乳癌健診のマンモグラフィーは過剰診断?
Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis, and Mammography Screening Effectiveness
N Engl J Med 2016;375:1438-47.最近NEJMにマンモグラフィーが過剰診断している可能性を示唆する論文が掲載されました。
1975~2012年のデータですが、腫瘍の大きさと死亡率との関係は10年間の経過観察期間が必要になるため、マンモグラフィー導入前の1975~1979年と導入後の2000~2002年を比較したデータも併せて検討しています。
簡略に結論的に記載しますと、マンモフラフィーにより乳癌の発見率が増加し、早期発見で大きな乳癌が少なくなったように見えますが、単に小さな乳癌の発見が増えただけで、しかもその小さな癌は生命予後に殆ど関係なく、生命予後が良くなったのは乳癌の治療の進歩に負う所が大きいとしています。
5cm以上の癌の発見率が低下しているように見えますが、実際は小さな癌の発見率が増えているので相対的に大きい癌が減っているようになっています。しかし大きい癌の件数には変化がありません。
乳癌の大きさが1cm以下の小さいものは、乳癌以外での疾病が死亡率に関与している。つまり小さな癌は生命予後に関係が少なく、進展して腫瘍が大きくなる確率は少ないとするデータです。
小さな癌の発見が増加している。
上の2つの表から推測すると、小さな癌の発見は過剰診断の可能性があるとしています。
私見)
マンモグラフィーの有効性、小さな癌の悪性度、過剰診断といったカテゴリーを同じ土俵で捕らえるの
はやや無理があり、注意する必要が有りはしないかと危惧します。
むしろ小さな癌の生物学的性質や画像所見は今後の発展に期待したいと思いますが、過剰なマンモ
グラフィーの期待も注意が必要です。