2023年09月09日

肺炎球菌ワクチンとA型肝炎ワクチンの同時接種

肺炎球菌ワクチンとA型肝炎ワクチンの同時接種

Coadministered pneumococcal conjugate vaccine decreases immune
response to hepatitis A vaccine: a randomized controlled trial



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 ワクチンの同時接種は推奨されており、特に小児の場合、ワクチンの同時接種の数は天井
知らずです。接種の受診回数を減らすことが優先されています。
海外旅行の際の注意点は、発展途上国はワクチンの供給が不十分なため侵襲的肺炎球菌の感染症
が多く発生しています。また衛生環境上の問題から、A型肝炎も蔓延している国があります。
それらの国に旅行する際には、肺炎球菌ワクチンとA型肝炎ワクチンの同時接種を旅行検閲機関
では推奨しています。安全性は確立されていますが、ワクチン効果に対しての干渉作用に関する
論文はあまりありません。
以前からglycoconjugated vaccines(グリココンジュゲートワクチン)に関しての干渉作用
が一部で懸念されています。
従来のワクチンは、病原体全体やその部分を使って免疫応答を誘導することが一般的でした。
しかし、一部の細菌は表面に多糖類(糖分子の長い鎖)を持っており、これらの多糖類に対する
免疫応答が十分に強力ではないことがあります。
このため、多糖類を蛋白質に結びつけたglycoconjugated vaccinesが開発されました。
この結合により、免疫系は多糖類をより効果的に認識し、それに対する免疫応答を強化すること
ができます。
具体的な例として、肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンなどの病原体に対するglycoconjugated
vaccinesが広く使用されています。

 今回スカンジナビアから、肺炎球菌ワクチン(13価)とA型肝炎ワクチンの同時接種により
抗体価に干渉反応がないかの論文が出ています。


1) 旅行の検疫クリニックを訪れた、健康な305人の成人を対象に調べています。
   肺炎球菌ワクチンとA型肝炎ワクチンを同時接種した群、肺炎球菌ワクチン単独の群、
   A型肝炎ワクチン単独の群を1:1:1にランダマイズして接種後1か月の抗体値を調べて
   います。

2) 結論
   抗体のIgGを調べると、同時接種群と肺炎ワクチン単独での肺炎球菌に対する抗体値は同じ
   でしたが、A型肝炎に対する抗体値は型単独群よりも同時接種群の方が低下していました。
   安全性の面では問題はありませんでしたが、高齢者ほど同時接種ではA型肝炎に対する抗体
   価が低下していました。




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        (上のAは接種後1か月のA型肝炎に対する抗体値の分布
         明らかに同時接種の方が低下した分布です。)



3)考察
  Conjugate vaccineは4種混合ワクチンにも利用されていますし、小児の肺炎球菌ワクチン、
  ヒブワクチン、B型肝炎ワクチンとの同時接種も推奨されています。
  しかし今回の本論文の結果からは、glycoconjugated vaccinesのヘルパーT細胞などの
  干渉作用により、抗体値の低下を誘導する関連性を示唆しています。
  (コンジュゲートワクチンの特徴的な特性は、タンパク質や多糖類などの外部構造を持つ
  病原体と、免疫系に反応を引き起こすために使用される抗原を結びつけることです。)
  ワクチンの安全性を報告する機関は十分に機能していると思われるが、その効果に関しては
  未だ不明確です。







私見)
 同時接種はあらゆるガイドラインが推奨しています。
 ただし、小児の場合には安全を確認する場合は臨床家と相談し、単独接種もあり得るとして
 います。
 勿論、私は同時接種に反論するつもりはありませんが、本院では乳幼児の最初のワクチンで
 ある肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンは、免疫応答を見る意味でも初回は単独接種を行って
 います。






同時接種.pdf







posted by 斎賀一 at 15:44| ワクチン