2023年05月06日

食物アレルギー・2021年ガイドライン・その1

食物アレルギー・2021年ガイドライン・その1

 ケアネットより・聖路加国際病院 岡田正人氏



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 NHKの番組で放送になった食物アレルギーについて、患者さんから質問されることがありま
した。
まず第一弾として、大まかな内容をケアネットから纏めてみました。


1) 食物アレルギーは、新規発生においては年齢により異なります。
   卵アレルギーにおいても幼少期では卵白ですが、成人になると卵黄に変化します。
   小児期では木の実類が多くなり成人になるにしたがって小麦、甲殻類の頻度が増します。





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      落花生は木の実ではありません。最近では木の実が増えています。



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  特に最近ではクルミが増加傾向ですが、カシューナッツはアナフィラキシー反応を起こす
  ために注意が必要です。落花生は木の実ではありませんが、比較のため図に載っています。



2) 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
   特定の食品(小麦、甲殻類、セロリ、貝類、果物、ナッツ類など)摂取して2〜4時間以内
   に運動(軽作業や入浴でも生ずる)を行うと、アナフィラキシーを呈する事もある。
   特に鎮痛解熱剤、体調不良、飲酒などで高頻度となる。
   本疾患は再現性が低いので、再発防止を理解すれば原因食物の継続摂取は可能である。

3) アレルゲンコンポーネント


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        (ガイドライン・ダイジェスト版より)


  アレルギーを起こす原因の物質(原料)から抽出された粗抽出アレルゲンの中には、様々な
  構成成分が含まれており、その構成成分一つ一つをアレルゲンコンポーネントと呼びます。
  アレルゲンコンポーネントには大きく分けて2つの特性があります。
  @交差反応性(*)があるコンポーネント
  A種に特異的なコンポーネント
  (*)交差反応とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)に似た構造を持つ別の物質に、
     身体が誤ってアレルギー反応を起こすこと。




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  上の図のハンノキ/シラカバ、モモ/リンゴ、大豆のように、
  @交差反応性があるアレルゲンコンポーネントを持っていると、ハンノキ/シラカバの
   花粉症をきっかけに、モモ/リンゴや大豆のアレルギーも出てくることがあります。
                                 (以上ネットより)


 
  小麦に関しては



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  小麦のアレルギーのコンポーネントを表します。


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  HVは健康な人です。一般的なアレルギーの検査だけではアナフィラキシーを診断できません
  が、コンポーネントのω-5グリアジンを調べると精度が上がります。




 卵に関しては



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 オボアルブミンは加熱すればアレルゲンが低下しますが、オボムコイドは加熱しても低下
 しないため、オボムコイド陽性に場合は注意が一層必要となります。




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 例えば症例Bは加熱すれば卵は食べれますが、症例Aは加熱しても卵を摂取出来ません。


4) 深夜のアナフィラキシー(遅れて反応が出るので注意)
   豆乳、納豆、アニサキス、マカロン、猪肉が原因としてあります。

5) 花粉―食物アレルギー
   ・口腔アレルギー症候群
    花粉アレルギーと新鮮な果物、野菜の交差反応によります。
    桃→サクランボ→ナシなどの様に次々に増えていく傾向があります。
    多くは自然に軽快しますが、抗アレルギー薬で対応できます。
   ・アナフィラキシーを起こす場合として、下記の例がありエピペンが必要となります。
    カバノキと豆乳、ヨモギとセロリ、ニンジン、スパイス

6) ラテックス-フルーツ症候群
   以前は医療従事者に多く見られましたが、現在では天然ラテックスは使用されておらず
   合成ゴムのため頻度は低下しています。
   バナナ、アボカド、栗、キウイはアナフィラキシーを起こします。
   その他、リンゴ、ニンジン、セロリ、メロン、ジャガイモ、トマト、イチジク、
   パパイヤ、メロン、マンゴ、パイナップル、モモがあります。

7) pork-cat症候群
   一般的には猫アレルギーは時々ありますが、犬アレルギーは稀とされています。
   猫アレルギー皮膚抗原のため他の動物とは交差反応は少ないとされていますが、唾液の
   中のアルブミンによる経皮感作が原因で、犬とも交差します。

8) α-Gal症候群
   マダニ咬傷によりα-Galが感作され、獣肉の摂取後に遅延性アレルギーが誘発される。
   ウシ、ブタ、ヒツジ、ジビエなどの摂取から2〜6時間後にアナフィラキシーを起こす。
   抗腫瘍薬のセツキシマブ(アービタックス)もα-Galが含まれているので、静注の場合に
   即時型反応を呈する事がある。



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9) 納豆アレルギー
   納豆を摂取してから5〜14時間で発症する遅発型の重篤な反応で、
   70%は意識消失を伴う。
   納豆の発酵過程で生ずるPGAが原因で、PGAはクラゲの触角にも含まれており、本疾患の
   80%がサーファーです。
   夜間から早朝の原因不明のアナフィラキシーの場合は注意が必要です。
   PGAを含む製品としては、
    ・化粧品
    ・減塩醤油
    ・かまぼこ
   ・ドレッシング
    ・保存剤、甘味料、カルシウム吸収促進剤
     

10) パンケーキ症候群
   日本ではお好み焼き症候群です。
   開封後の砂糖などミックスした小麦粉にダニが繁殖し、耐熱性のコナヒョウダニ抗原に
   よって起こります。家ダニに感作されている人は注意です。
   たこ焼きも増加傾向です。

11) コチニール色素
   口紅やアイシャドーに使われる色素で感作された人が、フランス菓子のマカロンを摂取
   して全身性のアレルギー反応を誘発します。
   殆どが若い女性です。

12) アニサキスアレルギー
   多くの抗原は胃のペプシンで不活化されますが、アレルギー反応は摂取直後から12時間と
   幅があります。



   2021年版のガイドラインは下記より
   https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_8.html






私見)
 近年、食物アレルギーは多岐にわたりコンポーネントを含めますと、原因に到達するには
 かなりの診断力が問われます。
 意識消失も含めて、食物アレルギーは鑑別疾患の一つと捉える必要がありそうです。













posted by 斎賀一 at 15:07| 喘息・呼吸器・アレルギー

2023年05月02日

心房細動にアブレーションは第一選択・5つの考察

心房細動にアブレーションは第一選択・5つの考察

Ablation as First-Line Treatment for Atrial Fibrillation: 5 Things toKnow



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 心房細動の治療にはアブレーションが第一選択となり、薬物療法は次の一手となっています。
アブレーションもcryoablation(冷凍アブレーション)が主流の様です。
以前の私のブログでも紹介しましたが、纏めた情報がネットのmedscapeに載っていましたので
紹介します。
心房細動の治療の第一選択はcryoablationですが、その際に5つの考察があります。


1) 発作性心房細動の治療には、cryoablationが再発予防に効果があるとする2つの
   スタディがあります。
   EARLY-AF研究では1年後の経過観察で、再発率はcryoablationが42.9%に対して
   薬物療法では67.8%でした。
   STOP AF研究では、再発率はcryoablationが45.0%で、薬物療法が74.6%です。

2) 研究には制限(limitation)があります。
   重大な副作用として、EARLY-AF研究によればcryoablationでは3.2%、
   薬物療法では4%です。Cryoablationは横隔膜神経麻痺が主です。
   また、両研究共に出資しているのはcryoablationのメーカーです。

3) 患者さんによってはアブレーションを承諾しない傾向も依然としてあります。
   その際には専門家も患者さんの状態の経過によって判断をすべきです。
   保守的な臨床家は、経過を診るというよりはアブレーションをしないという非侵襲的
   治療を選択してしまうかもしれません。
   患者さんも半分が即座にアブレーションを承諾しますが、残りの半分は躊躇してしまい、
   結果的に無治療となっています。
   患者さんの血液循環が安定していれば経過をみることも可能ですが、患者さんのリスク
   評価を厳格にして、治療の決断を適切に行わなくてはなりません。

4) 心不全の状態がHFpEF(拡張不全)でも早期のアブレーションが有効です。
   CASTLE-AF研究では、心不全患者においてもアブレーションの方が、薬物療法よりも
   入院率と死亡率を低下させています。
   CABANA研究も同様の結果でした。

5) 新しいアブレーションとして、PFAが注目されています。
   (Pulsed field ablation(PFA)は、高電圧のpulsed electrical fieldを用いて
   標的組織の細胞に非可逆的なelectroporation(電気穿孔)を引き起こすことでフォース
   非依存性、心筋に対する高い組織選択性、障害組織の細胞外基質が保たれる組織学的
   特性など、アブレーション治療にとって魅力的な特性を有する。) ネットより
   下記に文献も掲載









本論文.pdf

Pulsed field ablation.pdf









posted by 斎賀一 at 18:17| 循環器

2023年05月01日

NT-proBNP検査は心房細動と脳卒中の予測因子

NT-proBNP検査は心房細動と脳卒中の予測因子

Effects of Systematic Atrial Fibrillation Screening According to
N-Terminal Pro-B-Type Natriuretic Peptide
: a Secondary Analysis of the randomized LOOP Study



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 以前発表されたLoop研究(下記のPDF参照)の事後解析です。
Loop研究では心房細動検出のために埋込み型ループレコーダーを装着しても、心房細動の
検出は高まったが、脳卒中、全身性塞栓症の減少にはつながらなかったとの報告でした。
以前に私のブログでも紹介しましたが、BNPは心房細動の予測因子と言われています。
当然ながら心房細動があれば、脳卒中の発症が増加します。


1) 70〜90歳の未だ心房細動を発症していないで(AF-naïve)、脳卒中のリスク
   (高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中の既往)が1以上の人が対象です。
   6,004人が登録しています。埋込み型ループレコーダーを使用しスクリーニングした
   ループ群と、通常の治療群を1対3に割り振って調べています。
   心房細動は6分以上続いた場合を診断し、抗凝固薬を処方します。
   最終的には5,819名が対象となり、平均年齢は74.7歳でした。
   ベースラインのNT-proBNPの値は125です。

2) 結論
   ループ群と通常群ともにNT-proBNPが平均以上に亢進していれば、
   心房細動のリスクは、各群とも1.84、2.79と増加します。
   脳卒中のリスクも1.21、1.60と増加しています。






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            (SEは全身の血栓症です。)



  NT-proBNPが亢進していなければ、両群共にリスク減には繋がっていません。
  また全死亡率の減少には両群共にNT-proBNPのサブグループにおいて関与できません
  でした。








私見)
 脳卒中のリスク(CHADSスコアー)を参考にNT-proBNPをリスク因子として捉える事も
 大事な様です。









1 本論文 loop.pdf

3 CHADスコアー.pdf

4 心不全におけるpro-BNP検査.pdf

5 心房細動の予測因子.pdf

6 BNP 予測因子.pdf











posted by 斎賀一 at 19:32| 循環器