2023年08月30日

60歳以上のRSウイルスのワクチン

60歳以上のRSウイルスのワクチン


  
 日本でも60歳以上の人にRSVワクチンが承認されるようです。詳しい内容が分かりましたら
ブログしますが、海外では小児を含めた承認が進んでいるようです。


アメリカでは高齢者用に二つのワクチンが用意されているようです。

 ・グラクソスミスクライン社製のArexvy
  日本で承認されたのは、本ワクチンの様です。
  60歳以上の約25,000人が治験に参加しています。
  70%が全ての感染に対して予防効果がありました。
  80%に下気道感染の予防効果、95%に重症化の予防効果がありました。
  重篤な副反応はありませんでしたが、1例のギランバレー症候群と2例の脳脊髄炎の報告が
  ありました。

 ・ファイザー社のAbrysvo
  60%の感染予防効果、90%が重症化の下気道感染に予防効果がありました。
  副作用として1例のギランバレー症候群と、1例のミラー・フィッシャー症候群の報告が
  ありました。
  両ワクチン共に、リスクの高い高齢者には治験を行っていません。
  またその効果は接種後6か月で衰退するため、RS流行の初めに接種しなくてはなりません。






私見)
 厚労省より正式な指導がありましたら、下記文献を精読する予定です。







Bivalent RSV in Older.pdf

Efficacy and Safety of an Ad26.RSV..pdf

Pregnancy to Prevent RSV.pdf

Respiratory Syncytial Virus in Older Adults.pdf







posted by 斎賀一 at 19:00| 喘息・呼吸器・アレルギー

乳幼児のRSウイルス・ワクチンをアメリカでは承認

乳幼児のRSウイルス・ワクチンをアメリカでは承認



 アメリカのFDAは、乳幼児のRSVワクチンのBeyfortus(nirsevimab-alip)を承認して
います。

出生29週〜35週の1歳未満の乳幼児1,453人を対象にした研究です。
Beyfortusの50mgを1回筋注しています。
1回目のトライアルでは、70%の感染予防効果がありました。
2回目のトライアルは、75%の予防効果。
3回目のトライアルでは2歳以下を対象とし、2回のRS流行に亘って調べ、Beyfortusと
従来の抗体製剤であるシナジスの複合調査です。ほぼ同じ結果でした。

・最初のRS流行時には、8か月以下の乳幼児全てに適応があります。
 これにはシナジスを受けた乳幼児も含まれます。
・生後8〜19か月の乳幼児でリスクが高い場合は、シナジスを受けていても対象です。
・同じシーズンではBeyfortus接種を優先し、シナジスは避けるべきです。
 Beyfortusが利用可能でない地域では、可能になるまではシナジスを優先すべきです。
・RSシーズンでは、生後1週間で接種すべきです。
・生後8か月以下の乳幼児は、RSシーズンの始まる前に接種すべきです。
・リスクのある生後8〜19か月の乳幼児は、RSシーズンの始まる前に接種すべきです。
・他のワクチンとの同時接種は可能です。







私見)
 日本でも承認され厚労省から正式な指導がありましたら、再度ブログします。







2 RS.pdf

2 FDA Approves.pdf











posted by 斎賀一 at 18:37| 喘息・呼吸器・アレルギー

2023年08月28日

頸動脈解離の予防

頸動脈解離の予防
Risk Profile of Patients with Spontaneous Cervical Artery Dissection



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 頸動脈解離は稀な疾患ですが、若い人に多く、死亡率も高いため注目される疾患です。本院でも数名の患者さんが発症しており、事前に診断できなかったのか悔やまれます。今回、その予防に関する論文が掲載されていますのでブログします。

先ず頸動脈解離を説明します。(ウイキペディアより)

「脳に血液を供給する頚動脈の内層がふた状に裂けた状態のことである。典型的な症状は、首、顔、頭の片側に痛みが生じる。頸動脈解離は、脳卒中の症状である片目の失明、味覚異常、複視などを伴う場合がある。その他の症状には、ホルネル症候群(縮瞳と眼瞼下垂)があげられる。合併症には、脳卒中またはくも膜下出血があげられる。」


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         (以上ウイキペディアより)


本論文はイタリアからの報告です。

 1) 3群を比較検討しています。
    
    1群;特発性の頸動脈解離群(sCeAD)
    2群;sCeAD以外の急性脳卒中群
    3群;健康な病院職員です。
  
    1群は1,468人、平均年齢は47.3歳、男性が56.7%です。
    1群の病変は殆どが単一血管で頸動脈が59.3%、椎骨動脈が26.3%です。

 2) 結果
  
    1群を他の群と比較したリスク率は、高血圧が1.65、前兆のない片頭痛が2.67、
    前兆がある片頭痛は2.45、家族歴があれば1.69でした。
    一般的な脳卒中の危険因子の糖尿病、高脂血症、肥満の項目は関係なく寧ろ逆相関
    でした。
    又、β―ブロッカーが投与されていない場合は逆相関の関係です。
  
 
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 3) 高血圧と片頭痛がリスクです。
    治療にはβ-ブロッカーが有効です。




私見)
  若い人で高血圧がある人には片頭痛の有無を問診し、一度はMRI検査を勧め、基本的な治療はβ-ブロッカーが第一選択でしょうか。

  Uptodateより図譜
   解離は、動脈壁の構造的完全性が損なわれ、最初に壁内血腫として血液が層間に
   集まります。
   明白な外傷なしに起こる場合は、病因に関与する体質的な素因があっても特発性と
   扱われます。


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頸動脈解離.pdf









     
      
posted by 斎賀一 at 18:56| 脳・神経・精神・睡眠障害