スタチン(脂質異常症治療薬)誘発糖尿病
Effects of statin therapy on diagnoses of new-onset diabetes
and worsening glycaemia in large-scale randomised blinded
statin trials
and worsening glycaemia in large-scale randomised blinded
statin trials
糖尿病は心血管疾患のリスクですが、脂質異常症も同様に危険因子です。
その治療薬のスタチンが糖尿病の発生に関与していることは、以前の私のブログでも紹介
しました。スタンダードスタチンにより新規糖尿病発生が10%増加し、ストロングスタチン
では更に10%の増加と言われています。
今回の論文ではその投与期間と糖尿病状態に踏み込んでのスタディです。
1) メタ解析です。2年以上、1,000人以上の対象者、ダブルブラインドのスタディを集積
しています。19のスタディで、スタチン群とプラセボ群を比較しています。
123,940人が対象で、その中25,701人が糖尿患者です。
4.3年の追跡調査です。
2) 結果
スタンダードまたはストロングスタチンを投与していると、全体で約10%の新規糖尿病
が発生しています。
スタチン群では2,420人/39,179人、1.3%/年の発生で、
コントルール群では2,214/39,266人、1.2%/年です。リスク比は1.10。
ストロングスタチンでは36%の増加で1,221/9,935人、4.8%/年。
コントロール群では905/9,859人、3.5%/年でした。
(メタ解析ですので整合性はありません。)
ベースラインに糖尿病がない場合は、スタンダードスタチンでHbA1cが0.06%増加、
ストロングスタチンでは0.08%の増加です。
糖尿病の新規発生率は、スタチンの種類には関係ありませんでした。
ベースラインに糖尿病があると、スタンダードスタチンの危険率は1.10で、ストロング
スタチンの危険率は1.24でした。
3 )結論
スタンダードスタチンの投与によりプラセボに比して10%の新規糖尿病の発生があり、
ストロングスタチンでは36%の増加でした。
この増加傾向は糖尿病と診断された以降も続きます。
新規糖尿病の発生は少数ですが、既に血糖値が正常を超えている人では(前糖尿病状態、
軽症糖尿病、いわゆる糖尿病予備軍)HbA1cを測定し経過観察をする事が、スタチン処方
の場合は特に重要です。
スタチンは血糖値を若干増加させますが、それを相殺し心血管疾患の予防効果が認められ
ます。
既に糖尿病と診断されている人でも、スタチンの有効性が最終的には認められます。
(AとBはスタンダードスタチン、CとDがストロングスタチン
左はHbA1Cがベースラインで、高ければスタチンの超過効果が多くあります。
右は糖尿病のリスクが多い人は、超過効果も高くなっています。
糖尿病のリスク判定はsunpple28ページに記載されていますが、解釈にギブアップ)
私見)
スタチンの効果は既に明白ですが、影響は少ないと言えども実地医家にとっては、やはり
懸念材料です。
スタチン誘発糖尿病 本論文.pdf
supple.pdf
1 スタチンは糖尿病を悪化.pdf
2 スタチンは悪党ではありません.pdf