2022年09月05日

卵巣・子宮付属器の病変

卵巣・子宮付属器の病変

院内勉強予習編
 


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 医療機関は女性の職場です。患者さんばかりでなく、職員の皆さん御身も勉強
する必要がありますので、予習編をブログします。

 ・ 先ずは、生命の進化の過程を説明します。

   単細胞生物から多細胞生物に進化する過程で、多細胞だけでは
   中心に酸素が行き渡りません。そこで、ある程度の多細胞になった
   時点で分化が起きます。


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   外側の鎧の部分が外胚葉、中心の臓器が内胚葉、その間を中胚葉
   が埋めます。外胚葉の一部が嵌入して、神経組織が発生します。
   神経組織は外胚葉です。

 ・ 生命の進化と、受精卵からの人体の発生は全く同じです。生命の不思議で、
   受精卵は胎内で進化の過程を経て、臓器が形成され胎児が形成されます。

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        (ネットより)


今回のテーマの卵巣・付属器は中胚葉です。

 ・ 先ず卵巣腫瘍から

   腫瘍の発生は、その発生母地の細胞が悪性変化して癌化しますので、
   腫瘍の組織は、発生母地に似ています。悪性度とは、正常の組織から、
   どの程度逸脱したかです。似ても似つかなければ、未分化癌の範疇に
   なります。卵巣の組織は、生命の源のため、あらゆる組織系が発生します。
   対照的に、胃がんは腺癌、肺がんは腺癌と扁平上皮癌が主体です。

 ・ 話を卵巣に戻しますと、卵巣、子宮、付属器は、中胚葉の上皮である
   中皮より発生します。
   下記の図の体腔上皮である、中皮の一部が特殊化して、卵巣の上皮となり、
   嵌入したミュラー管から、卵管、子宮、膣が形成されます。


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    (中皮とは、上皮の一種で、心膜、胸膜、腹膜など(まとめて
    漿膜という)をつくっている上皮の事を特別に呼ぶ名前。
    心膜、胸膜、腹膜は、それぞれ心膜腔、胸膜腔、腹膜腔
    という体内にある閉じた空間(=体腔という)の表面を
    覆っている膜です。)


 ・ 下記に卵巣腫瘍の発生母地を示します。
   (尿路系上皮に似たBrenner腫瘍と十二指腸のBrunner腫瘍を混同
    しないでください。)
   つまり、中皮である漿膜上皮から発生する腫瘍が嚢胞腺腫(cystic
   adenoma)で、それには良性から境界領域、悪性まであります。
   その他として、胚細胞、つまり卵そのもの、卵胞を包む層からの
   腫瘍があります。


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 ・ 話は戻りますが、卵巣が発達すると表層上皮が間質まで入り広がり、
   腺や嚢胞を形成します。従って間質からも嚢胞腫瘍が発生します。


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  下記のPDFに、卵巣腫瘍の組織分類を示します。
  
 ・ ネットの極めて簡単な下記の図から俯瞰しますと、殆どが嚢胞性腫瘍
   (cyst adenoma)です。
  

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       (ネットより)




私見)
 卵巣・子宮付属器の腫瘍は、殆どが良性のcyst adenoma(上皮性腫瘍)です。
 その他は多岐にわたりますが、患者さんもその診断名をきちんと担当医から説明してもらってください。ステージにもよりますが、組織診断により、予後がかなり異なります。

参考書籍
 ルービン病理学




卵巣腫瘍の臨床病理学的分類.pdf











posted by 斎賀一 at 22:39| 婦人科