2022年05月21日

妊娠中の軽度慢性高血圧の治療

妊娠中の軽度慢性高血圧の治療

Treatment for Mild Chronic Hypertension during Pregnancy
[N Engl J Med 2022;386:1781-92.]



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 アメリカでは、妊婦の2%以上で高血圧が認められるとの事です。
その場合には3〜5倍の危険率で子癇前症、流産、低出生体重児、死産が起きます。
更に妊婦においては5〜10倍の危険率で妊婦の死亡、心不全、脳卒中、肺水腫、急性腎障害も
発生します。妊婦の重度な高血圧に対しての治療に関してはコンセンサスがありますが、
160/110以下の軽度な高血圧に関しては、明白な見解がなされていません。

 今回雑誌NEJMに、この軽度な高血圧に対して140以下に目標を定めた積極的治療と、160以上
になってから治療を開始するコントロール群(この場合の目標血圧は140として同等です。)
を比較した論文が掲載されています。(CHAP研究)


1) 軽度の慢性高血圧を有する23週未満の単胎妊娠女性を、妊娠中の使用が推奨されて
   いる降圧薬を投与する群(積極的治療群)と、重度の高血圧(収縮期血圧160mmHg)
   以上、または拡張期血圧105mmHg以上)をきたさない限り、そのような治療を行わ
   ない群(対照群)に振り分けました。
   使用薬剤はlabetalol(61.7%)、アダラートCR(35.6%)です。
   積極治療群は88.9%、コントロール群で24.4%が降圧薬を服用していました。
   主要転帰は、重症所見を伴う妊娠高血圧腎症、妊娠35週未満での医学的に適応とされた
   中絶、胎盤早期剝離、胎児・新生児死亡の複合としています。
   安全性転帰は、出生体重が在胎期間別標準値の10パーセンタイル未満である在胎不当
   過小(SGA)としました。
   副次的転帰は、重篤な新生児・母体合併症、妊娠高血圧腎症、早産の複合などです。

2) 結果
   2,408例を試験に組み入れました。
   主要転帰イベントの発生率は、積極的治療群のほうが対照群よりも低く
   (30.2% 対 37.0%)、SGA の割合は、積極的治療群では 11.2%、
   対照群では 10.4%でした。重篤な母体合併症の発生率はそれぞれ 2.1%、2.8%であり
   (リスク比 0.75)、重度の新生児合併症の発生率は 2.0%、2.6%でした。
   (リスク比 0.77)
   重症度を問わない妊娠高血圧腎症の発生率は、積極的治療群では 24.4、
   対照群では 31.1%であり(リスク比 0.79)、早産の発生率はそれぞれ
   27.5%、31.4%であった。(リスク比 0.87) (一部 日本版コピペ)
   積極的治療により、14〜15人に対して1人が助かる計算です。
   この研究の期間中で、積極的治療による明らかな副反応はありませんでした。
   更に新規で高血圧と診断された人やBMIが40以上の人でも、積極的治療群の方が有効
   でした。
   アスピリンを服用している人は45%いましたが、その後の経過でも有効性に影響はあり
   ませんでした。






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3) 結論
   軽度の慢性高血圧を有する妊娠女性において、血圧140/90mmHg未満を目標とする
   戦略は、良好な妊娠転帰と関連しており、SGAのリスク増加は認められませんでした。
   妊娠中の積極的治療が将来的に母子共に、その後の心血管疾患やその他の予後に
   好影響を及ぼすことが期待されます。





私見)
 本院ではアルドメットもしくはアダラートCR(10,20mg)を採用しております。
 蛋白尿を伴っている場合は腎臓内科に紹介とする方針です。
 以前のブログも下記に掲載します。







nejmoa2201295_research-summary.pdf

妊娠と高血圧症_.pdf

妊娠高血圧の予後に対する警鐘.pdf









posted by 斎賀一 at 16:41| 循環器