2022年06月02日

小児における抗生剤の不適切使用

小児における抗生剤の不適切使用

Association of Inappropriate Outpatient Pediatric Antibiotic Prescriptions
With Adverse Drug Events and Health Care Expenditures


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                   (高橋杉雄氏)



 雑誌JAMAに、小児において、依然として抗生剤の不適切な投与が、
外来治療で行われているとのスタディらしき、警告がなされています。


 1) 生後6か月から17歳が対象です。
    外来での対象疾病は、細菌感染として、中耳炎、咽頭炎、副鼻腔炎です。
    ウイルス性として、インフルエンザ、上気道炎、細気管支炎、気管支炎、
    非化膿性中耳炎です。
    期間は2016年4月1日から2018年9月30日までです。
    ガイドラインに沿っている場合が適切で、ガイドラインから逸脱している
    場合が、不適切としています。
    主要転帰は、不適切使用と副作用の関連性を危険率で表しています。

 2) 結果
     
     2,804,245人の小児が登録されました。
     52%が男児、平均年齢は8歳です。
     不適切使用は、細菌感染で31〜36%、ウイルス性では4〜70%でした。
     不適切使用における副作用は、腸内感染症のクロストリジウムが、
     危険率6.23、重篤なアレルギー反応の危険率が、4.14でした。
     又、不適切使用が医療費の高額に繋がっています。

 3) 適切使用とは何か。
     化膿性中耳炎では、アモキシシリン。
     化膿性咽頭炎では、ペニシリンかアモキシシリン。
     副鼻腔炎では、アモキシシリンかオーグメンチン。
  
    不適切使用とは。
     ジスロマック、セフジニル、セファレキシン、
     時にオーグメンチンです。
    (つまり、不適切とは、ガイドラインに則らない治療の様です。
     時に、ガイドラインとは別の治療をしている私のような医師は、
     不適切人物かもしれません。)

 4) 副反応
     
     皮膚の副作用として重篤なのは、スティーブ・ジョンソン症候群、
     又はTENが、0.01例/10,000人/日の発生です。
     発疹や蕁麻疹は、1.49〜9.55例/10,000人/日です。
     クロストリジウム感染は、6.23の危険率、
     その他の下痢症は、1.30の危険率、嘔吐と腹痛は、1.20の危険率です。

 5) 医療費の高額化
     
     抗生剤を投与することによる医療費が、上がるばかりでなく、
     副作用の治療費、検査費が加算されます。



私見)
 最近、私は防衛研究所の高橋杉雄氏にハマっています。
 「戦争を見ている人間と、戦争をしている人間は違います。戦場で闘っている
人間には、知恵と決断が必要です。勿論100%の情報を得ることは出来ません。
従って、あるところで諦めなくてはなりません。そのうえで決断が必要と
なります。」
 高橋氏の見解には、一貫して覚悟があり、冷静さを伴っています。
 彼の様に信念をもって、冷静に臨床の場で決断する医者になりたいものです。





抗生剤 小児 JAMA.pdf











posted by 斎賀一 at 13:20| 小児科