2022年09月20日

心血管疾患の二次予防における配合剤の戦略

心血管疾患の二次予防における配合剤の戦略
 
Polypill Strategy in Secondary Cardiovascular Prevention
[N Engl J Med 2022;387:967-77.]



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 心血管疾患の発症後における再発予防(二次予防)のための投薬に対して、なんと50%近くの
患者さんが服薬アドヒアランス、つまり服薬遵守をしていないとの事です。
このアドヒアランスの向上のために、少量アスピリン+降圧薬+高脂血症治療薬の3者配合薬に
おける有効性を調べたスタディが、雑誌NEJMに掲載されています。


1) 過去 6ヵ月以内に心筋梗塞を発症した患者を、三者配合剤を基本とする群と、通常治療を
   行う群に振り分けています。
   登録患者は、75歳以上又は65歳以上の場合は糖尿病、中等度以上のCKD
   (eGFRが30〜60)、心筋梗塞の既往、冠動脈再建術の既往(PCI)、
   冠動脈バイバス術(CABG)の既往の一つでもある患者としています。
   抗凝固薬を服用している患者は除外しています。
   配合群では、アスピリン(100 mg) 
   降圧薬のACE阻害薬であるラミプリル(ramipril;2.5 mg,5 mg,10 mg のいずれか)
   スタチンのリピトール(20 mg または 40 mg)を使用しています。
   リピトールは患者の既往歴から、当初より減量もしています。
   ACE阻害薬を服用していない場合はラミプリル2.5mgより開始し、他のACE阻害薬を服用
   している場合は、相応のラミプリルに変更して3週間後にチェックしています。
   通常群はヨーロッパガイドラインに沿って処方しています。
   経過は6、12、24か月後に診察し、追加で18、36、48か月後に電話診療しています。
   診察時に血圧、血糖を測定し、6、24か月ごとに服薬アドヒアランスを調べました。
   研究は113施設で行われました。
   主要転帰は、心血管死、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳梗塞、緊急血行再建の複合
   としています。
   調査期間は2016年8月から2019年12月まで調べました。

2) 結果
   2,499例が無作為化され、追跡期間は36ヵ月でした。
   主要転帰イベントは、配合群の1,237例中118例(9.5%)、通常治療群の1,229例中
   156例(12.7%)に発生しました。
   患者報告による6か月後の服薬アドヒアランスは、配合群のほうが通常治療群よりも高く
   70.6%対62.7%でした。更に24か月後の服薬アドヒアランスは74.1%対63.2%でした。
   有害事象は両群で同程度でした。

3) 考察
   本研究の結果は国、年齢、糖尿病の有無、CKDの程度、以前の血管再建術に関係なく認め
   られました。
   最初の心筋梗塞の平均発症年齢が、男性で65.6歳、女性で72歳でしたが関係はありま
   せんでした。
   服薬アドヒアランスが適切ならば、心血管疾患のリスクを27%減らすことが出来ます。
   コレステロールの値と関係なく効果が出ている点は、ラミプリルとリピトールの
   pleiotropic effect(薬効を超えた効果)なのかもしれませんが、今後の研究が待たれ
   ます。また少量アスピリンの効果も、服薬アドヒアランスの改善により20%ありました。
   残念ながら全死亡率は両群で差はなく、配合群では癌死亡率が高まります。





  
私見)
 本研究は高齢者を対象にした二次予防効果です。
 未だ配合剤は市上されていませんが、今できることは患者さんに服薬アドヒアランスの重要性
 を説明することだと思います。
 参考までにsuppleを下記に掲載します。







polypill nejm supple1.pdf










posted by 斎賀一 at 21:07| 循環器