2024年02月28日

小児の2024・ワクチンガイドライン

小児の2024・ワクチンガイドライン

Recommended Childhood and Adolescent Immunization Schedule:
United States, 2024



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 アメリカでの小児・青年のワクチンガイドライン2024年版が発表になっています。
特徴として、肺炎球菌ワクチンに対する変化があります。


以前に肺炎球菌ワクチンについて私のブログで紹介しましたが、復習を兼ねて下記に記載
します。


「肺炎球菌は、菌体の表面のpolysaccharideにより100種類ほどに分類されます。
病原性のあるものは主に24種で、75%と言われています。
肺炎球菌ワクチンは2種類あります。
子供用のPneumococcal conjugate vaccines(PCV)と
高齢者用のPneumococcal polysaccharide vaccine(PPSV)です。
Pneumococcal Conjugate Vaccines (PCV)は結合ワクチンで、多糖体と蛋白質が結合して
います。
これにより、免疫系がより強力に反応しやすくなります。
主に幼児や小児は免疫応答が弱いので、PCVを用います。
効果は肺炎球菌感染症だけでなく、中耳炎や菌血症などの他の病気も予防することが期待
されます。
PPSVは肺炎球菌の多糖体のみの抗体です。これにより接種された人の免疫系は、これらの
多糖体を認識して対応する抗体を生成します。
成人は免疫応答が確立されていますので、多価のPPSVが用いられます。
PPSVの方が多価のため有効のように感じられますが、それには制限があり、免疫応答が強い
PCVの方が一般的な菌種には有効性が高いです。
年齢とともに免疫機能が低下する現象があり、これが感染症への感受性を高める一因となり
ます。日本においても高齢者にPCVが期待される原因です。」


以下に本ガイドラインの要点を記載します。

現在、小児の肺炎球菌ワクチンはPCV13ですが、今回のガイドラインではPCV13が削除され
PCV20が追加されています。PCV15、PCV20、PPSV23の定期接種、キャッチアップ、
特別な状況に関する項目が追加されています。
日本では小児のRSワクチンは未だ承認されていませんが、アメリカでは詳細な追加項目が
セッティングされています。
インフルエンザワクチンの卵アレルギーに関しても、事前の配慮は必要ないとしています。
ヒブワクチンの天然ラテックスアレルギーに対するアレルギー反応の病歴の禁忌条項は、
削除されました。






私見)
 日本のワクチン事情は安全第一です。
 それなりの利点はありますが...。









Childhoodand AdolescentImmunizationSchedule.pdf

Recommended Child.pdf








posted by 斎賀一 at 18:55| 小児科

2024年02月26日

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)と心房細動

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)と心房細動

<短 報>
Mineralocorticoid receptor antagonists and atrial fibrillation:
a meta-analysis of clinical trials



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 高血圧治療薬のMRAs(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)は、心房細動に有効との論文が
出ています。以前より指摘されていましたが直近での論文です。

本院ではスピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)
エプレレノン(商品名:セララ)
エサキセレノン(商品名:ミネブロ)を使用しています。
Naの再吸収とKの排泄を抑えることから、カリウム保持性利尿剤ともいわれます。
以前は高カリウム血症が問題となり処方が控えめになった時期もあるため、降圧薬のARBとの
併用にも注意勧告が出ていましたが、最近では復活の機運です。
治療抵抗性の高血圧にも、裏技として少量のMRAsを処方します。


1) 本論文はMRAが心不全と心房細動の治療および予防に、いかに効果があるかを検証して
   います。

2) 2023年3月24日までに集計してランダマイズした7つの論文のメタ解析です。
   20,741人を対象としています。平均年齢は65.6歳です。
   コントロール群と比較してMRA群は、心不全患者の死亡と入院率のリスク比が0.81
   でした。
   心不全でない患者では、死亡と心不全の入院率のリスク比は0.84です。
   心不全患者で心房細動を有している場合に、MRA群はコントロール群と比較してリスク
   比が0.95でした。
   20の研究から21,791人(平均年齢は65.2歳)のPooled detaによると、心房細動の
   経歴有無に関わらず心房細動発生のリスク比を、0.76に減少させています。
   (つまり、24%の減少です。)

3) MRAは中等度ではありますが、心房細動の発生と再発を抑制しています。






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私見)
 心不全と心房細動のリスクのある人(発作性心房細動)には、血清カリウムに注意しながら
 MRAsを少量かぶせるのも良いかもしれません。






MRA Mineralocorticoid receptor antagonists and atrial fibrillation_.pdf












posted by 斎賀一 at 20:51| 循環器

2024年02月22日

シェーグレン症候群における間質性膀胱炎

シェーグレン症候群における間質性膀胱炎

I
nterstitial Cystitis in Sjögren’s Syndrome
[n engl j med 390;6 nejm.org February 8, 2024]



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 シェーグレン症候群における間質性膀胱炎の症例報告がありましたので、ブログします。
症例は66歳女性です。シェーグレン症候群に罹患していました。
下腹部痛と尿意切迫が1か月前より続き、受診しています。
1年前にSicca症候群を呈して、リウマチ科にてシェーグレン症候群の診断を受けています。
【"sicca syndrome"(シッカ症候群)は、単に口や目の乾燥感を含む症状のある状態を指す
 非特異的な用語です。この症状は、シェーグレン症候群だけでなく、他の病気や医学的状態
 にも関連しています。しかし、一般的には "Sjögren's syndrome" が "sicca syndrome" の
 一部として考えられることが多いです。】
診察時に恥骨上の疼痛と、指骨間関節痛が認められています。
尿沈渣では軽度の血尿と白血球を認めていますが、尿培養では細菌は陰性です。
CTでは膀胱壁の肥厚と両側の水腎症の所見ですが、尿管結石はありません。
膀胱の生検ではリンパ球と組織球の浸潤があり、一部ではリンパ濾胞形成も認められます。






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            (膀胱壁の肥厚が認められます。)





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            (両側の腎盂の拡大が認められます。)





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    (赤い細胞が形質細胞でしょうか?右の方にリンパ濾胞形成があります。)


今日の臨床サポートから調べますと

間質性膀胱炎とは、原因不明の膀胱痛を伴う非細菌性萎縮性膀胱炎である。
女性に多く(9割)、男性は慢性前立腺炎を合併することがある。
頻度は人口の1%、遺伝素因は不明だが、食事習慣(酸、カリウム、刺激物)など環境因子が
症状増悪因子となっている。
病態は尿路上皮の尿の透過性の亢進に伴う間質の炎症で、グリコサミノグリカン層(GAG)の
機能異常と肥満細胞の増多が認められる。
尿に対する膀胱の知覚過敏であり、免疫学的に亢進した病態である。
治療に奏功しない6週間以上続く膀胱の不快感、圧迫感、疼痛膀胱を認め、麻酔下に経尿道的に
15分ほど膀胱を充満させて、膀胱鏡下に膀胱粘膜を観察し新生血管の集簇などの異常粘膜を
認める場合診断する。

 食事療法:
 尿の酸度やカリウムが多いことが症状悪化原因になる。
 そのため、尿を酸性にしやすい発酵品(チーズ、納豆、ヨーグルト)・柑橘類や、カリウムが
 多いグレープフルーツジュース・バナナ・生野菜や、尿中の刺激物となるコーヒーやキムチ、
 香辛料を避ける。
 膀胱訓練:
 水分をよく摂り薄い尿をなるべくたくさん膀胱に溜めること(膀胱訓練)は、一時的に症状を
 悪化させるが、徐々に蓄尿量を増やし痛みが軽減する。
 薬物療法:
 Th2サイトカイン拮抗薬のsuplatast tosilate(IPD)や三環系抗うつ薬、酸性尿改善薬のクエン
 酸塩であるウラリット、鎮痛薬であるプレガバリン(リリカ)などが症状緩和に有効なことが
 ある。
 想起:
 膀胱炎を繰り返し、始めは抗菌薬が効いていたが徐々に無効になる。
 原因不明で、精神安定薬も頻尿改善薬も無効な場合、想起する。
 食事やストレスなど生活環境で膀胱症状が悪化したり改善したりする場合、想起する。






私見)
 尿意切迫など個人的にも参考になりますが、危険と隣り合わせです。
 注意する食事も、私の嗜好品とダブります。













posted by 斎賀一 at 11:28| 泌尿器・腎臓・前立腺