2019年01月26日

心筋梗塞と急性感染症

心筋梗塞と急性感染症
 
Acute Infection and Myocardial Infarction
   n engl j med 380;2 nejm.org January 10, 2019



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 雑誌のNEJMに急性感染症と心筋梗塞の総説が出ています。
20世紀初頭より、インフレエンザと心筋梗塞との関係は知られていましたが、心筋細胞の検査技術の
向上により、他の感染症との関連性も最近の10年間で詳細に解明されています。
 最近のデータによると、インフルエンザでは6倍、RSウイルスでは4倍、他の呼吸器感染ウイルスでは
3倍もの危険率で心筋梗塞が発症するとの事です。肺炎球菌による肺炎の場合には、心筋梗塞が7~8%発症するとの報告もあります。尿路感染症や菌血症の場合も、短期的なリスクとなります。
急性感染症は短期、中期、長期に亘り心筋梗塞に悪影響を及ぼす様です。
この事からも長いスパンで警戒しなくてはならない様です。


以下に纏めてみますと

1) 肺炎の影響は10年間も継続する場合があります。
   感染症の重症度と継続性は関係があるとの事です。
   下記のPDFのグラフをご参照ください。

2) 機序
   心筋梗塞は冠血管の閉塞が原因であるT型と、酸素供給の不足によるU型に分類されます。
    (実際は区別がつけにくいのが現状です。)
   ・T型では元来、冠動脈のプラークに炎症性細胞が集簇しています。
    心筋梗塞が炎症性疾患と捉えられる所以です。そこに急性感染症が加わると、炎症に関与する
    サイトカインと言う物質が全身の血液中に増加します。その増加したサイトカインがプラーク内の
    炎症性細胞を活性化させ、プラークの増悪や破綻が生じます。
    インフルエンザや他の呼吸器感染のウイルスは、血小板の活性化を促します。
   ・U型では頻脈により拡張期充満時間の短縮となり、それが冠動脈の血液循環を危険にさらす事に
    繋がります。
    肺炎は全身の低酸素をも引き起こします。このケースでは感染の影響は短期的です。
   ・動物実験ですが、直接的に肺炎球菌はその毒素が心筋細胞を傷害し、伝導系に影響して、心電図
    変化をもたらすとの事です。
   ・感染症による「サイトカインの嵐」が起こり、特に若い人では急性の心不全に繋がります。

3) ワクチンの効果
   インフルエンザワクチンは、リスクを36%軽減すると言われています。
   一方で肺炎球菌ワクチンの効果は限定的との事です。

4) 急性感染症の際には、血中トロポニンを測定して心筋梗塞を見逃さない事が大事です。
   その他の心疾患である心不全、不整脈、脳梗塞なども急性感染症がリスクとなる事も留意しておく
   必要があります。

5) フラミンガムの心血管疾患のリスクを判定して、事前にスタチン系、少量アスピリンや降圧薬のARBを
   処方しておくことも考慮します。





私見)
 高齢者はインフルエンザからの回復に、1か月も要するとの論文もあります。
 (以前の私のブログを参照ください。)
 フラミンガムによるリスク因子がある人では、急性感染症に罹患したら基礎疾患の増悪を常に想定しなく
 てはならない様です。
 特に冠疾患患者は、インフルエンザ罹患の際にCPKやトロポニンテストを行う準備が必要です。






心筋梗塞と感染.pdf










posted by 斎賀一 at 16:23| Comment(0) | 循環器
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