2019年04月15日

潰瘍性大腸炎に対するACGのガイドライン・2019年版

潰瘍性大腸炎に対するACGのガイドライン・2019年版
 
ACG Clinical Guideline: Ulcerative Colitis in Adults
  Am J Gastroenterol 2019;114:384–413


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 一般的に、潰瘍性大腸炎は直腸から病変が始まりますので、迅速に診断するためには簡易的に直腸
又はS字結腸まで検査すれば良いとされています。
しかし最近では、下行結腸から始まるケースもある印象です。本論文でも記載していますが、一般的には直腸病変がないケースは5%以下との事ですが、小児や若年者では1/3人は発症時に直腸病変が無いとの事で、注意が必要です。

 本論文でも記載していますが、潰瘍性大腸炎の治療目標は
(1)QOLの改善  (2)ステロイドフリーの実現  (3)粘膜の治癒としての正常化  です。

本論文は、勧奨、重要概念(key concept)より成り立っています。
其々にエビデンスの要約が記載されています。
尚、条件付き(conditional)とは、未だ利益と副作用(benefit,harm)のバランスが不明の場合を言い
ます。
key conceptとは、エビデンスに基づいての専門家の声明です。


勧奨(GRADED)

#診断と予後
 1) 便検査で クロストディウムディフィシル(Clostridioides difficile)を除外診断の要
    (本院でも最初に便倍を実施)
 2)3) 診断や予後判定のために血液検査の要

#管理目標
 4) 生検での粘膜病変の治癒、ステロイドフリー、入院と手術の回避が目標
 5) 内視鏡検査が出来なければfecal calprotectinで代用

#軽症における緩解誘導
 6) 5-ASA座薬1gr
 7) 左側型では5-ASA注腸1grがステロイド座薬より有効
 8) 左側型では5-ASA注腸1grと経口5-ASA2grの併用が経口5-ASA単独よりも有効
 9) 左側型で5-ASAの注腸と経口の併用でもコントロール出来ない時は、ステロイドの座薬も選択肢
10) 進展するケースでは経口5-ASAを2gr増量
11) 更にコントロールが出来なければ、経口ステロイドも選択肢とする。
12) 経口5-ASAの2grと5-ASA座薬1grの併用でもコントロール不可の場合は、5-ASAの形状の変更
    か治療の変更を考慮する。
13) 経口5-ASAを2〜2.4gr以上増量しても効果は同じ。
14) 経口5-ASAでコントロール不可の場合は、ステロイド座薬を追加も選択肢とする。
15) 経口5-ASAの服用回数は一日一回、又はより頻回でもその有効性と安全性に差は無いので、
    患者の好みで最適化を図っても良い。

#緩解の維持
16) 5-ASA座薬1grは緩解維持療法として良い。
17) 左側型では経口5-ASAを2grでの緩解維持療法も選択肢
18) 緩解維持としては、経口ステロイド療法は不適

#増悪の場合
19)20) 経口ステロイドも選択肢
21)  thiopurines 又は methotrexateの単独療法は勧めない。
22)  anti-TNF therapy の adalimumab, golimumab, or infliximabを勧奨する。
23)  anti-TNF therapyを行うならば、5-ASAの併用は勧めない。
24)  infliximabを使用するならば、thiopurinesの併用を勧める。
25)  vedolizumabも選択肢
26)  以前にanti-TNF therapyで失敗例では、vedolizumabも選択肢
27)  tofacitinib 10 mg の8週間も選択肢
28)  以前にanti-TNF therapyで失敗例では、tofacitinibも選択肢
29)  anti-TNF therapyで最初は反応していても、やがて効果が減弱した場合は血中薬剤濃度と
    抗体検査を勧める。

#重症から緩解した場合は
30) 5-ASAが失敗して現在anti-TNF therapyを実施いているなら、維持のために5-ASAの併用は
    勧めない。
31) 経口ステロイドも勧めない。
32) 経口ステロイドで緩解していても、経口ステロイドは中断してthiopurinesを選択する。
33) 現在緩解している場合は、維持としてのmethotrexateは不適である。
34) anti-TNF therapy後の緩解維持のためには、anti-TNF therapyのadalimumab,
    golimumab,infliximabを選択する。
35) vedolizumabで緩解しているならば、引き続きvedolizumabを継続する。
36) tofacitinibで緩解しているならば、引き続きtofacitinibを継続する。

#重症化での入院
37) 深部静脈血栓症の予防も重要視
38)39) クロストリディジウムの検査も重要
40) 広域性の抗生剤の使用は避ける。
41) メチルプレドニゾロン60mg又はヒドロコルチゾン100mgを1日3〜4回
42) 3日間のステロイド点滴療法でも好転が無い場合は、infliximab又はcyclosporineを
    レスキュー(緊急性)で使用する。
43) 上記のinfliximabでコントロール出来れば引き続き継続治療
44) 上記のcyclosporineでコントロール出来ればthiopurinesで継続治療
45) 上記のcyclosporineでコントロール出来ればvedolizumabで継続治療も選択肢

#癌の予防(dysplasia)
46) 常に大腸ファイバーを用いて、腫瘍(dysplasia)の発生に注意が必要
47) 最新の画像診断を用いてのスクリーニング検査が大事


重要概念(key concept)

この項目は私の独断で、本院にとっての重要項目のみに限定して記載します。

 1) 感染性疾患をまず鑑別する。
 2) 粘膜の炎症が消褪すれば、dysplasiaの発生も抑制される。
 3) 治療方針の有効性の確認は、6週間以内とする。
 4) 生検での組織的治癒は臨床症状の改善とも結びつくが、治療の最終決定ではない。
 5) 潰瘍性大腸炎は慢性疾患であるが、薬剤性の病態と副作用も注意が必要
 6) 患者の疲労感、鬱状態等をチェックする事も重要
 7) 受診後の72時間以内、出来れば24時間以内の内視鏡検査が必要
    Sigmoidoscope(S字状結腸まで見る内視鏡検査)も可
 8) 増悪の場合は中毒性巨大結腸症(toxic megacolon)を何時も想定
    外科的治療も想定する。
    判断は3日以内
 9) 重症の場合は鎮痛解熱剤(NSAIDs)、オピオイド、抗コリン作用の薬剤は避ける。
10) 発症後8年が経過していたら、dysplasiaの有無を内視鏡で検査する必要がある。
11) 原発性硬化性胆管炎を合併している場合は、毎年検査が必要
12) dysplasiaのリスクがあれば1〜3年の経過で内視鏡検査
13) dysplasiaが多発している場合は切除術も考慮する。






私見)
 馴染みやすい日本のガイドラインを次回、纏めてみます。
 それにしてもアメリカのガイドラインの方が立体的な印象です。






ACGガイドライン.pdf








posted by 斎賀一 at 21:26| Comment(0) | 消化器・PPI
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