2022年06月25日

ペニシリンアレルギー・その1

ペニシリンアレルギー・その1

先ずはセファロスポリン系
 
Penicillin allergy frameworks enable risk stratification
of cephalosporin allergy labels



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 セファロスポリン系の抗生剤(バナン、オラスポア、メイアクト、ケフレックス、オラセフ、
ケフラール、セフゾンなど)にアレルギー反応があると記載されている人(CAL)でも、実際は
アレルギー試験では殆どが陰性で、ペニシリンアレルギー対策を利用できるとした報告がありま
した。以前の研究でも真のアレルギーは数十%とのことでした。


今回の報告を纏めますと

1) 以前にセファロスポリン系アレルギーの既往がある人(CAL)322人を、2014年から
   2019年にかけて調べています。288人(89.4%)が皮膚試験と経口薬のチャレンジ
   テストを行っています。
   最初のアレルギー反応の記載から本試験までの期間は、平均で5.14年です。

2) 23例は皮膚テスト、パッチテスト、経口チャレンジテストの何れかが陽性でした。
   その内21例は、皮膚テストかパッチテストのみで経口チャレンジは行っていません。
   77.1%が試験で陰性のため、経口チャレンジを行っています。
   その中の99.1%が経口薬服用に認容性、つまり服用が可能でした。

3) アレルギー反応がハイリスクの人や、静脈投与でアレルギー反応のある人は、アレルギー
   試験が陽性の確立が高まります。
   しかし、驚くことに静脈投与でアレルギー反応があった人でも、アレルギー試験の陽性率
   は14.9%で、経口チャレンジでは陽性率は1.4%でした。
   低リスクの人は98.5%がnegative predictive value、つまり服用しても大丈夫でした。

4) アレルギー反応が軽症で、経口薬の場合だけのアレルギー反応者を低リスクとすると、
   CALの344名中78%の270名が低リスクとされます。その中でアレルギー試験が陽性は
   2.2%です。つまりnegative predictive valueは97.8%となります。

5) セファロスポリン系にアレルギー反応のある人全てが真の意味でのアレルギー反応で
   なく、riskyではないと結論づけています。






私見)
  統計的な話は苦手なので、勿論省略しますが、セファロスポリン系アレルギー反応の
  低リスクの定義を本院並みに行います。(薬液が入手不可能なので、皮膚テスト、パッチ
  テストは施行出来ないのが主な理由です。)

  低リスクとは
  ・アレルギー反応が経口薬で静脈投与の場合のケイスは除外
  ・アレルギー反応がアナフィラキシー反応やTENなどの重篤症状があれば除外
  ・アレルギー試験として経口チャレンジテストのみを行い陰性の場合
   (本院では段階的、つまり1/10の少量のチャレンジテスト)
  以上を全て満たした場合を低リスクと定義します。
  低リスクと判断されたらセファロスポリン系の投与は可能で、CALのラベリングを外す事が
  出来ると考えています。








本論文.pdf