2024年07月31日

心房細動の脈拍コントロールにジゴキシンとβブロッカーは同等の効果?

心房細動の脈拍コントロールにジゴキシンとβブロッカーは同等の効果?

Consumer wearable devices for evaluation of heart rate control using
digoxin versus beta-blockers: the RATE-AF randomized trial



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 心房細動は下記の分類がされています。

・発作性心房細動は持続時間が1週間未満で、自然にまたは介入により正常洞調律に復帰する
 心房細動である。再発することがある。
・持続性心房細動は、1週間以上持続する心房細動である。
・長期持続性心房細動は1年間以上持続するが、洞調律に復帰する可能性がまだ残っている。
・永続性心房細動は、洞調律に戻すことができない。(洞調律への復帰を試みないという決定
 が下された患者も、この用語の範疇に含まれる)


 今回、この高齢者の永続性心房細動における心拍数コントロール(rate control)に関する
論文が出ていましたのでブログします。
但し対象例が少人数でもあり、本論文はスマホを利用したウェアラブルデバイスの評価が主体
のため、要略を主にブログします。


・RATE-AF試験(永続性心房細動における心拍数コントロール療法の評価)は、ジゴキシンと
 βブロッカーの有効性と副作用を比較しています。
 一般的なウェアラブルデバイス(スマホに連動したリストバンド)を使用して、心拍数の
 コントロールを連続的に監視し評価しました。

・永続性心房細動を有する患者で複数の併存疾患があり、心不全を伴う高齢者を対象にして
 います。53人が登録しています。平均年齢75.6歳で40%が女性です。20週間のデータです。

・主要転帰は、ウェアラブルデバイスで測定された心拍数コントロールの有効性。
 二次転帰は、副作用、生活の質、患者の満足度です。

・両群ともに十分な心拍数コントロールを達成しましたが、コントロールの方法は異なって
 いました。安静時、身体活動後、高い身体活動レベル後(週に30000歩以上)においても
 両群の脈拍コントロールは同等でした。
 また2つの薬の副作用プロファイルには違いがあり、それが患者の好みや生活の質に影響を
 与えました。

・結論
 ジゴキシンとベータブロッカーの両群が、永続性心房細動において有効な心拍数コントロール
 を提供することが、安静時にも身体活動後においても同等に示しました。
 しかし、治療の選択は個々の患者の特性、併存疾患、および薬物の副作用に対する患者の好み
 に依存する可能性があります。
 ウェアラブルデバイスの使用により、心拍数コントロールに関する連続的かつリアルタイムの
 データが提供され、AF患者の治療効果を監視するための新しい実用的なアプローチです。





私見)
 心拍コントロールにジギタリスは適していないと認識しています。
 特に活動時には無効ともされています。
 ジギタリスが無効な理由としては、
 ジギタリスは心臓の収縮力を増強する効果がありますが、急性の不整脈発作や頻脈の制御
 には即効性が不足しています。
 心房細動では限界があり、ジギタリスは主に心臓の収縮を助ける薬であり、心房細動のような
 不整脈では、心房と心室の間の電気的伝導を減少させるために使われることが多いですが、
 その効果は限定的です。
 ただ本論文では心不全の高齢者が対象のため、その有効性があるかもしれません。
 もっぱら本論文の趣旨は、スマホを利用したデバイスの有効性です。
 本院も持続血糖測定と心拍測定に、スマホを取り入れていく予定です。
 下記にデバイスのアクセスを掲載します。



https://smartwatch-blog.com/about-fitbit-charge-6/30510/







heart rate control using digoxin versus.pdf

心房細動ガイドライン・2023ACC_AHA.pdf











posted by 斎賀一 at 18:57| 循環器

2024年07月29日

糖尿病治療薬・メトグルコに腎保護作用がある

糖尿病治療薬・メトグルコに腎保護作用がある
 <短 報>
Renal protective effect of metformin in type 2 diabetes patients



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 糖尿病治療のメトグルコは、新薬の登場でその第一選択の地位を脅かされています。
しかし安価な薬剤のため、最近再び注目され始めています。
 今回糖尿病患者の慢性腎臓病に対して、腎保護がメトグルコにもあるとする論文が出て
いますので、ブログします。


1) U型糖尿病患者の316,693人が対象です。
   ベースラインのマッチングをして、メトグルコ服用群の13,096人と非服用群13,096人
   を比較しています。
   主要転帰は血清クレアチニンの倍増、腎機能のeGFRが15以上低下、エンドステージと
   しています。
   (CKD(慢性腎臓病)のエンドステージは、日本のG分類では「G5」に該当します。
    G5は「末期腎不全」(End-Stage Renal Disease, ESRD)を指し、通常腎機能が
    極度に低下している状態で、透析や腎移植が必要になる段階です。)

2) 結果
   メトグルコ群は非服用群と比較して、血清クレアチニン倍増の危険率は0.71、
   eGFRが15低下の危険率は0.61、末期腎不全は0.55でした。
   更にサブグループの解析でも、メトグルコ群は糖尿病患者の腎機能低下を抑制して
   いました。





私見)
 メトグルコは腎機能による適応範囲が拡大しております。
 併せてその効果が注目されています。
 本院でも私を含めて、昔からの物にその利用価値があるようです。
 勿論第一選択肢からは滑り落ちていますが...。








本論文.pdf

新しい血糖降下薬のコストパフォーマンス_.pdf

糖尿病治療の第一選択はSGLT-2阻害薬.pdf

糖尿病治療薬のメトグルコで軽度の貧血.pdf

メトグルコは中等度の腎機能低下でも処方可能.pdf

腎機能低下患者でもメトグルコはSU剤より有効.pdf

造影剤による急性腎障害.pdf

メトグルコ(糖尿病治療薬)について .pdf

本院における乳酸アシドーシス関連の検査方法.pdf

糖尿病治療薬・メトグルコと乳酸アシドーシス;その1.pdf

糖尿病治療薬・メトグルコと乳酸アシドーシス.pdf

抗精神薬の体重増加にメトグルコ(糖尿病治療薬)が有効.pdf

メトグルコ(糖尿病治療薬)は脳神経疾患を予防する.pdf

メトグルコ(糖尿病治療薬)が軽度〜中等度腎機能低下の人でも投与可能.pdf

糖尿病治療薬のメトグルコとビタミンB12欠乏症.pdf
















posted by 斎賀一 at 19:36| 糖尿病

2024年07月26日

80歳以上では抗凝固薬・リクシアナは低用量で十分

80歳以上では抗凝固薬・リクシアナは低用量で十分

Dose Reduction of Edoxaban in Patients 80 Years
and Older With Atrial Fibrillation



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 心房細動に抗凝固薬・DOACを処方するのは定番ですが、その中のリクシアナは60rと30r
があります。処方のクライテリアは腎機能と体重により、30rが推奨される場合があります。 
 今回雑誌JAMAから、80歳以上では30rで十分と、ENGAGE AF-TIMI 48研究の後解析が
載っていました。Full textを見ていないため、JAMAの要約よりはネットのTCMTDの方が良い
ようなのでブログします。


1) 80歳以上(平均83歳)の心房細動患者で、リクシアナ30rを服用している2,966人を
   対象にしています。
   その中で1,138人は、クライテリアに則らずに30rを処方されています。

2) 結果
   60rは30rと比較して、重篤な出血の危険率は1.57で、消化管出血も危険率は2.24
   でした。
   主要転帰の脳卒中と、全身の血栓症、死亡率は両群で差はありませんでした。
   リクシアナ30rとワーファリンを比較しても主要転帰の危険率は0.78で、重篤な出血
   の危険率は0.59、死亡の危険率も0.83と低下しています。

3) 考察
   薬理動態的に、80歳以上ではリクシアナの抗凝固作用は30rで十分との事です。
   これから推測するに、他のDOACにも減量が適応されそうですが、プラザキサは
   RE-LY研究で否定されおり、エリキュースにおいても明白な研究はありません。
   期待されますが今後の研究が待たれます。
   現段階では、他のDOACに拡大解釈は出来ないようです。






私見)
 事後処置をモットーとする私は、すでにそうしています。





本論文.pdf

TCMTD.pdf










posted by 斎賀一 at 19:37| 循環器