2021年09月15日

潜在性甲状腺機能低下症の症状と治療

潜在性甲状腺機能低下症の症状と治療
 
Does Subclinical Hypothyroidism Add Any Symptoms?
Evidence from a Danish Population-Based Study



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 潜在性甲状腺機能低下症とは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値ですが甲状腺ホルモン(free-T4)
が正常の場合です。
多くが橋本病です。意外に患者さんは多く、本院でも症状から検査をして診断に至りますが、甲状腺エコーの所見から鑑別診断をすることがあります。
 症状から診断・治療を行ってはならないとするデンマークからの論文が出ていましたので、纏めてみま
した。


1) 1997年から2005年までに8,903人の登録をしています。
   潜在性甲状腺機能低下症の群376人、甲状腺機能正常のコントロール群7,619人です。
   以前の研究から、関連症状を次の13項目にしています。
   倦怠感、乾燥肌、気分のむら、便秘、動悸、落ち着きのなさ、息切れ、喘鳴、咽頭不快感、嚥下困難、
   脱毛、めまい、及び頸部痛です。

2) 結果は、顕性甲状腺機能低下症の症状のスコアを用いて調べますと、潜在性甲状腺機能低下症群と
   甲状腺機能正常のコントロール群の差はありませんでした。
   ただし潜在性甲状腺機能低下症群では合併症が多く、そのために倦怠感、息切れ、喘鳴が多い傾向
   でした。TSH値との症状の関連性もありませんでした。
   若い人で精神的側面の倦怠感、落ち着きのなさ、不安定感が多く認められました。
   息切れは肥満、喫煙との関連性がありました。

3) 結論として、潜在性甲状腺機能低下症だからといって特別な症状はないようです。
   従って症状の緩和のためにチラーヂンS(甲状腺ホルモン剤)を処方するのでなく、むしろその症状
   の鑑別診断を優先すべきとしています。





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私見)
 甲状腺機能低下症の場合には、症状の軽減のための処方は意味がなさそうです。
 十分な鑑別と経過観察が必要です。






甲状腺機能低下症.pdf










posted by 斎賀一 at 19:47| Comment(0) | 甲状腺・内分泌
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