2019年11月25日

冠微小循環障害;Coronary Microvascular Dysfunctionについて

冠微小循環障害;Coronary Microvascular Dysfunctionについて
 
Coronary Microvascular Dysfunction
Causing Cardiac Ischemia inWomen
JAMA Published online November 18, 2019



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 最近、マスコミにも取り上げられて注目されています冠微小循環障害について、雑誌JAMAに総説が載っていましたので勉強して纏めてみました。

 先ず前段として、他の文献より関連した内容を記載します。

  a; 冠攣縮性狭心症は太い冠動脈で起る攣縮で、異型狭心症もその一部です。
    よって血管造影検査時に、冠動脈の攣縮を観察する事ができる。
  b; 冠微小循環障害(CMD)は細い動脈のため、攣縮を実際に見る事は出来ません。

 タイプとしては
  ・一次的微小血管狭心症(primary MVA); 太い冠動脈の閉塞は無い。
  ・二次的微小血管狭心症(secondary MVA); 太い冠動脈の閉塞があるか、又は心筋疾患がある
   場合。

 微小血管狭心症(MVA)は狭心症症状がある一般的な用語です。
 つまり、冠微小循環障害と微小血管狭心症は同じ意味合いで使用されています。
 冠微小循環障害は、様々な原因で起る症候群的とも言えそうです。
 (下記のPDFをご参照ください。)


さて本論を纏めてみました。

1) 冠動脈造影検査で、閉塞が認められない虚血性心疾患の症状がある人の2/3は女性です。

2) 冠微小循環障害の臨床症状は、胸部不快感、息切れ
   心電図でST変化の無い事も多々あるので注意する。症状が20分と長引くことも多い。
   つまり冠動脈造影検査で異常がなくても、冠微小循環障害の可能性があるので安心は出来ない。
   10年後に心疾患で死亡する率は、13人中1人の割合です。
   しかも、健康な人に比べて心疾患で入院するのは10倍です。
   臨床家は過剰診断を恐れずに、冠微小循環障害の可能性を念頭に危険因子を調べて行かなくては
   ならない。

3) 先ず二次的な冠微小循環障害があるかを診断する必要がある。
   リスク因子の評価 ; 高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患の家族歴  
   65歳以上の患者さんは、冠動脈造影をして閉塞の有無を調べる。
   次に診断的治療をして効果を見る。
   ・少量アスピリン ・スタチン ・降圧薬(ARB 、CCB、追加として時に血管拡張のβ-ブロッカー
    ヘルベッサー)
   本論文ではアーチストを勧めています。
   またアダラート、ワソランを使用すると、その後の硝酸塩の使用量も削減出来るとしています。




 ◆参考文献

  ・冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)
  ・Coronary Microvascular Dysfunction
    N Engl J Med 2007;356:830-40.
  ・Cardiovascular disease in women:Prevention, symptoms, diagnosis,
   pathogenesis
   CLEVELAND CLINIC JOURNAL OF MEDICINE VOLUME 80 ・ NUMBER 9
   SEPTEMBER 2013
  ・今日の臨床サポート
  ・uptodate
   Microvascular angina: Angina pectoris with normal coronary arteries






私見)
 雑誌JAMAより、患者さん用のパンフが掲載されています。
 私が拙訳しましたので患者さんに配布してください。下記のPDFに掲載しました。
 
 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害とを混同しないでください。
 医学の進歩は凄まじいものがありますが、未だ冠微小循環障害は投薬して初めて診断できる疾患でも
 あります。十分なリスク因子の判定が必須条件です。
 治療の内容においては同じでも、冠攣縮性狭心症は頂上作戦に対して、冠微小循環障害は裾野作戦に
 なる事も理解してください。







1 患者用 微細循環障害.pdf

2 文献より 冠攣縮性狭心症.pdf

3 微細循環障害.pdf

4 微細循環障害 .pdf

5 冠攣縮性狭心症.pdf

6 Cardiovascular disease in women.pdf











posted by 斎賀一 at 20:39| Comment(0) | 循環器
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