高血圧・雑誌medical practiceより
<院内勉強用>
雑誌medical practiceに高血圧特集がありましたので、要点だけブログします。
1) 座談会
・最近では一般の高血圧患者でも、アルドステロン症が背景にあるのではと言われて
いる。レニン・アルドステロン測定も坐位で15分間以上の安静で採血しても良いと
されています。時間帯も朝方でなくてもよい。
原発性アルドステロン症の基準に満たなくても、アルドステロンが高めの患者がおり、
MR関連高血圧として注目されている。
10%以上がアルドステロンと関連がある可能性が高い。
レニン活性が1以下の場合は、降圧利尿薬、MR拮抗薬、エンレストが有効。
レニン活性が1以上なら、カルシウム拮抗薬やARBが有効。
(レニンとアルドステロンがフィードバックしている時、と単独で高い場合とを分けて
考えなくてはなりません。)
つまり、初期段階でレニン・アルドステロンを測定する事は有用。
・薬剤誘発性(漢方)、睡眠時無呼吸も念頭に置く。
・若い人は血管が柔らかいので、拡張期血圧は上がる傾向です。
・保険適応の縛りがあるが、糖尿病合併のある人はアルブミン尿の測定をする。
2) 総説
・自宅での測定は上腕で国産血圧計を使用し、起床後1時間以内、排尿後、食事前、
座位での測定が原則。
3) エビデンス
・脳心血管疾患の発生に、サイアザイド系利尿薬とサイアザイド類似薬の差はなかった。
しかし、MR拮抗薬との優先に関しては更なる検証が必要。
・慢性腎臓病の進行に、RA系阻害薬(ACE阻害薬、ARB)の継続が有害との結論は出な
かった。従って腎機能の保持のために、RA系阻害薬を中止する必要はない。
(私のブログでも紹介)
4) 重症高血圧
・高血圧緊急症(進行する臓器障害)、高血圧切迫症(進行する臓器障害は伴わない)
一過性血圧上昇に分けられる。
・可逆性の後部白質脳症(PRES)
5) 二次性高血圧
原発性アルドステロン症 早朝〜午前中の検査であれば、随時座位採血で内服薬を休薬しなくても良い。
できれば影響の少ないカルシウム拮抗薬に変更後が良い。
2021年4月から我が国における測定法が変更になったことに伴い、スクリーニング陽性の
カットオフ値が変更された。
PAC(pg/mL)/PRA (ng/mL/時)≧ 200又はPAC(pg/mL)/ARC (pg/mL) ≧40かつPAC ≧
60をスクリーニング検査陽性、PAC/PRA 100〜200またはPAC/ARC 20-40が境界域
として設定された。
クッシング症候群 早朝血中コルチゾールおよびACTHを同時測定。
先端巨大症 血中GHおよびIGF-1を測定する。IGF-1はGHに比べ、運動、睡眠、食事、ストレスの影響
を受けにくく、日内変動が少ないため、スクリーニング検査には有用であるが、年齢、
性別によって基準値が異なるので、注意が必要。
褐色細胞腫 本院の従来法
6) 治療抵抗性高血圧
・脳幹部血管圧迫による高血圧
・eGFRが30以上ではサイアザイド系利尿薬、30未満ではループ利尿薬を用いる。
・ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬と非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の併用
も認められている。
・エンレストが期待されている。
7) 新規高血圧薬
・ステロイド型は慢性腎臓病患者でARBと併用すると、高カリウム血症のリスクがあるが
非ステロイド型のミネブロは軽減されている。
・利尿効果はアルダクトンAのみ
・ミネブロは糖尿病患者の微量アルブミン尿を減少させる。
・エンレストは降圧効果に加え、心不全HFrEF患者の生命予後改善効果がある。
8) 運動、食事
・尿中ナトリウム/カリウム比が脳心血管リスクの指標となっている。
(尿中ナトリウムと尿中カリウムの比率が高い場合、つまりナトリウムがカリウムより
も多い場合、次のような状況が考えられます。
高血圧:高ナトリウム摂取により血圧が上昇し、高カリウム摂取不足により血圧が
調整されにくくなる可能性があります。
腎臓機能の低下:腎臓がナトリウムを適切に排泄できない場合、ナトリウムが蓄積
しやすくなります。
塩分摂取過多:食事中の過剰な塩分摂取により、尿中ナトリウムの量が増えます。
一方で、尿中ナトリウムと尿中カリウムの比率が低い場合、つまり
カリウムがナトリウムよりも多い場合、次のような状況が考えられ
ます。
高血圧予防:カリウムは血圧を下げる効果があり、十分なカリウム摂取が心血管の
健康を保つのに役立ちます。
腎臓の健康:カリウムは腎臓の機能をサポートし、尿中に排泄されることで身体の
バランスを維持します。
健康的な食生活:野菜や果物などの食品は通常カリウムが豊富であり、バランスの
取れた食事が尿中ナトリウムと尿中カリウムの比率を良好に保ち
ます。
健康な成人の場合、尿中ナトリウムと尿中カリウムの比率は約1:1から3:1の範囲が
望ましいとされています。
例えば、尿中ナトリウムが100mmol/Lで、尿中カリウムが60mmol/Lの場合、
比率は約1.7:1となります。)
今後も随時尿で、尿中ナトリウム/尿中クレアチニン比も行ってまいります。
9) 高齢者
・HFpEF患者は左室前負荷の変化により血圧が変動しやすいため、利尿作用のあるMR
拮抗薬やエンレストを組み合わせるのは注意が必要。
・カルシウム拮抗薬は左室収縮率を低下させるが、心機能が保たれているHFpEFの場合は
降圧を優先すべき。
・HFpEF患者は運動時に脈拍が上がりにくいため、βブロッカーの使用は注意が必要で
心拍数が多くない患者には推奨されない。
10) 妊娠
2022年より、アムロジンの添付文書の禁忌項目から妊娠が削除されたとの事です。
(本院では従来通り、アルドメットとアダラートCRを処方して参ります。)
11) βブロッカーについての私見
本院のスタンスは、メインテートとアーチストです。
甲状腺機能亢進症ではテノーミン、頻脈発作ではインデラール。
徐脈には原則処方をしない。
下記に書籍「薬の使い分け 羊土社」より抜粋します。
12) 慢性腎臓病
(紆余曲折があります。)
・RA系阻害薬は、悪化には繋がらない事が実証された。
蛋白尿陽性でeGFRが30以上なら第一選択はRA系阻害薬だが、早めのエンレストへの
切り替えも考慮。
・蛋白尿陰性の慢性腎臓病では、RA系阻害薬が腎予後に悪化とのデータ。
従ってカルシウム拮抗薬を第一選択とすることが無難かとの事。
(本院では原則、ランデルを処方しますが、降圧が優先するようです。)
・SGLT-2阻害薬は高カリウム血症のリスクを16%削減。カリウム血症の管理から早期の
導入を推奨
・RA系阻害薬にミネブロを追加することにより、アルブミン尿の低下に繋がる。
私見)
高血圧の治療も日進月歩ですが、その考え方も変化しており、注意が必要です。