2023年10月31日

脂質異常症治療薬のクレストールとリピトールの比較

脂質異常症治療薬のクレストールとリピトールの比較

Rosuvastatin versus atorvastatin treatment in adults with
coronary artery disease: secondary analysis of the randomised
LODESTAR trial



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 脂質異常症治療薬の中で汎用されているストロングのクレストールと、リピトールを比較した
論文が出ていましたのでブログします。韓国からの報告です。


1) 2016年9月から2019年11月までの統計です。
   冠動脈疾患を有する、19歳以上の4,400人が対象です。
   クレストール群が2,204人で、リピトール群が2,196人です。
   主要転帰は3年間で死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈再建術です。
   二次転帰は安全性;新たな糖尿病発生、心不全の入院、血栓塞栓症、腎疾患のエンド
   ステージ、忍容性による中断、白内障の手術、血液検査異常です。

2) 結果
   4,400人中で4,341人が最終登録しています。
   平均投与量はクレストールが17.1mgで、リピトールが36.0mgです。
   主要転帰発生はクレストール群で189人(8.7%)、リピトール群では178人(8.2%)
   でした。
   期間中のLDLはクレストール群で1.8mmol、リピトール群で1.9mmolでした。
   新規の糖尿病発生はクレストール群で7.2%、リピトール群で5.3%でした。
   白内障手術の発生はクレストール群で2.5%、リピトール群で1.5%でした。





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3) 結論
   クレストール群もリピトール群も冠動脈疾患に対してほぼ同じ効果でしたが、新規の
   糖尿病発生と白内障手術はクレストール群の方が多い結果です。

4) 考察
   以前のSATURN研究では、エコーにおける血管のアテロームの変化は両群に差はありま
   せんでした。また主要転帰においても差は認められていません。
   これは投与量が本研究よりも多い点と、観察期間が短かったためと推測します。
   本研究では、LDLコレステロールの低下はクレストール群の方が大きい結果でした。
   これはクレストール群の方が半減期が長く、HMG-COA reductaseに強く結合するため
   と思われます。この事が新規糖尿病発生がクレストール群の方に多い結果になったと
   思われます。
   白内障では上皮の再生抑制に長時間クレストール群の方で晒されるためと思われます。
   主要転帰で若干クレストール群よりリピトール群の方が勝っているのは、ゼチーアの
   併用が多い点とリピトールが色々な組織に入り込んで作用するためとしています。
   つまりPleiotropic effectと捉えていますが、今後の研究が待たれます。





私見)
  クレストールとリピトールでは、有効性に差はないようです。
  クレストールは水溶性でリピトールは脂溶性の差があるものと認識しておりますが、
  コレステロールを下げる意味ではクレストール、pleiotropicを期待するのなら
  リピトールかとも思いました。









Rosuvastatin versus atorvastatin.pdf










posted by 斎賀一 at 19:41| 脂質異常

2023年10月28日

高血圧の積極的治療における急性腎機能低下

高血圧の積極的治療における急性腎機能低下

Acute Declines in Estimated GFR in Blood Pressure Target
Trials and Risk of Adverse Outcomes

<短 報>


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 現在では至適血圧は120となり積極的治療が標準的治療よりも推奨されていますが、急性の
 腎機能低下のケースもあり注意が必要との論文が出ています。


1)4つのランダマイズ試験を対象にしています。
  高血圧の積極的治療と標準的治療を比較して、4か月後の腎機能の急性低下をベースライン
  から15%以上と15%以内とに分けています。
  主要転帰はクレアチニンが3.3以上、または腎不全により透析及び腎移植の治療を要した
  場合です。

2) 結果
   登録者は腎機能eGFRが60以下の4,473人です。
   24か月後に腎のエンドステージである主要転帰の発生は、351例(8%)でした。
   その中で死亡は304人です。
   4か月後の急性腎機能低下は積極的治療群で17.8%、標準的治療群では11.0%でした。
   急性腎機能低下が15%以内の場合に、腎の主要転帰の発生は積極的治療群では標準的
   治療群と比較して危険率は0.75と低いのですが、急性腎機能低下が15%以上の場合は
   15%以内の標準的治療群と比較して、腎の主要転帰の発生は積極的治療群で危険率が
   1.99、標準的治療群では2.47でした。

3) 結論
   4か月後の急性腎機能低下は積極的治療群も標準的治療群も、その後の腎の主要転帰発生に
   悪化を及ぼします。





私見)
  急性腎機能低下は稀ですが積極的治療群では18%、標準的治療群では11%発生しており、
  一般的には可逆的と言われていますが、腎不全に移行する例もあり十分な注意が必要です。
  積極的治療に移行したら3〜4か月後の腎機能検査は必須で、ドーズダウンも考量すべきかも
  しれません。






Acute Declines in Estimated GFR.pdf










posted by 斎賀一 at 16:39| 循環器

2023年10月27日

抗うつ薬の体重増加

抗うつ薬の体重増加

<短 報>
Certain antidepressants may cause more weight gain over 2 years



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 学会Obesity Weekで発表がありました。
以前より懸念されていた抗うつ薬に、体重増加の副作用があるとしています。
抗うつ薬のSSRI、SNRI、mirtazapine(レフレックス)と三環系抗うつ薬とを比較しています。


1) 20歳から65歳の234,618人を対象にしています。
   2010年から2019年の調査です。体重を6、12、24か月時点で調べました。

2) 三環系抗うつ薬と比較すると、SSRIでは2.38kg、SNRIは2.01kg、
   レフレックスは3.91kgの体重増がありました。
   男女での差はありませんでした。

3) 臨床家は処方時に、体重に対しての配慮が必要となり、患者のアドヒアランスにも
   注意しなくてはなりません。
    





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うつ病 体重.pdf











posted by 斎賀一 at 17:39| 脳・神経・精神・睡眠障害