スタチンは糖尿病を悪化する?
Association of Statin Therapy Initiation With Diabetes Progression
A Retrospective Matched-Cohort Study
A Retrospective Matched-Cohort Study
脂質異常症治療薬はスタチンが主役です。しかし、横紋筋融解症など副作用が以前より取りざたされており、患者さんも冷静な対応を逸している場合があります。又、スタチンを服用すると糖尿病になるとの古くて新しい情報がネットでも拡散しています。
今回、雑誌JAMAより論文が載っていましたのでブログします。
1) 後ろ向き研究です。
2003〜2015年の30歳以上の糖尿病と診断された人を登録しています。
2) 主要転帰は、・新たにインスリンの導入
・糖尿病薬の増加
・血糖が200mg/dl以上が5回以上
・ケトアシドーシス
・コントロール不良 です。
3) 705,774人が登録し、このうち55,579⼈がスタチン服用群で、
110,195⼈は実薬対象群です。
更に83,022人がスタチン服用群と実薬対象群(H2ブロッカー又はPPI)に
マッチングし、最もマッチする組み合わせを1対1の割合で選んでいます。
スタチン服用群の処⽅期間は、平均値で5.3年(標準偏差3.3年)。
処⽅されたスタチンの63.4%はシンバスタチンで、
12.4%はアトルバスタチン、10.5%はロスバスタチン、
9.5%はプラバスタチンです。
スタチン服用群のLDLは、追跡期間中に平均25mg/dL(31.6mg/dL)
低下しています。
実薬対象群は、低下は0.8mg/dL(23.7mg/dL)です。
4) 結果は、糖尿病の悪化はスタチン群で55.9%、実薬対象群は48.0%
でした。(危険率は1.37)
新たなインスリンの使⽤開始の危険率は1.16(1.12-1.19)、
新たな種類の⾎糖降下薬の追加の危険率は1.41(1.38-1.43)、
5回以上⾎糖値が200mg/dL以上となる危険率は1.13(1.10-1.16)、
糖尿病性ケトアシドーシス、またはコントロール不良の糖尿病の
新規診断の危険率は、1.2(1.19-1.30)です。
高力価スタチンの方が、低力価スタチンよりも糖尿病悪化との関連性が
高い。⾼力価(LDLがベースラインから50%以上減少)のスタチンでは、
実薬対象群と比較すると危険率は1.83(1.78-1.88)、
中力価(30%以上50%未満の減少)では1.55(1.53-1.58)、
低力価(30%未満の減少)では1.45(1.42-1.47)で、
LDLの減少効果が⼤きいスタチンほど糖尿病が進⾏する
傾向を示しています。
私見)
スタチンは、心血管疾患の予防にはなくてはならない薬剤の一つです。
悪い面ばかりを見ないで一生懸命頑張っている、そのもの自身を評価して欲しいのです。
ただ、健気にフィアンセをかばう娘をみる宮様のお気持ちを察するにあまりあるものがあります。
次のブログでスタチンに対する私の思いを語ります。
本論文 Association of Statin Therapy Initiation With Diabetes Progression_ A Retrospective Matched-Cohort Study _ Cardiology _ JAMA Internal Medicine2 _ JAMA Network.pdf
11 実薬対象試験.pdf