2020年04月25日

見えない手―パンデミックにおける医療

見えない手―パンデミックにおける医療

The Invisible Hand − Medical Care during the Pandemic
n engl j med 382;17 nejm.org April 23, 2020
(ニュー・ノーマルの始まりなのか?)



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 新型コロナ感染症がパンデミックとなり、多くの患者さんも恐怖に晒されています。
雑誌NEJMに示唆に富むコラム(perspective)が載っていますので、簡単に纏めてみました。


 1) 筆者は循環器内科の医師です。
    
    安定型の狭心症患者を、外来で受け持っています。症状の軽快のため、内科的治療を
    始めようと、患者本人と妻に説明をしています。この夫婦は海外旅行も計画していましたが、
    新型コロナの流行が報道され主治医の筆者は旅行の中止をアドバイスしました。

    運よくISCHEMIA研究が発表された直後で、患者への説明も、筆者にとって有効に進むと
    考えられました。
    (ISCHEMIA研究は、先日の私のブログでも紹介しましたが、安定型の冠動脈疾患の場合は、
     CT血管造影のみの診断で、その後は内科的治療の方が、侵襲的なPCI治療より優位との
     結論でした。)
  
    筆者は次のように説明しようと考えました。
  
   ・ 冠動脈狭窄と言っても、それは一部の狭窄の事で、全身にも動脈硬化が進んでいると
     想像できる事から基本的には血圧、脂質を含めた内科的全身治療が大事である。
  
   ・ カテーテル検査において、冠動脈の狭窄を見つけると、術者は反射的に侵襲的な
     ステント治療によって、狭窄部を広げたい衝動に進んでしまう場合がある。
     (oculostenotic reflex)


 2) 患者とその妻は、筆者の説明に微笑みながら同意したものと理解しましたが、その数週間後に
    勝手に妻は血管造影、並びに侵襲的治療計画の承諾をしてしまいました。
    リスクとベネフィットの勘案は、医師が決める事ではなく、患者とその家族に委ねられることを
    十分に筆者は知っています。
    筆者は患者の決定を心の中で承諾しました。

 3) 患者との最終の受診日は、3月18日でした。この時点で新型コロナがパンデミックと
    なっており、筆者の病院でも電話診療に切り替えていました。
    しかし、筆者は医師の本能で、直接面談の診療の必要性を認識していましたので、
    所謂、social distanceは脇に置いて診察をしようと思っていました。
  
    オスラー博士の言葉 「患者の言葉に耳を傾けろ。患者が診断を語るから。」
  
    筆者の思いとは異なり、患者とその妻とは電話でのコンサルトとなってしまいました。
    しかし、それでも筆者にとっては良い結果となりました。

    患者とその妻は、内科的治療を選択しており、症状の改善も経験したので、このまま継続したい
    と言う希望をのべました。
    筆者は、もしも内科的治療で改善しなければ、薬の増量や変更も可能であることを説明し、
    増悪の場合は勿論、自分の病院で侵襲的治療を計画する旨を伝えました。

 4) 新型コロナの恐怖が、心血管疾患の時限爆弾の恐怖をおいやった事になります。結果的には、
    筆者の思いと同じ事になりましたが、しかし、これとは逆の例もあるかもしれません。
    一刻の猶予もならない診療を、新型コロナによって先延ばしになっていないか。

 5) 医師は患者の症状に耳を傾けなくてはならないと同時に、患者の懐いている恐怖にも、
    耳を傾けなくてはなりません。
 
 

私見)
 私にとって、新型コロナの状況は医師に成って初めの経験です。
 本エッセイには、私が忘れかけていた珠玉の言葉が散りばめられています。新型コロナにより世の中も
医療現場もニュー・ノーマルの時代が来るのでしょうか。しかし、本エッセイを読むと変わってはならない
大事な部分も分かってきます。
 
 ある登山家が語っています。
 
   「なぜ危険な山に挑戦するのか。それは自分を高めたいからです。」


 中国やイタリアや、はたまた日本のコロナ最前線で戦っている人達にささやかながら恥じないようにと
思うばかりです。




安定冠動脈疾患の初期治療法の比較_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf







posted by 斎賀一 at 18:57| Comment(2) | 感染症・衛生
この記事へのコメント
いくつになっても、年をとっても、自分を高める気持ちは忘れちゃいけないですね。
私も高める気持ちを持ち続けたい。
Posted by at 2020年04月26日 22:53
先生、ありがとうございました。

先生のブログ見て下さってる方が、沢山いてコメント下さって嬉しいです(^o^)v

コロナの影響で益々仕事の負担も増えて、更に緊張感も増して疲労感も倍増(+_+)

免疫力もかなり低下してるのか、湿布で被れた事はなかったのですが、被れたとこが擦れて痛いし、顔や背中など貼ってないとこまで広がってきてしまって焦りました(>_<)

先生にはいつも感謝しておりますm(__)m

この状況の中でも、先生の明るさでまだ大丈夫と思えるのと、助けていただいてまだ頑張れてますo(^o^)o

先生も職員さんも大変だと思いますが、頑張って下さい&#8252;!

いつもありがとうございますm(__)m





Posted by at 2020年04月27日 00:14
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