2023年11月29日

膵嚢腫・IPMNの悪性化予測因子

膵嚢腫・IPMNの悪性化予測因子

Pancreatic Cyst Features Predict for Future Development of Pancreatic Cancer



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 人間ドックや本院でも、定期診察のエコー検査で膵嚢腫は偶然発見される事がままあります。
その中でもIPMNは、以前は前癌状態として摘出術もされていましたが、意外にも良性の経過を
辿ることが多く、今では経過観察が主体です。
IPMNのガイドラインは既に確立されていますが、(下記参照)
今回雑誌Gastrointestinal Endoscopyより、悪性化の予測因子が掲載されていますのでブログ
します。


1) IPMNは主膵管型と分岐型がありますが、(下記のPDFを参照)主膵管型は悪性への移行が
   多く、本論文からは除外されています。
   1999年から2013年の分岐型IPMNを調べています。
   膵嚢腫7,211例を登録し調べています。その内78例(1.08%)が分岐型IPMNから膵癌に
   進行していますが、最終的に72例が癌発生群としました。
   分岐型IPMNから膵癌が発生していない265例がコントロール群として登録し、比較対象と
   なっています。

2) 結果
   診断時に30mm以上の大きいものが、癌発生群には多い。
   年齢による悪化率は1.03/年齢、診断時での大きさの危険率は1.03/mm、
   年間での増大の危険率は1.22/mm/年、膵管の拡張が5〜9.9mmの危険率は3.78で、
   10mm以上では13.57でした。




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       ガイドラインとして



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私見)
  IPMNの診断にて二次施設に紹介していますが、その後に逆紹介の形で本院にて経過観察を
  している患者さんも多く見られます。上記観点を注視して参ります。






本論文.pdf

膵管内乳頭粘液性腫瘍.pdf










posted by 斎賀一 at 19:09| 消化器・PPI

2023年11月28日

ネット情報・短報

               ネット情報・短報



   医療ネットから興味のある情報がありましたのでブログします。

   ・インフルエンザは収束傾向
    定点当たりの報告でも、インフルエンザは大幅に縮小傾向との事です。
    代わりに咽頭結膜炎と感染性胃腸炎が増加傾向です。
    本院でもやはり同じ傾向です。

   ・精神疾患にかからない方が異常
    一人の人が生涯に精神薬の服用を含めて精神疾患にかかる率は、80%との事です。





 私見)
   ・12月からが本格的なインフルエンザのシーズンに突入すると思っています。
    本院もそれに備えた体制を作って参りましょう。

   ・私は神経質と自認しています。
    世界で一番自殺率の低い国は、ジャマイカ(ジャー、まー良いか)と聞いています。
    私が若い時から何とか凌げているのは、能天気とは言わないまでも、大らかな妻の
    お蔭と感謝しています。
    しかし人はいつ何時、破調を起こすとも限りません。
    ただただ、日々の生活を大事にしたいものです。






 1 咽頭結膜炎.pdf

 2 精神疾患にかからない方が異常.pdf











posted by 斎賀一 at 19:07| その他

2023年11月24日

前立腺肥大と過活動膀胱の薬剤

前立腺肥大と過活動膀胱の薬剤

<院内勉強>

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1) α1遮断薬
   ・ハルナール0.1mg、0.2mg  1回1錠 1日1回
   ・フリバス25mg,50mg,75mg  1回1錠 1日1回
   ・ユリーフ2mg,4mg 1回1錠 1日2回

2) PDE5阻害薬
   ・ザルティア2.5mg,5mg 1回1錠 1日1回

3) 5α還元酵素阻害薬
   ・アボルブ0.5mg 1回1カプセル 1日1回

4) 抗コリン薬
   ・ベシケア2.5mg,5mg 1回1錠 1日1回
   ・トビエース4mg,8mg 1回1錠 1日1回
   ・ウリトス0.1mg 1回1錠 1日2回

5) β3刺激薬
   ・ベタニス25mg,50mg 1回1錠 1日1回
   ・ベオーバ50mg 1回1錠 1日1回



治療薬の説明

・α遮断薬
 
 α1A受容体: 前立腺多い  
 α1B受容体: 血管に多い 
 α1D受容体: 前立腺と膀胱排尿筋に多い




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 α1A受容体を遮断→排尿症状が改善
 α1B受容体を遮断→降圧作用
 α1D受容体を遮断→膀胱刺激症状(夜間頻尿等)が改善
 ハルナールはα1受容体全体をブロックします。
 フリバスはα1受容体のうち、α1D受容体を選択的にブロックします。
 夜間頻尿など膀胱刺激障害が強そうな場合、α1D遮断作用が強いフリバスを選択する事に
 なります。
 
 精嚢にも「α1A受容体」があります。そのため「α1A受容体」を遮断すると、射精障害などの
 副作用を起こしやすくなります。特にユリーフに認められます。
 逆行性射精と射出障害の2つがあります。

 逆行性射精: α1受容体遮断作用(特にα1A受容体)→下部尿路組織の平滑筋弛緩→射精時に
        膀胱頸部(内尿道口)の閉鎖不全→精液が膀胱内に逆流してしまう
 射出障害:  精嚢や精管に分布しているα1受容体(特にα1A 受容体)が遮断
        →精嚢、精管の内圧低下、収縮抑制→精液が、後部尿道に出てこない

 ハルナール  Tmax最高血中濃度到達時間 7時間  起立性低血圧は心配ない。
 ユリーフ   1時間  
 フリバス   1時間 よって起立性低血圧に注意が必要

 ・5α還元酵素阻害薬;アボルブ
  PSAが1.5以上の前立腺腫大であることが条件です。
  しかし本剤は、PSA検査値が見かけ上で低下するため注意が必要です。
  6か月後にPSAは50%低下します。
  即効性がないので、一般に効果が出るまでに半年から1年ぐらいかかります。
  従って、通常はα遮断薬など、比較的症状を緩和する即効性のある薬剤と併用するのが一般的
  だと思います。副作用として前立腺癌、性欲減退、女性化乳房が懸念されています。

 ・β3刺激薬
  アドレナリンβ3受容体を刺激することで、膀胱平滑筋を弛緩させます。
  その結果、膀胱に溜めておける尿の量が増えます。
  そのため抗コリン薬のような口喝、尿閉、緑内障の心配はありません。
  ベタニスは併用薬の注意が多く、生殖機能の影響(動物実験)も心配されています。
  ベオーバはその制限はないようです。

 ・過活動膀胱を伴う場合に抗コリン薬を検討
  前立腺肥大があると
  なぜ過活動膀胱を伴うかは十分に解明されていません。                                                                                                               
  排尿筋が肥厚したり、不安定になっているためかもしれません。
  α遮断薬だけでも膀胱刺激症状を軽減できます。
  さらに症状緩和のため抗コリン薬を追加する場合は、α遮断薬に少量追加が基本です。
  ウリトスを1日2回飲むということで、比較的半減期が短い薬なので、肥大症を伴っている
  高齢の方などには、使いやすいお薬といわれています。
  また、口内乾燥が出現する頻度もかなり少ないといわれています。




治療戦略



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 ・step1
  α1遮断薬又はザルティアを処方(下部尿路症状に対する効果は同等)
 ・step2
  α1遮断薬とザルティアを併用する。
 ・step3
  前立腺腫大が30ml以上の場合は、α1遮断薬又はザルティアにアボルブを追加する。
 ・step4
  過活動膀胱を伴う前立腺肥大の場合は、α1遮断薬に抗コリン薬又はβ3刺激薬に抗コリン薬を
  少量追加する。








前立腺肥大 アルゴリズム -.pdf












posted by 斎賀一 at 19:26| 泌尿器・腎臓・前立腺