2023年05月30日

好酸球性食道炎・胃と腸の特集より

好酸球性食道炎・胃と腸の特集より

胃と腸 第53巻第3号2018年3月



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雑誌の胃と腸に特集がありましたのでコピペしてブログします。



・序説 好酸球性食道炎の疾患概念の変遷 春間賢氏

 一般に好酸球性食道炎(EoE)は粘膜下層や筋層に著しい好酸球浸潤とともに線維化を来す
ため食道運動機能の低下、嚥下障害を来し進行すると狭窄となる進行性疾忠である。本邦での
EoEの診断基準は、基本的に欧米の診断基準に準じている。しかし、内視鏡所見と食道生検に
よる好酸球浸潤の個数は基準を満たすが、自覚症状がない症例が本邦では多く発見されており、
広義にはそれらの症例が含まれて報告されていることもある。EoEは近年増加しつつある新しい
疾患であり、その病態はまだまだ不明の点が多い。





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・好酸球性食道炎の病理診断 藤原美奈子氏
  
 他の好酸球浸潤を伴う食道疾患に比べて、EoEの好酸球上皮内浸潤はひときわ著明であり、
脱穎粒所見や好酸球性微小膿蕩の所見はEoEに特徴的であると考えられる。著明な好酸球浸潤を
食道上皮に認めた場合、好酸球性胃腸炎との鑑別のために胃や十二指腸など他の消化管粘膜の
生検は必須と考える。





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(病理所見も上記のように複合的な所見が大事で、単に好酸球の浸潤のみで診断するのは注意が
 必要だと思っています。)





・好酸球性食道炎の画像診断 浅野直喜氏

 好酸球性食道炎はつかえ感や嚥下障害などの自覚症状を引き起こす疾患で、食物性アレルギー
であると考えられている。
EoEの現在の診断基準では症状があることが必須項目となっている。しかしながら、EoEに特徴的
な内視鏡像を呈し、生検病理組織標本で好酸球浸潤を認めながらも自覚症状を欠く症例も存在し
これらの取り扱いが今後課題となると考えられる。たとえ自覚症状がない症例であっても、食道
粘膜への好酸球浸潤と持続する炎症により、食道粘膜下層の線維化が引き起こされ、最終的には
食道内腔の狭窄を来すおそれがある。そのような不可逆的な変化が生じる前に治療介入すること
が望ましいと考えられるが、自覚症状が必須となっている現在の診断基準では、必然的に治療
介入は不可能ということになってしまう。





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(基本的な所見は輪状溝ですが、診断基準にもありますが縦走溝と白斑の所見は確定診断と
 なります。狭窄まで進行する例があり注意が必要です。)







私見)
 実地医家の偏見的な見解ですが、好酸球性食道炎は未だ稀な疾患で、好酸球性胃腸症との
 鑑別が大事です。私としては食物アレルギーとの関係は乏しい印象です。
 当然ながら牛乳の除去を試してみる事は必要です。好酸球は組織の修復過程で現れますので、
 好酸球の浸潤のみでの診断には注意が必要と思っています。
 嚥下障害等の症状があれば検査が必要ですが。












posted by 斎賀一 at 17:42| 消化器・PPI

2023年05月29日

好酸球性食道炎と食物除去

好酸球性食道炎と食物除去
 <短 報>
One-food versus six-food elimination diet therapy
for the treatment of eosinophilic oesophagitis



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 海外から報告の多い疾患ですが、最近では日本でも注目されています。
私も疾患を疑い生検を行いますが、殆どが空振りでそれ程多い疾患とは感じていませんが。
 以前は食物アレルギーとの関連性は乏しいとされていましたが、今回雑誌Lncetから食物除去
に関しての論文がありました。


1) 18歳から60歳で、活動性の好酸球性食道炎患者129人が対象です。
   2016年から2019年まで調査しています。 平均年齢59歳(男性54%、女性46%)

2) 食物除去を1品目(牛乳)と6品目(牛乳、小麦、卵、大豆、魚介類、ナッツ類)の2群で
   比較しています。
   除去後6週間で食道生検を行い、寛解を見ています。

3) 両群共に寛解率は40%でした。
   両群では寛解率に差は認められていませんが、無反応の9人にステロイドのフルチカゾン
   を経口投与により寛解しています。

4) 好酸球性食道炎には、先ず牛乳の除去を推奨しています。
   経口のフルチカゾンは、日本では上市されていません。





私見)
 胸やけがする時には水を飲むことを勧めていますが、好酸球性食道炎の場合には、牛乳を
 飲むのは逆効果のようです。
 次回、日本のデータをブログします。








好酸球性食道炎.pdf








posted by 斎賀一 at 18:34| 消化器・PPI

2023年05月27日

RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスと喘息

RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスと喘息

臨床とウイルス Vol.49 No.5 2021.12
橋本浩一 福島県立医大 小児科学講座
 


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 最近の日本でのRSウイルス論文を調べてみました。
やはりRSウイルス感染症の重症例と喘息との関連性を調べています。


1) RSウイルス感染症は温帯地方では秋から春に流行しますが、最近の日本では夏から
   12月にかけて流行し、更に通年性の傾向もみられます。
   正期産児であっても、母からの移行抗体が存在する出生後でも早期から感染し、生後1歳
   までに50%以上、2歳までに100%が初感染を受けます。
   1〜2%が入院し、その中の15%が集中治療室での治療となっています。
   毎年6〜63%の小児が再感染を経験します。

2) 接触又は飛沫感染によります。
   4〜5日の潜伏期を経て上気道感染となりますが、更に15〜50%が2〜3日後に下気道感染
   へと悪化します。

3) 感染により種々のサイトカインが誘発され、未発達な乳児の気道が障害を受けます。
   生後6か月以内が重症化し、生後1か月では突然死もあります。
   高齢者も重症化しやすいです。

4) 本論文では3歳以下の下気道炎で入院した412人の内、入院時に喘鳴を呈した80人と
   喘鳴を呈しない136名を3年間追跡調査しています。
   退院後3年間の反復性喘鳴は、入院時に喘鳴を呈した群ではRSウイルス感染症が44%、
   入院時に喘鳴を呈さなかった群では40%でした。
   つまりRSウイルス感染による下気道炎で入院した場合の40〜44%は、その後3年間に
   反復性喘鳴を起こします。

5) 海外の文献も紹介していますが、1歳までに重症のRSウイルスに感染した乳児では
   7歳までに喘息を発症するのは30%前後としています。
   しかし、10歳までには6.2%(対照は4.5%)と減少し、対照と有意差はなくなります。

6) 重症のRSウイルス感染による細気管支炎の全てが喘息を発症するわけではなく、また
   成長に伴い喘鳴は軽快する傾向です。喘息の発症には「2ヒット・シナリオ」が提唱
   されています。
   つまり遺伝的背景とRSウイルス感染の重症とが相まって免疫応答が生じ、未発達な
   乳幼児の肺組織に障害が起こるとしています。





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私見)
  前回の海外の論文主旨は、軽症のRSウイルス感染でも小児喘息の原因となるとの事でした。
  学童になれば軽快しますが、やはり1歳未満でのRSウイルス感染には注意が必要です。
  新型コロナ感染が収束傾向ですが、それに代わって他の感染症が本院外来でも流行して
  います。夏かぜと相まって、5類で“ホット”とはいかないようです。











posted by 斎賀一 at 17:02| 小児科