2023年05月13日

新生児痙攣

新生児痙攣

Neonatal Seizures
[N Engl J Med 2023;388:1692-700.]
 


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新生児の痙攣について雑誌NEJMに総説が載っていました。本院では勿論、診断と治療において
守備範囲を超えていますが、稀に母子手帳に記載されていることがありますので、ブログで纏めてみました。


 1) 誘発性痙攣は必ずしも、てんかんとは限りません。てんかんは、何かの誘因なくして
    2回以上の痙攣発作と定められています。誘発性痙攣は、基本的には長期治療を必要と
    しません。最近定義された新生児てんかん症候群は、稀な疾患群で、誘発性痙攣とは
    異なり、長期治療を要する場合があります。

 2) 新生児痙攣は、最初は部分的な(局所の)発作から始まりますが、全般性(全身の)
    発作に進行する場合もあります。従って新生児の場合は、痙攣がしばしば、複雑部分
    発作の形であったり、典型的でなく、わずかな症状の場合があり、見逃されることも
    あります。

 3) 診断のレベルを段階的に示すことも、経過を診るうえで有効です。


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 4) 基礎疾患を想定しての検索も有効です。


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   ・ クロニック発作(間代発作)の場合は、脳梗塞が疑われ、画像診断が必須です。
    
     (クロニック(Clonic)の発作は、発作が起こる際に、筋肉が繰り返し痙攣して、
      拘縮する症状が特徴的な発作の一種です。この発作は、神経系の異常によって
      引き起こされ、意識障害やけいれんの発作が起こることがあります。)
       AIによる
 
   ・ トニック発作(強直性発作)は、低酸素の虚血性脳障害、代謝異常、チャンネル
     異常、血管疾患、脳皮質異常が疑われます。
    
     (トニック(tonic)発作は、突然意識を失わない部分的な発作で、筋肉が硬直
      する症状が特徴的な発作です。この発作は、大脳皮質の神経細胞の過剰な興奮
      によって引き起こされます。)
       AIによる
    
     (クロニック発作は、発作時に筋肉が繰り返し痙攣して拘縮する症状が特徴的で、
      クロニック発作は、一般的には全身性の発作であり、全身の筋肉が同時に痙攣
      して、繰り返し拘縮することがあります。
      一方、トニック発作は、筋肉が硬直する症状が特徴的です。トニック発作は、意識
      がはっきりしており、しばしば患者は、発作中に意識を保持することができます。
      トニック発作は、一般的には局所的な発作であり、発作が起こる部位の筋肉が硬直
      することが多いです。
      さらに、トニック発作は、一般的には短時間で終わりますが、クロニック発作は、
      繰り返し発作が起こり、発作の間隔や持続時間には個人差があります。) 
       以上チャットAIより
 
   ・ ミオクローヌス発作は、低血糖、低ナトリウム血症、アミノ酸代謝異常、その他の
     代謝異常が考えられます。
     
     (ミオクローヌス発作は、筋肉の急な痙攣や震えを伴う短時間の発作です。
      ミオクローヌスは、一般的には身体のあちこちで起こり、瞬間的な運動の中断や、
      落下、声の発生などがあります。ミオクローヌス発作は、通常数秒から数十秒続き、
      一般的には意識を失うことはありません。
      ミオクロニー発作は、てんかん発作としての表現であり、通常両側、あるいは
      全般性の1-2秒間以内の連続した四肢の筋収縮であり、1-2秒間の意識減損を伴う
      こともあり、単発のこともある。)  
       AIとネットより

   ・ 自律神経発作は心血管系、迷走神経系、呼吸器系などですが、低酸素性脳障害や
     脳内出血の際に起こります。

   ・ 新生児の場合に、振戦、興奮、ミオクローヌス様運動などとの鑑別が困難な場合が
     あります。電解質異常、低血糖、服用薬の中断、感染症などで起こります。

   ・ 一般的に、self-limitingな予後良好な良性睡眠時ミオクローヌス発作は、睡眠時に
     起き、脳波は正常です。

   ・ 新生児ハイパーレクスプレキシア(hyperekplexia)は、遺伝子によって引き
     起こされる希少な神経疾患の一種で、刺激に対する過剰な反応性が特徴的な疾患です。
     (この疾患の患者さんは、非常に強い驚きや刺激に対して、全身の筋肉が硬直する
      反射を示します。この反射は、まるで弾かれるように突き飛ばされるような症状が
      出ることから、「弾かれ病」とも呼ばれています。)

 5) 新生児てんかん症候群
    ILAE(国際抗てんかん連盟)が、新たに新生児てんかん症候群の定義を発表して
    います。
  
   ・ self-limited てんかん
     病態的には色々です。家族性又はde novo(突然)があります。
     出産後2〜7日後に出現し、6か月後に軽快します。
     発作は家族性で、部分的かつトニック発作です。時にクロニックとなります。
  
   ・ 発達性―てんかん性脳症
     治療抵抗性で、発達障害を伴う。器質的、遺伝的、代謝的な基盤があります。
     生後3か月に色々な発作が起きます。


 
私見)
 新生児でない乳児痙攣の場合に、保護者の方が録画をして来院される場合があります。専門医に紹介するとき、大変参考になります。次回に乳児痙攣について纏めてブログします。





痙攣性疾患.pdf












posted by 斎賀一 at 17:45| 小児科

2023年05月10日

電子タバコによる急性好酸球性肺炎の症例報告

電子タバコによる急性好酸球性肺炎の症例報告

Severe Presentation of Acute Eosinophilic Pneumonia Possibly
Secondary to Recent E-Cigarette Use



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 ACPからの症例報告です。
52歳の男性です。2型糖尿病を罹患していますが、呼吸器疾患の既往はありません。
呼吸困難と発熱で、救急外来を受診しています。従来のタバコをやめてから10年が過ぎ、
ニコチン含有の電子タバコを始めて数日から症状が出現しています。3週間で徐々に呼吸苦は
悪化しています。
糖尿病薬はメトグルコです。
 救急外来時には体温は38.3℃で、サチュレーションは89%でした。両下肢に浮腫を認めて
います。
最初の胸部レントゲンは両側性に浸潤性病変を認め、心不全による肺浮腫を疑う所見です。
しかし、心不全の時に上昇する血液検査のBNPは正常値で、心エコー検査でも正常範囲の駆出率
でした。発熱と白血球20,000と好中球優位の所見は、細菌性肺炎も疑われました。
しかし、末梢血液で好酸球が11%、絶対数は1,300と特徴的なデータでした。
先ずは細菌性疾患を想定して、経験的治療でセファロスポリン系とジスロマックを処方して
います。しかし、感染症の原因ウイルス、細菌の何れも同定されていません。
胸部CTでは、特徴的なすりガラス状の所見です。人工呼吸器の装着が開始されています。
気管支洗浄液からは、好酸球が多数認められています。
電子タバコによる急性好酸球性肺炎の診断のもとに、ステロイド治療を行っています。
人工呼吸器の治療と相まって、ステロイド治療後3日目で胸部レントゲンは改善しています。






考察)
 1989年にJames Allenが急性の発熱疾患で、気管支洗浄液に25%以上の好酸球を認めた
 疾患を報告したのが急性好酸球性肺炎の始まりです。
 免疫系のカスケード反応が病態生理の本質の様です。
 感染症との鑑別には困難を要しますが、気管支鏡による洗浄液での好酸球の同定と、ステ
 ロイド治療の早期開始が決め手となります。





私見)
私も数例の急性好酸球性肺炎を経験していますが、一例は若い看護師でした。
職場での喫煙から1か月後の肺炎でした。5月は新社会人の時期です。
本疾患も十分に注意が必要です。また電子タバコは必ずしも安全ではありません。








電子タバコ.pdf










posted by 斎賀一 at 20:05| 喘息・呼吸器・アレルギー

2023年05月08日

昼寝は30分以内が良いかも

昼寝は30分以内が良いかも

Lifestyle mediators of associations among
siestas,obesity, and metabolic health



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 地中海の住民を対象にしたスペインからの報告です。
対象者は特に病歴がなく、服用薬もない人です。もともと地中海の住民、特にスペイン人は
昼寝の習慣があります。35%が週に4回は昼寝をしているとの事です。
従来から昼寝はストレスに良く健康にも好影響を及ぼすとされていますが、本研究では昼寝の
長さがライフスタイルに影響し、肥満と関係するのではとの想定の元に始めています。


1) 3,275名が登録しています。昼寝が30分以内の群と30分以上の群で調べました。
   35%が昼寝をしており、16%が30分以上です。
   結果は下記の図譜を参照ください。




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(ORがオッズ比、つまり危険率です。30分以上の昼寝では肥満、高中性脂肪血症、HDL低下、
 収縮期血圧、拡張期血圧、血糖値において何れもオッズ比は1.0以上と悪影響の結果です。)

 昼寝をしない人から比べて30分以内では、収縮期血圧は寧ろ低い傾向です。
 肥満傾向で30分以上の睡眠群の人は、喫煙者が多い傾向です。
 また、肥満者で昼寝が30分以上の群の人は就眠時間が遅く、昼食を多く摂取する傾向でした。
 昼寝の形式もベットでしっかりとる人は、30分以上の長い昼寝で血圧も高い傾向です。


2) 考察
   副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の日内変動に、長い昼寝は影響を及ぼすものと推定
   しています。インスリン抵抗性、空腹感、食欲亢進、喫煙、腹部膨満、それらが必然的に
   昼寝を長くしてしまうようです。それが就眠時間の遅延となります。
   以前の研究からは、1時間以上の昼寝は心血管疾患に悪影響を及ぼし、逆に30分以内では
   カテコールアミンの分泌を低下させ血圧に好影響との結果です。
   長い昼寝に入らないで睡眠の惰性に終止符を打つことはpower napと言って、記憶力の
   改善にも繋がります。
   長い昼寝は却って覚醒後に疲労感があるものと、注意もしています。





私見)
 たっぷりと昼寝をするのが好みでしたが、今日からは30分以内に切り上げます。








昼寝 本論文.pdf










posted by 斎賀一 at 19:57| 循環器