2021年09月04日

新型コロナにおける吸入ステロイド(ブデソニド)の効果

新型コロナにおける吸入ステロイド(ブデソニド)の効果
 
Inhaled budesonide for COVID-19 in people at high risk of complications
in the community in the UK (PRINCIPLE):



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 肺の上皮に存在する新型コロナウイルスのレセプターがACE-2と言われていますが、その場での炎症が新型コロナの病状に関係することが、当初より判明しています。
不思議なことに、肺疾患の喘息やCOPDの患者さんでは新型コロナの発生頻度が低いことも報告されています。吸入ステロイドの治療が影響しているのかもしれません。更にステロイドの全身投与も重症化を防ぐとの研究結果があります。
全てがステロイドの抗炎症作用によるものです。しかしステロイドの全身投与は副作用があり、その効果に対して反対の見解も報告されています。

 今回のLANCETの論文は、65歳以上か基礎疾患のある50歳以上を対象に、吸入ステロイド剤のブデソニドの効果を調べた報告です。


1) 2020年11月27日から2021年3月31までの研究です。
   新型コロナの症状が14日まで好転しないが入院も必要でない患者が対象です。
   全体で4,700人が登録しています。
   ブデソニドを800㎍/回、2回/日を14日間継続する群の1,073人、通常の治療群の1,988人、
   他の治療群の1,639人を先ず調べました。
   最終的に新型コロナ感染の確信例として、ブデソニド群が787例、通常群が1,069例、
   その他の治療群が974例を比較しています。

2) 主要転帰は ・最初に回復した自己報告 ・入院 ・新型コロナ関連死です。
   自己申告による病期の短縮は、ブデソニド群が通常群より2.94日短縮しています。
   入院と死亡では、ブデソニド群が6.8%に対して、通常群で8.8%でした。
   危険率はブデソニド群で0.75となります。
   重篤な副作用がブデソニド群で2例、通常群で4例でした。




   
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3) 合併症のある層でのブデソニド吸入は、それなりの効果を示しています。







私見)
 自宅療養者の対応は保健所から「町医者」が担うべき、との暴論とも受け止められる非難がマスコミに
 溢れています。お気持ちは分かるのですが、対策を十分に練らないでトップダウンされては、下々の
 町医者は戸惑うばかりです。
 竹やりで突っ込めと言わんばかりです。
 せめて本院では、ブデソニド(パルミコート)を処方します。
 イベルメクチンは手に入らないのですから ...。
 中和抗体は、町医者にとっては高嶺の花です。





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コロナ budesonide LANCET.pdf










   
   
posted by 斎賀一 at 16:51| Comment(1) | 感染症・衛生
この記事へのコメント
喘息、COPDの患者さんで新型コロナウイルスの発生頻度が少ないと読んでびっくりしましたが、ステロイドによる効果だったんですね。
Posted by at 2021年09月07日 15:33