慢性蕁麻疹
Chronic Urticaria
[N Engl J Med 2022;387:824-31.]
[N Engl J Med 2022;387:824-31.]
蕁麻疹がコントールされない患者さんを多く経験します。
原因の検査を希望されますが、ガイドラインも積極的には推奨していません。
今回雑誌NEJMに総説が載っていましたのでブログします。
1) 急性と慢性の区切りは6週間としています。
(本院では従来、1週間と説明していました。)
慢性蕁麻疹は、あらゆる年齢層に認められます。
QOLの低下は狭心症患者に匹敵します。
2) 分類
特発性(spontaneous)、血管浮腫(クインケ浮腫)、誘発性蕁麻疹(運動蕁麻疹)、
寒冷蕁麻疹、その他温熱、圧迫により生ずる蕁麻疹があります。
3) 病態は表皮内のmast細胞の脱顆粒により、ヒスタミンをはじめサイトカインが放出される
ためです。
それらのサイトカインが血管を拡張し、血管透過性が亢進し皮下に症状を引き起こし
ます。
慢性の蕁麻疹は急性と異なり、その原因は不明のことが多いです。
水性蕁麻疹は、水に融解した混合物が皮膚に浸透して蕁麻疹を誘発します。
基礎疾患として、関節リウマチ、感染症、血液の腫瘍等がありますが稀です。
急性の場合は24時間以内に自然消退しますが、2/3は蕁麻疹と血管浮腫を同時に発症し
ます。
残りの1/3は蕁麻疹か血管浮腫の単独です。
血管浮腫は蕁麻疹と同じ病態ですが、蕁麻疹よりも病態の場は深く、真皮や皮下組織に
及びます。
疼痛を伴ったり、24時間以上の病変であざを残す場合は、他の疾患、血管炎などの鑑別が
必要です。
コリン性蕁麻疹は寒熱が誘因ですが、運動により増悪し食物が関与する場合があります。
例えは、アルコール、解熱鎮痛薬(NSADs)、生理、排卵、などです。
4) 多くの慢性蕁麻疹は原因が不明ですが、感染症(B型肝炎、C型肝炎、E-Bウイルス
感染症、ヘリコバクター感染症)、リウマチ性疾患、甲状腺疾患、血液系腫瘍、
卵巣疾患、避妊治療が関与している場合もあります。
5) 治療の第一歩は鎮痛解熱薬を避けてアセトアミノフェンに切り替えるべきです。
誘因となる原因食物を経験的に排除する事は、明白は利点は認められておらず、推奨
されていません。
先ず選択する治療薬は第二世代の抗アレルギー薬です。
第一世代は副反応があり推奨されていません。
定期服用が推奨されており、頓用(add on 療法)は効果を認めていません。
このstep1で50%がコントロールできます。
次にstep2とした第二世代の抗アレルギー薬の4倍量の増量も可能で、FDAも承認して
います。
更にH2-抗ヒスタミン薬の(本院ではタガメット)追加も可能です。
ロイコトリエン拮抗薬も有効です。
(その他、ステロイド薬も含めて本院では採用していないため省略)
6) エビデンスに叶う生化学的血液検査はありません。
私見)
クインケ浮腫と慢性蕁麻疹の合併が意外に多い、コリン性蕁麻疹と運動との関連性、
第二世代の4倍量の投与(従来本院では倍量療法)など私にとって新知見がありました。