潜在性結核感染症
Latent Tuberculosis Infection
[N Engl J Med 2021;385:2271-80.]
[N Engl J Med 2021;385:2271-80.]
雑誌のNEJMに、潜在性結核感染症の総説が載っていました。
私にとって新たな知識もありましたので、その点を中心にブログします。
1) 結核症は2つの状態がある。
一つが潜在性結核症と、もう一つが活動性結核症である。
潜在性結核では、結核菌に対して免疫機能が持続的に働いて、結核菌の増殖が抑制されて
いる状態です。潜在性結核の約5〜15%が活動性結核に進展するので、全てではありま
せん。活動性結核となると結核菌の増殖が起きて、様々な臓器障害を引き起こします。
つまり潜在性結核が、結核症の源となります。
従って、潜在性結核の診断、管理が公衆衛生的に重要となります。
2) 潜在性結核の診断に重要な点は、結核による暴露の問診です。
そして危険因子を把握する事です。
出身国はどこか、どこで育ったか、1か月以上の海外生活の問診が重要となり、何年間
アメリカに在住しているかは問題となりません。
もちろん結核患者との接触が、潜在性結核の危険因子です。
もし感染が確認され潜在性結核と診断されたら、感染から2年以内の活動性結核への進展
が危険視されます。
3) 潜在性結核の直接的な診断方法はありません。
ツベルクリン反応とIGRA(インターフェロン-γ遊離試験(interferon-gamma
release assays)の略語)があります。
IGRAには、クオンティフェロン(QFT)とTスポット(T-spot.TB)の二種類があり
ます。ツベルクリン反応もIGRAも潜在性結核と活動性結核を区別することはできません。
従って結核感染症の治療効果を判定することも出来ません。
ツベルクリン反応とIGRAは、治療後も長期間陽性となります。
アメリカではツベルクリン反応とIGRAの両方が、小児および成人に適用になっています。
結核のワクチンとしてBCGがありますが、BCGには結核菌の構成成分が含まれますので、
BCG接種後はツベルクリン反応が陽性となります。
その影響は10年以上続きます。ただし乳幼児ではその影響は短期間です。
IGRAはBCGの構成成分が含まれていないため、BCG接種の影響は受けません。
結核が蔓延していない環境(国)では、ツベルクリン反応とIGRAの感度はほぼ同じで
95%です。しかしIGRAの擬陽性が問題となります。
結核患者の診断のセッティングでは、その感度はIGRAが90%でツベルクリン反応は80%
と低下します。
私見)
結核菌は弱毒の部類に入る菌です。免疫機能で即座に撃退する事が出来ないしぶとい菌です。
そのため人体に侵入すると、人の免疫機能は細胞免疫により結核結節を作り、結核菌に蓋を
します。しかし、しぶとい結核菌はその結核結節の中で生き残り、何かの折(抗がん剤、生物
学的製剤の服用など)に活動する危険があります。
この週末に潜在性結核を復習しブログします。
忘れた頃に、結核はやってきます。
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