一過性脳虚血発作(TIA)について・NEJMより
Transient Ischemic Attack
n engl j med 382;20 nejm.org May 14, 2020
n engl j med 382;20 nejm.org May 14, 2020
雑誌NEJMに一過性脳虚血発作(TIA)に関する総説(vignette)が掲載されていましたので纏めて
みました。
1) 脳卒中の前触れとして、TIAが20~25%認められる。
TIAの発作時間は殆どが数秒から数分だが、1時間持続する事もある。
以前にはTIAは24時間以内に消褪すると定義されていましたが殆どが10分以内の持続で、しかも
現在では6時間以内の入院治療を要するとされていますので、TIAの持続時間に関しては、誤解を
防ぐ意味でガイドラインの見直しが検討されています。
2) 現在はTIAと軽症脳梗塞は、ほぼ同じ疾患と捉えられています。
CT検査では診断が出来ず、MRI特に拡張強調画像が有効です。
(下記のPDF参照)
3) TIAを治療しないと3か月後には脳卒中に20%移行すると言われていますが、殆どは10日以内
特に2日以内に脳卒中を発症するリスクがあります。
早期診断、早期治療により3カ月時点での脳卒中発症を、80%低下出来ます。
4) TIAの症状
程度の差はありますが、運動神経障害、知覚神経障害、視覚障害、構音障害です。
軽症には注意が必要です。
めまい(dizziness,vertigo)、複視、ふらつき(unsteady gait)、健忘なども認められることも
ありますが稀です。(一般外来ではTIA以外で多い症状のため、鑑別に注意が必要です。)
また他の疾患の鑑別疾患も多くあり、更に注意が必要です。
5) CT検査では診断が出来ず、MRI、特に拡張強調画像が有効です。
(下記のPDF参照)
拡張強調画像では最大50%まで診断できます。所見としてはbright spotサインです。
頸動脈エコー検査も有力です。
ホルター心電図もスクリーニング検査として必要となります。
6) 脳卒中への再発予防のためには、ABCD2スコアーが有効です。
(一応はスコアーの4が境目の様です。)
しかしABCD2スコアーが4以下の中には心房細動、頸動脈硬化(IMTの肥厚)が20%程度あり
この場合は脳卒中のリスクは高くなります。
最近ではABCD2スコアーのみでは治療戦略に落とし穴が生じますが、専門医のいない救急では
ABCD2スコアーは未だに有効です。
7) 治療
心房細動があればDOACが適応となります。
非心源性の場合は抗血小板治療が基本です。
治療方法は色々な研究がなされていますが、本論文では下記のレジメを勧めています。
・TIAが疑われたら、先ずアスピリン300mg服用し入院精査
・拡張強調画像で所見が無ければ、TIAとしてプラビックス300mg追加服用
・ホルターなどで心房細動の有無をチェック
・心疾患が無ければ退院し、その後はアスピリン75mg+プラビックス75mgを21日間服用
・安定していたらアスピリンもしくはプラビックスを90日間服用
90日を過ぎてからのエビデンスはない。
8) その他の治療
・血圧は140以下、副作用もなければ130以下を目標
・脂質異常は強化療法。LDLは70mg以下を目標
・糖尿病のチェック
・睡眠時無呼吸発作の有無
・禁煙、運動(週に4回)
9) 今後の課題
TIA専門病院の必要性
私見)
微細な所見に細心の注意が必要です。
また、初期でのアスピリン服用も有効の様です。
迅速な画像診断もしくは2次施設への転送が大事です。
下記に以前のブログも掲載します。
1 TIA 本論文より.pdf
2 臨床医のサポートより.pdf
一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf
一過性脳虚血発作(TIA)又は軽症脳卒中から1年後の 脳卒中リスク.pdf
軽症脳梗塞と一過性脳虚血発作に対する併用抗血小板療法の有用性と安全性.pdf
エフィエント.pdf
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