2020年11月20日

慢性腎臓病と糖尿病・2020年KDIGOガイドライン

慢性腎臓病と糖尿病・2020年KDIGOガイドライン
 
Diabetes Management in Chronic Kidney Disease
: Synopsis of the 2020 KDIGO Clinical Practice Guideline



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 本ガイドラインは慢性腎臓病患者(CKD)における糖尿病管理のガイドラインであり、必ずしも糖尿病性
腎症だけを扱ってはいません。


主要な部分だけを纏めてみますと

1) 糖尿病、高血圧、蛋白尿を伴う患者には、降圧薬として ACE-I または ARB を漸増しながら処方
   するのが第一選択の原則です。
   薬剤を最初に投与する場合や増量する場合には、2〜4週間ごとに血清カリウム、クレアチニンを
   調べます。

2) 治療抵抗の場合は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を漸増する。
    (アルダクトンA、セララ、ミネブロ)

3) CKDの進展と蛋白尿は、互いに悪循環を起こす事が想定されている。
   従ってACE-I、ARB、MRAは糖尿病で血圧があまり高くなく、蛋白尿が陽性の患者には腎保護の
   作用があると期待されるが、高血圧と糖尿病の合併例で蛋白尿が陰性の場合に、どれだけの腎
   保護があるかは不明である。
   しかもその場合、腎保護の観点からは他の降圧薬との差はほとんどない。

4) ACE-IまたはARBは、投与によりクレアチニンが30%増加までは漸増して投与継続が可能だが、
   血圧の下がりすぎや高カリウム血症の場合には、減量か休薬をすべきである。
 
5) 糖尿病のコントロール指標は HbA1c だが、その設定は6.5以下から8.0以下と低血糖のリスクに
   より個々人の設定になる。
   しかも eGFR が30以下では、HbA1c が低めに出てしまいバイアスがかかってしまう。

6) 血糖降下薬の第一選択は、メトグルコかSGLT-2阻害薬である。
   何れも eGFR が30以上が適応だが、SGLT-2 阻害薬に関しては、eGFRが20〜25でのトライアル
   が進行中で注目されている。
   SGLT-2 阻害薬は服用初期に eGFR の低下が認められるが、一過性であり服用を継続してよい。
   なぜならば、その後の SGLT-2 阻害薬による腎保護が期待されるからである。

7) 本ガイドラインでは、糖尿病とCKD合併例においては蛋白摂取制限を0.8g/kg/日に制限している。
 
8) 本ガイドラインでは、GLT-2 阻害薬を腎保護と心血管疾患の予防のため、糖尿病と CKD 合併症
   例には第一選択薬に推奨しています。






私見)
 CKDと降圧薬について、次回のブログで紹介します。
 何はともあれステージG3b(クレアチニンが45以下)では降圧薬の ARB は避けたほうが良いようです。
 本論文の図表は下記の PDF に掲載します。






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1 CKD 図譜.pdf

2 Diabetes Management in Chronic Kidney Disease_ Synopsis of the 2020 KDIGO Clinical Practice Guideline _ Annals of Internal Medicine.pdf












 
posted by 斎賀一 at 18:22| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺
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