2022年06月10日

急性及び慢性腎臓病におけるeGFRとアルブミン尿

急性及び慢性腎臓病におけるeGFRとアルブミン尿
 
Uses of GFR and Albuminuria Level in Acute and Chronic Kidney Disease
 [N Engl J Med 2022;386:2120-8.]



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 急性及び慢性腎臓病の診断に最も有効なツールは、アルブミン尿とeGFRであるとの総説が
雑誌NEJMに掲載されています。
以前にも同様の内容をブログしましたが、改めて今回の総説を読んで、自分の中で整理して
みました。


1) 急性腎臓病(AKD)は経過が3か月以内、慢性腎臓病(CKD)は3か月以上です。
   急性腎障害(AKJ)は発症7日以内を言いますが、AKDに含まれます。

2) GFRは腎臓の糸球体の数、つまりネフロンの数を表しています。
   年齢と共にネフロンは硬化し、血圧や糖尿病などの疾病でもその数の減少が起きます。
   つまりGFRが低下してきます。
   しかし生理学的にネフロンの数が減少すれば、それを補うために単一のネフロンは、
   ろ過量を増やす傾向となります。hyperfiltrationです。
   そのhyperfiltrationは長い経過では、ネフロンの障害(糸球体内圧亢進)を誘発して
   しまいます。

3) 現在では糸球体のろ過率を表す方法としては、eGFRが一般的で推奨されています。
   eGFRの計算式ではクレアチニンが世界で一般的に使用されていますが、人種差もない
   シスタシンCが推奨されています。

4) アルブミン尿は糸球体血管内皮の透過性障害を表します。
   アルブミン尿は腎臓病の初期から認められ、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎など全ての
   腎疾患において遅かれ早かれ出現してきます。
   現在ではアルブミン尿の測定は、早朝のスポット尿を用います。
   尿中アルブミン(mg)/尿中クレアチニン(gr)比で求めます。

5) GFRが60以下、もしくは尿中アルブミン(mg)/尿中クレアチニン(gr)比が30以上の
   場合は腎臓病(AKD,CKD)を想定します。AKIはGFRのみの低下です。
   確定診断となりますと、年齢や病気、合併症により異なってきます。

6) アルブミン尿の増加はARBの治療適応となります。
   最近ではSGLT-2阻害薬も有力視されています。

7) GFRの低下とアルブミン尿の増加は、心血管疾患(CVD)の予測因子です。
   CVDの危険率を考えた時には、クレアチニンよりもシスタシンCを用いたGFRの方が有効
   とのデータがあります。

8) 高齢者はCKDの罹患率が高く、また腎不全の相対的リスクは低いので、高齢者は若い人と
   比較してGFRの閾値は低いかもしれません。
   (高齢者の場合はeGFRがある程度低下しても、許容範囲かもしれません。)




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          (ACRは尿中アルブミン/クレアチニン比)









私見)
 50歳以上の外来慢性疾患の患者さんには、年一回の便潜血、胸部レントゲン、尿アルブミン
 検査は必要と感じます。











posted by 斎賀一 at 20:07| 泌尿器・腎臓・前立腺