D ダイマー値による肺塞栓症の診断
Diagnosis of Pulmonary Embolism with d-Dimer Adjusted
to Clinical Probability
N Engl J Med 2019;381:2125-34
to Clinical Probability
N Engl J Med 2019;381:2125-34
肺塞栓症の診断は実地医家にとってハードルの高い疾患です。
今回雑誌NEJMより、D ダイマーを用いた診断ストラテジーの研究論文が出ていましたので、纏めて
みました。個人的に混乱から抜け出られる予感が若干致します。
1) 肺塞栓症の診断の基本はCT肺血管造影検査です。
しかし放射線の暴露の問題と費用対効果の点からも、如何に無駄な検査をしないかが問題点です。
先ずはWell’sスコアーを用いた臨床的検査前確率(C-PTP)の評価が最も有効です。
2) C-PTP が低く(Well’sスコアーが2点以下) D ダイマー値が 1,000 ng/mL 未満であるか、
C-PTP が中等度(Well’sスコアーが2点)で D ダイマー値が 500ng/mL 未満の外来患者は、
それ以上検査を行わなくても肺塞栓症が除外されると考え、前向きに研究を行っています。
なぜならば、従来のガイドランに沿った除外診断の「C-PTP が低く、D ダイマー値が 500ng/mL
未満の患者」は、外来ではたったの30%しかいません。
C-PTPと D ダイマー値を組み合わせて、C-PTPが高い患者にも更に精度を上げる必要がありま
した。
3) 2,017 例を登録し評価しました。このうち 7.4%に、診断のための最初の検査で肺塞栓症が認め
られました。
C-PTPが低い(1,285 例)または中等度(40 例)で、D ダイマーが陰性(すなわちそれぞれ
1,000 ng/mL未満、500 ng/mL 未満)であった 1,325 例のうち、追跡期間中に静脈血栓塞栓症
が認められた患者はいなかったことになります。
このうち 315 例はC-PTP が低く、D ダイマー値は500〜999 ng/mL でした。
C-PTP が低く D ダイマー値が 500 ng/mL 以上の場合に胸部画像検査を受けるとすると 51.9%
が胸部画像検査を受けることになりますが、本論文のPEGeD 法により34.3%まで削減できました。
本論文のPEGeD 法を下記に示します。 (下記のグラフが本論文の全てです。)
Chest imaging;CT肺血管造影 PE;肺塞栓症 VTE;静脈血栓塞栓症
4) 結論として、C-PTP が低いことと D ダイマー値が 1,000 ng/mL 未満であることを組み合わせる
ことで、追跡期間中の肺塞栓症リスクが低い患者群が同定されました。
5) 私の本論文から受けた価値
・Well’sスコアーの方が、Yearsより若干有用 (下記のPDFを参照)
・D ダイマーの年齢調整は必要ない。 (却って50歳以下の患者をCTに暴露させてしまう。)
・肺塞栓症を否定しても、その後の経過観察を十分にして静脈血栓塞栓症の発生を診断する。
(急性肺塞栓症と深部静脈血栓症(deep vein thrombosis、DVT)は1つの連続した疾患で
あるとの概念から「静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism、VTE)」と呼称され、診断・
治療・予防は両者を一括して行われる。) 今日の臨床サポートより
私見)
最後の砦がDダイマーの問題です。今、再度勉強中です。近々ブログします。
以前のブログを下記に掲載しますので、職員の方も再度勉強してください。
本論文より.pdf
スコアーWell.pdf
ブログ D-dimer.pdf
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