2023年05月26日

RSウイルス感染と小児の喘息

RSウイルス感染と小児の喘息

Respiratory syncytial virus infection during infancy and asthma
during childhood in the USA (INSPIRE):
a population-based,prospective birth cohort study



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 乳幼児期のRS感染は小児後期での喘息に関連すると言われていますが、軽症のRS感染が喘息と
関係があるかは不明でした。


1) 2012年6月から12月と、2013年6月から12月のRS感染の季節に、アメリカのテネシー州
   の小児基幹病院でRS感染を調べています。PCR法と血液抗体検査を行っています。

2) 主要転帰は5歳での喘息です。
   研究に参加した1,946人の対象となる子供のうち1,741人(89%)に、生後1歳のRSV
   感染状態を評価するデータがありました。
   乳児期にRSV感染を有する子供の割合は、1,741人のうち944人(54%)でした。
   乳幼児期にRSV感染がなかった場合の5年後の喘息有病率は587人中91人(16%)で、
   RSV感染があった場合の子供(670人中139人[21%])に比べて低かったです。
   乳幼児期にRSV感染がなかったことは乳幼児期にRSV感染があった場合と比べて、5年後の
   喘息の有病リスクが26%低いと推定されます。(リスク比0・74)
   乳幼児期のRSV感染を避けることで予防できる5年後の喘息の有病割合は、15%でした。

3) 正常な経産婦に生まれた健康な子供たちの中で、生後1歳にRSV感染がなかったことは、
   児童期の喘息発症リスクの大幅な低下と関連していました。
   調査結果は、乳幼児期のRSV感染と児童期の喘息の間に年齢依存性の関連があることを
   示しています。しかし、因果関係を確定的に示すためには、初期のRSV感染を予防、
   遅延、または症状の軽減を目的とした介入により、児童期の喘息に与える効果を研究する
   必要があります。






私見)
 小児の喘息と本論文では記載されていますが、正確には小児喘息の病名で正式な喘息ではあり
 ません。小児喘息は小学生になると80%程が軽快し、喘息に移行するのは両親が喘息の既往が
 なければ8%程度と言われています。
 勿論両親の喘息も、小児喘息は本院ではカウントしない方針です。
 とはいっても、小児喘息を繰り返すことはかなりの負担です。その意味でもRS感染には注意が
 必要となります。
 なお最近では喘息を誘発する感染症として、RS感染に代わりマイコプラズマ感染が注目されて
 います。






小児 喘息 RSRespiratory syncytial virus 2.pdf









posted by 斎賀一 at 20:28| 小児科

2023年05月23日

U型糖尿病の飲み物の影響

U型糖尿病の飲み物の影響

Beverage consumption and mortality among adults with type 2diabetes
: prospective cohort study



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 甘い飲み物は心血管疾患に悪影響を及ぼすと言われていますが、U型糖尿病患者に限定して
飲み物の影響を調べた研究は、あまりありませんでした。
飲み物の種類による心血管疾患と死亡率に関する論文が掲載されていましたので、ブログ
します。
最近、本院の糖尿病患者さんで、食欲がなくなり甘い飲料水を飲みすぎ悪化してしまうケースが
ありましたので注意が必要です。


1) 15,486名のU型糖尿病患者が対象です。1980年から2018年までの調査です。
   アンケートにより飲み物のデータを2〜4年ごとに更新しています。
   経過観察は平均で18.5年間です。3,447名(22.3%)が心血管疾患を発症し、
   7,638名(49.3%)が死亡しています。


2) 飲み物としては砂糖を含む甘い飲み物(SSBs)、代替としての人口甘味料でノンカロリー
   の飲み物(ASBs)、フルーツジュース(オレンジジュース、リンゴジュース、グレープ
   フルーツなど)、コーヒー、お茶、低脂肪ミルク、全脂肪ミルク、天然水(plain water)
   を比較検討しています。
   ASBsとしてはノンカロリーのコーラを含む低カロリーの飲み物です。





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      糖尿病患者においては、コーヒー、お茶、天然水は死亡率、心血管疾患の
      危険率を下げます。





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         ASBsはフルーツジュースよりは危険率が低いようです。






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    SSBs,ASBs,フルーツジュース,全脂肪ミルクはJカーブを呈していますが、
    量が増すと危険率は上がっています。




3) 考察
  SSBsをASBsに替えることにより、危険率の減少につながります。更にコーヒー、お茶、
  天然水とASBsを併用すること事も有効です。
  ASBsが肥満と関連するとの論文もありますが、本研究では耐糖能に悪影響は認められません
  でした。SSBsのフルクトースがインスリン抵抗性を促進し、糖尿病の悪化に繋がるものと
  理解されます。
  コーヒーやお茶のカテキンなどの成分がオキシダントストレスと炎症の抑制し、糖尿病患者
  のリスク軽減となります。







私見)
 私も仕事中には原則としてお茶を飲んでいますが、甘い飲み物も飲みたくなります。
 ノンカロリーのコーラをたまに併用する事は、却っていいかも。







Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes_ prospective cohort study.pdf










posted by 斎賀一 at 19:06| 糖尿病

2023年05月20日

糖尿病患者に解熱鎮痛薬は注意

糖尿病患者に解熱鎮痛薬は注意

<短 報>
 Heart Failure Following Anti-Inflammatory Medications
in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus


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 糖尿病は腎機能と心不全の危険因子です。解熱鎮痛薬そのものが腎機能低下、体液貯留、
心不全の悪化に関与します。
糖尿病と解熱鎮痛薬との関連性を調べた論文がデンマークからあります。


1) 1998年から2021年に糖尿病と診断され、且つ以前に心不全、関節リウマチ、120日間
   解熱鎮痛薬を服用した既往歴のない人が対象です。
   331,189名が登録されています。平均年齢は62歳。
   観察期間中に23,308名(7%)が心不全で入院しています。
   期間中に少なくとも1回は解熱鎮痛薬を服用した人は、52,990人(16%)でした。
   解熱鎮痛薬服用期間は29日以内として、心不全で入院との関連性を調べました。

2) 結果
   解熱鎮痛薬を比較的短期間服用で心不全入院の危険率は、1.43です。
   特に80歳以上での危険率は1.78
   糖尿病治療薬が1剤以下で、糖尿病のコントロール不良(A1cが高い人)の場合、
   危険率は1.68です。
   以前に解熱鎮痛薬の服用がなく初めて使用した人では、2.71と高い傾向でした。

3) 結論
   高齢者で糖尿病のコントロール不良で初めて解熱鎮痛薬を服用する場合には、特に
   注意が必要となります。







私見)
  心血管疾患に解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用には以前より注意勧告が出ていますが、
  糖尿病の場合にも、やはりナイキサンが無難でしょうか。









心不全 NSAIDs.pdf








posted by 斎賀一 at 16:46| 糖尿病