血小板減少症患者における抗凝固薬の影響
Influence of thrombocytopenia on bleeding and vascular events
In atrial fibrillation
In atrial fibrillation
心房細動における抗凝固薬のDOACは治療の根幹ですが、血小板減少症において出血の危険が
懸念されます。心房細動において血小板減少症を伴っている人は、6〜24%と言われています。
殆どのスタディでは、中等度以上の血小板減少症の患者は事前に除外されています。
今回新たなスタディが発表になっていますので、ブログします。
1) 2015年〜2020年にかけて、新たに心房細動と診断された1,070人を登録しています。
274人が血小板数10万以下の減少症群と、796人が15万以上の正常群の2群で比較して
います。
約半数がワーファリンを服用し、40%がDOACのエリキュースを服用しています。
75%に抗血小板薬が併用されていました。
抗凝固薬の投与12週間前と投与4週間後で2回測定しています。
主要転帰は、1年間累積された大出血です。
二次転帰は臨床関連出血、動脈性及び静脈性血栓症、全死亡です。
2) 血小板減少症群では大出血が13.3%で、正常群では5.7%です。
臨床的関連出血は減少群で24.5%、正常群では16.7%です。
血小板減少症は独立した危険因子で、リスクは2.20です。
血小板減少の程度に相関して、出血のリスクが増大しています。
血小板数が7万5千以下では、リスクは2.92です。
興味深いことに、静脈性の血栓症も血小板減少群で3.9%に対し、正常群では0.9%
でした。
3)討論
心房細動で抗凝固薬を服用すると出血のリスクが生じますが、その第一の要因は年齢です。
その他として悪性疾患、腎疾患、抗血小板薬、高血圧などが推測されています。
血小板数が5万以下の場合は抗凝固薬の投与量を減少するように勧められていますが、明白な
エビデンスはありませんでした。
血小板減少症の患者に抗凝固薬を処方すると、血栓症の発生も増加する事があります。
この事は単に血小板数が問題でなく、その根底には血小板に影響を及ぼす何らかの因子が
関係しているかもしれません。
私見)
血小板減少は出血と血栓の両面にリスクがあるようです。
抗凝固薬の投与では十分な注意が必要です。
血小板減少 AF.pdf