卵巣と子宮付属器の病変
Lesions of the Ovary and Fallopian Tube
[N Engl J Med 2022;387:727-36]
[N Engl J Med 2022;387:727-36]
雑誌NEJMに卵巣および子宮付属器の病変について総説が載っています。
要点をブログします。
1) 卵巣と卵管の疾患は閉経前の女性で35%、閉経後で17%罹患するとのデータがあります。
卵巣と卵管は同じ血管領域のため、その病変の対応は同じ観点となります。
卵巣の悪性腫瘍は、卵管の末端に浸潤しやすい構造です。
早期の癌でも2〜10%がこの卵管に潜在しています。
従って卵巣の悪性腫瘍の切除手術の際には、卵管も一緒に摘出します。
2) 鑑別診断は困難な場合があります。
基本的には組織診断が必要ですが、侵襲的診断の処置によって悪性細胞が播種する危険が
あります。
3) 卵巣および付属器における疾患に対しては、常にその緊急性が問われます。
子宮外妊娠、茎捻転、悪性病変の有無等の鑑別が大事です。
患者の妊娠の希望にも沿わなくてはなりません。
胎児の安全性も重視する必要があります。
4) 高齢は悪性腫瘍の危険因子です。
また悪性腫瘍の20%に、遺伝子異常が見つかっています。
5) 経腟の内診は精度に限界がありますが、外科的処置の情報には有効です。
MRIの感度は81%で、特異度は98%です。CTは診断の精度において劣ります。
腫瘍マーカーはCA-125が有効です。卵巣及び卵管の悪性上皮性腫瘍では、80%の
精度です。
閉経後の女性では感度は69〜87%、特異度は81〜91%です。
CA-125が35単位以上で、腫瘤を認めれば、婦人科の癌専門医にコンサルトすべきです。
但し進行がんの20%の患者にCA-125は正常です。
また良性病態でもCA-125は増加します。
6) 最も多い卵巣の病変は嚢胞です。ほとんどが良性で50〜70%は自然に消退します。
また薄い隔壁があっても悪性のリスクはありません。
20年の経過観察で、悪性化はありませんでした。
症状がある場合や大きな嚢胞は手術の適応となりますが、基本的にはエコーでの管理観察
となります。
50歳以上の1,363例で、嚢胞が小さくても単純でなくcomponent(構成)がある場合を
経過観察しますと、7か月以内に悪性の所見が現れます。
ACOG学会は充実性病変がない安定した(変化のない)嚢胞病変は1年間の経過観察で
よく、充実性病変があっても、安定した嚢胞病変は最大2年までは経過観察も可能です。
7) 出血性嚢胞、内膜症、成熟型奇形腫は全て良性です。
症状がある場合は手術の適応となります。しかし今日では症状のない奇形種は経過観察と
なっています。
8) 経過観察にエコー検査は有効です。
私見)
本院では腹部エコーが検査の主体です。下記に論文を掲載します。
卵巣腫瘍1.pdf