施設入所者の新型コロナ再感染
Early Omicron infection is associated with increased reinfection risk
in older adults in long-term care and retirement facilities
in older adults in long-term care and retirement facilities
新型コロナのワクチンと感染を経験すると、ハイブリッドとして鬼に金棒で安心とのブログを
以前書きましたが、高齢者、特に施設に入所している人では易感染でもあり、実態はどうかの
論文が雑誌Lancetに掲載されています。
オミクロン株のBA.1/BA.2に早い段階で感染していますと、オミクロン株のBA.5に再感染すると
言われています。オミクロン株は免疫機能をすり抜けて再感染し、感染力を強めているとも
言われています。
1) 施設に長期入所している高齢者で、コロナワクチン接種済の750人が登録されています。
全員がコロナワクチンを4回接種済みです。
カナダからの報告で、観察期間は75日間です。(2022年7月から9月まで)
液性免疫と細胞免疫を調べていますが、318人は観察期間の3か月前より検査をして
います。
登録者を下記の様に分類しています。
・コロナに感染したことがない人; 2020年3月から2022年6月までに感染のない人
・priorに1回オミクロン株感染; 2021年12月15日から2022年6月30日までに感染
(つまり、観察期間直前の感染)
・preorに1回オミクロン株感染; 2021年12月15日より前の感染
(つまり、観察期間の前のpriorより更に前の感染)
・multi prior感染; 2021年12月15日から2022年7月1日に複数感染
(つまりpriorにおける複数感染)
(図から分かることは本論文の主題はpriorです。)
2) 750人中133人(17.7%)が、観察期間中にオミクロン感染をしています。
観察期間の前に少なくとも1回はコロナに感染していた人は268/750人(35.7%)で、
オミクロン株感染は131/750人(17.5%)でした。
観察期間に感染した人は133/750人(17.7%)です。
76/133人(57.1%)はPriorにオミクロン株に感染しており、観察期間中にも再感染して
います。観察期間中オミクロン株に感染していない人は、438/617人(71%)でした。
Priorにオミクロン株感染した人が、観察期間に再感染するリスクが高い傾向です。
再感染は最初の感染から5か月以内が多く、平均では156日でした。
登録者のフレイル、ワクチンとの間隔や施設内のアウトブレイクとは関係なく液性免疫と
細胞免疫の低下との関連性がありました。
3) 長期間施設に入所していることは、オミクロン株の再感染のリスクが高まりますが、
その主たる原因は免疫力の低下している事と関連性がありました。
年齢、施設のタイプ、男女差、施設の流行には関係ありませんでした。
4) 免疫力は個々人で異なり、ハイブリッド効果が低下している高齢者がいます。
5) 考察
オミクロン株に感染したことがない人と比べて、1価のワクチンを接種し2022年の早期に
BA.1/2に感染した人は、BA.5の再感染のリスクが高い結果です。
オミクロン株の再感染は最初のオミクロン株感染から6か月以内と短期間で発症し、免疫の
減衰が原因のため、早めのワクチン接種が有効と思われます。
私見)
残念ながらオミクロン株の変異が続いています。
本論文は現在の状況の前の段階での調査ですが、今後の感染対策の示唆に富んでいます。
初回接種の人と以前では2価のワクチンが有効でしたが、現在ではXBB1.5が主流です。
9月20日から始まる本邦のワクチンは、このXBB1.5対応の1価ワクチンです。
オミクロン株は免疫機能を潜り抜ける性質があり、感染力が増しています。
本論文の趣旨はpriorの状態にスポットを当てていますが、感染してハイブリッドの状態でも
オミクロンに対して免疫低下を起こしている高齢者は油断が出来ないとの事です。
一般の健康人にも当てはまるケースがあるかもしれません。
ワクチンを滞りなく接種し、感染対策は万全を期したいと思います。
ワクチンに関する詳細は下記にアクセスしてください。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/bivalent/
オミクロン 再感染.pdf