糖尿病治療薬SGLT-2阻害薬のフォシーガと心血管転帰
Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes
n engl j med 380;4 nejm.org January 24, 2019
n engl j med 380;4 nejm.org January 24, 2019
U型糖尿病はアテローム性心血管疾患、心不全、慢性腎疾患(CKD)に対してリスク因子です。
しかしU型糖尿病においては、心不全と冠動脈疾患とはそれぞれが独立した疾患と捉える必要が有るとの事です。とはいえU型糖尿病における心不全の治療に関しての明白なエビデンスはありません。
一見独立した疾患のアテローム性心血管疾患、慢性腎疾患、心不全は総合的な見地からの治療戦略が重要です。
今回雑誌NEJMに、糖尿病治療薬であるフォシーガの心血管疾患の効果について掲載されていましたので纏めてみました。 (DECLRE-TIME58)
1) U型糖尿病患者でアテローム性心血管疾患またはそのリスクを有する例を、フォシーガを投与する
群とプラセボを投与する群に、無作為に割り付けました。
登録の基準は40歳以上のU型糖尿病、ヘモグロビンA1cが6.5~12.0、腎機能のGFRが60以上、
アテローム性心血管疾患のリスクを2つ以上有する人か、(高血圧、脂質異常症、スタチン等服用、
喫煙)既にアテローム性心血管疾患を有する人(虚血性心疾患、虚血性脳血管疾患、末梢動脈
疾患)です。
下記のPDFのsuppleをご参照ください。
主要転帰は、MACE(主要有害心血管イベント;すなわち心血管死亡・心筋梗塞・虚血性脳卒中)
心不全としています。
副次的転帰は、腎転帰(腎機能のGFRが40%以上低下して60mL/分未満になる、新規末期腎不全
の発生、腎臓または心血管が原因による死亡)と、全死因死亡としています。
2) 17,160 例を中央値4.2年間追跡し、評価しました。
内訳は6,974名(40.6%)が既にアテローム性心血管疾患を有する人、10,186名(59.4%)がアテ
ローム性心血管疾患のリスクを2つ以上有する人です。
3) 結果は、フォシーガによって MACE 発生率は低下しなかったが、(フォシーガ群 8.8% 対 プラ
セボ群 9.4%、ハザード比 0.93、統計学的に信頼区間が広いために、偶然の結果かもしれないと
しています。)心血管死亡または心不全による入院の発生率は低下した。(4.9%対5.8%、ハザード
比0.83)
詳細は下記のPDFのグラフをご参照ください。
腎イベントはフォシーガ群の 4.3%とプラセボ群の 5.6%で発生し、(ハザード比 0.76)
糖尿病ケトアシドーシスの発生頻度は、フォシーガ群のほうがプラセボ群よりも高く、(0.3%対
0.1%)レジメンの中止となっています。
結論として、フォシーガ治療によってMACEの発生率は、プラセボと比較して高くも低くもならなかった
が、心血管死亡または心不全による入院の発生率は低下した。
4) 考察
経過中に1,500人がMACEを発症し、900人が死亡しています。
ベースラインでは、殆どの人が心不全の既往はありませんでした。その事からも、フォシーガには
新たな心不全の予防効果があったことを証明しています。
更に心不全に特化した研究も進行中との事です。
同様にベースラインでのCKDや心血管疾患の有無に関わらず、経過において腎機能の悪化は予防
出来ています。尿細管-糸球体のフィードバックの改善が関与しているとしています。
以前発表のEMPA-REG研究と異なる点は、本研究では腎臓の保護作用を特定的に見るために
腎機能低下患者(GFRが60以下)を除外している点です。
副作用としての下肢切断、脳卒中、骨折の発生はプラセボと同等でした。
ケトアシドーシスは増加していましたが、頻度は0.1%/年と極稀でした。
私見)
フォシーガには心不全や腎不全の予防効果がありそうです。
他のSGLT-2阻害薬も同様かと思いますがその点は識者に任せるとして、稀ながらと言えどもケトアシ
ドーシスには注意してまいります。
(職員の皆さん、ケトアシドーシスの検査に関しては、以前のブログを参照してください。)
取りあえず本院では、60歳以上のU型糖尿病で高血圧を合併、し心負荷(IVCDが増大傾向)が心配
な患者さんには、フォシーガも選択枝でしょうか。
論文より.pdf
nejmoa1812389_appendix.pdf
図書館の方に聞いて、案内してもらったようです(^o^;)
琴さんはとても頭の良い方で、先生の家系の方は皆さま優秀でいらっしゃると、感心しておりました...(^o^)
私も3月28日までには、伺わせていただきますね(^o^)/