギンとビクトーザが、他の2剤よりも
   わずかではあるが有意に有効でした。

5) 考察
   糖尿病治療の目標はA1cが7.0以下に到達ですが、残念ながらコントロール不良が多く、
   メトグルコ2000mg+追加の血糖降下薬を処方している例が71%です。
   本試験の追加薬の4種類は全てFDAに安全性が担保されていますが、グラルギンと
   ビクトーザが効果的でした。
   グラルギンは最もA1c7.5以下を維持しており、39%のみがコントロール不良でした。
   DPP阻害薬のジャヌビアは、ベースラインのHgA1cが高い場合はコントロールも困難
   でした。
   副作用の低血糖は4種類とも稀でしたが、持効型インスリンのグラルギンが多い結果です。
   ビクトーザとジャヌビアは体重減を認めています。
   インスリンのグラルギンとアマリールは、比較的体重は安定していました。
   ビクトーザは消化器症状の副作用が多い傾向です。
   残念ながらSGLT-2阻害薬は、研究期間に間に合わず本スタディに採用されていません。
   ジャヌビアが一番効果が低く、ベースラインが不良例では特に効果が乏しい傾向でした。





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 glargine   長時間作用インスリン
 glimepiride   サルファ剤 アマリール
 liraglutide、GLP-1   ビクトーザ
 sitagliptin、DPP阻害薬   ジャヌビア







私見)
 個々の患者さんに則した治療であるテーラーメイドメディスンが大事ですが、短期的には 
 アマリールもコントロールの意味で価値がありそうです。











posted by 斎賀一 at 19:41| 糖尿病