閉塞性肺疾患(COPD)治療の変遷・私のブログより
私のブログより、COPDの吸入薬を主体に抜粋してみました。
少なくとも私にとっては参考になり、明日からの診療に心新たにする事が出来ましたが?
・ 高齢化社会で、喘息患者も年齢とともに、COPDを併発するようになりますし、COPDの
患者も、必ずしも喫煙に関係ないアレルギー因子に晒されたり、又肺の構造変化
(リモデリング)などにより、気道過敏性が増加し、その結果として喘息症状を呈し、
吸入ステロイドが有効な患者も増加してきています。
・ 吸入ステロイドによる肺炎の合併を調べています。103,386人のCOPD患者を対象にして
います。吸入ステロイド使用の14,020人が肺炎を発症(2.8人/100人/年)
吸入ステロイドを中止する事により、肺炎の合併を37%減少できた。1か月以内に中止
すれば20%の減、4か月以内で50%の減少
減少効果は、fluticasoneの方がbudesonideよりあった。(逆に言えば、budesonideの方
が肺炎を起こさないと言う事のようです)
・ 以前よりLABA+ステロイドの合剤が一般的でしたが、LABA+LAMAの方が有効との結論
の論文があります。
ステロイドの吸入は、肺炎を誘発する危険が懸念されています。
その点でも、LABA+LAMAの方が選択されそうです。
論評でも、まずはLAMA、次にLABA+LAMA、更にステロイドを追加するのが良いかと
示唆しています。
・ 吸入ステロイドは2週間の使用では心配ないと言われていましたが、1週間での減量を
考慮する必要がありそうです。肺炎やカンジダ症に注意が必要です。
特に、基礎疾患のある方(糖尿病)には、服用量及び服薬期間に注意が必要となります。
・ ともかくコントロールが不良の場合は、LABA+LAMAが第一選択かもしれません。更に、
喘息症状があるACOSの場合は、吸入ステロイドを追加するのが賢明としています。
・ レルベアの使用の方が、8.4%の増悪の低下に繋がり、副反応も通常の治療と同程度
でした。
・ LAMAの方がLABAより有効で、心血管疾患に影響は稀である。
LAMAとLABAの併用は更に有効。この場合も、心血管疾患の悪化は少数例。(COPDは
高齢者が多く、心血管疾患を合併している事もあり、注意が必要ですが、血圧や脈拍等が
安定していれば、使用しても支障はないようです。)
吸入ステロイドを追加するかは症例による。(ACOSなどの喘息様症状があれば別ですが、
一般的にCOPDにステロイド吸入は、期待する程に効果がないかもしれません。)
テオフィリンの効果は限定的。
・ 乳幼児の喘息で、定期的に毎日吸入ステロイドを行っている場合に、肺炎の発生増加は、
吸入ステロイドをしないコントロール群と差がなかったとの結論です。
・ 今回の論文では、LAMA+LABAの合剤は、LABA+ステロイドと同程度の心血管の副反応
であったとの報告です。つまり、LABAにLAMAを追加しても、心血管には追加負担には
ならないと言う事のようです。
高齢者が多いCOPDに、LAMA/LABAの使用は慎重さが必要ですが、LAMAで効果がない
時は、LAMA/LABAは有力な選択肢です。
・ 心血管疾患を有する高齢者でも、COPDの軽度の症状があれば、スピリーバの吸入は
QOLの改善と、重症化の進展予防には効果があり、副作用は懸念しているほど
心配はないようです。
・ 安定しているCOPDの場合は、LAMA+LABAの方がLABA+ステロイドよりも増悪を予防
出来て、しかも呼吸機能も維持できる様です。副作用は同等。
COPDの場合に、安定していれば、先ずLAMA、次のステップとしてはLAMA+LABA、
さらにステロイドの吸入を追加と言う感じでしょうか。
・ 処方後30日以内での心血管疾患の危険率は、LABAで1.5、LAMAで1.52、LABA+LAMA
で2.03でした。しかし、30日を過ぎると危険率は下がり、70~240日で、処方していない
患者との差は無くなっていました。
・ ステロイド吸入とテオフィリンを併用すると、その抗炎症作用は100倍以上にもなるとの事
です。しかし、軽症:(FEV1が80%以上)のベースラインに関係なく、吸入ステロイドに
テオフィリンを追加しても、急性増悪の予防効果には寄与していませんでした。
しかし、UPTODATEの記載をみますと、「吸入ステロイドの喘息における早期介入は失敗
に終わりましたが、テオフィリンのCOPDに対する急性増悪には効果は無いが、その都度
使用することにより炎症をある程度抑制し、肺のリモデリングを予防できるのでは、
と期待」
・ 一般的に、喫煙者や軽度のCOPD患者に対して、β遮断薬を投与することを躊躇する医師が
多いが、心血管疾患の患者に、選択的β遮断薬を処方していても、COPDの悪化には繋がら
ないとしています。
β遮断薬が、COPDの急性増悪の頻度を軽減したとも結論付けています。
その機序は明白ではない様ですが、動物実験ではβ遮断薬を長期に与えると、β受容体が
増加するレギュレーションが起こるとしています。
更に、β遮断薬の抗炎症作用、喘息モデルでの気管支分泌物の低下なども認められて
います。本院では少量のアーチストまたはメインテートを使用します。
・ LABA+LAMAはLABA+吸入ステロイドと比較して、中等度の急性増悪の危険率は1.04
で、重症の危険率は0.94でした。入院を必要とする肺炎の危険率は0.66でした。
(LABA+LAMAが5人/100人で、LABA+吸入ステロイドが8人/100人)
急性増悪の予防効果は、両群で同程度でしたが、肺炎の危険率は、LABA+LAMA に
比べて、LABA+吸入ステロイドの方が悪い結果でした。
COPDの治療で、step-upの時には、LABA+LAMAが有効との結果です。
喘息を合併していたり、好酸球増加がある事は、ステロイド吸入を追加する選択肢も
あります。
・ COPD急性増悪の80%は細菌性感染が関与しています。本論文では、CRPの値が20を閾値
基準にしていますが、単に抗生剤が必要かどうかの判断基準とした方が良さそうです。
COPDの場合に、本院ではCRPが5以上で抗生剤を考慮し(パセトシン、オーグメンチン
など)、10以上でワンランク上の抗生剤投与(メイアクト、キノロン系など)とします。
胸部レントゲンの適否は、経過で判断と考えています。
・ 肺組織は20歳でピークとなり、それ以降は退行していく。
つまり、若いうちから組織の老化現象は始まっている。
喫煙が最もCOPDの重症化に関与している。COPDの軽症〜中等症に関しての原因及び
促進因子に関しては、今後の研究課題です。
・ 心筋梗塞や心不全になって間も無いCOPDの患者さんに、βブロッカーを処方するのは、
多くの研究で支持されていますが、十分な検討が今後も必要であるとしています。
βブロッカー投与の一番の懸念である呼吸機能検査では、βブロッカー群とプラセボ群
では差はありませんでした。
・ 心血管疾患は、炎症として捉える見かたもあります。
その意味でもCOPDと心血管疾患は、同じ系統の疾患ともいえます。
結論的に言えば、COPD患者が心筋梗塞等の心血管疾患を併発している場合に、
β-ブロッカーの処方を懸念し過ぎる傾向があると忠告しています。
寧ろ心選択制のアーチストやメインテートを漸増処方すれば、利点が多いと勧めています。
・ 配合剤吸入の方が、単独吸入よりアドへランスが高いことが証明されました。
本論文では喘息に対する効果は調べていませんが、他の文献からアドへランスが
高ければ、喘息のコントロールも良好とのデータが出ています
最後まで見ていただき、ありがとうございました。
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