2023年04月01日

U型糖尿病患者におけるQT延長

U型糖尿病患者におけるQT延長

Prevalence of QT prolongation and its risk factors
in patients with type 2 diabetes



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  糖尿病は心血管疾患の合併が一番の問題です。
 心電図でのQT延長は心疾患の中でも多く見られる所見ですが、Torsade de Pointes
 といった重篤な不整脈に繋がる病態としても重要です。
 QT延長は一般でも認められる心電図所見で、それ程心配ではありませんが、糖尿病患者に
 とっては心血管疾患の予後の予測因子として注目されています。
 高血糖と冠動脈疾患はQT延長の強い予測因子です。
 一方で、低血糖発作は血清K値と関係なくQT延長を引き起こします。


1) 14歳以上のU型糖尿病患者を14年間追跡調査しています。
   心電図検査とその1か月以内の血液検査を実施しました。
   登録患者782人の13%、102人がQT延長を伴っていました。





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2) 考察
   U型糖尿病患者でQT延長は、13%認められました。
   女性、高齢者、肥満に多く見られます。
   ・糖尿病合併症の高血圧、脂質異常症にQT延長は高率に見られます。
    高血圧は心肥大、交感神経の亢進とも関与し、QT延長を引き起こすと推測できます。
   ・本研究ではQT延長が総コレステロールの低値と関係があるような結果ですが、スタチン
    服用の治療が関係しているかもしれません。
   ・インスリン治療もオッズ比が高い結果ですが、インスリン治療は糖尿病治療の長期化、
    コントロール不良、高齢者との関連かもしれません。
    また、インスリンは交感神経の刺激、血清Kとの関係もあるようですが、インスリンが
    直接に関与はしていないようです。
   ・ループ利尿薬は直接には関与していませんが、電解質異常が関係しています。
    アルダクトンAはQTを短縮しますが、電解質異常を起こすとQT延長となります。
   ・抗血小板療法と抗凝固薬も、オッズ比が高いのは心血管疾患の病態が進んでいるための
    処方だからかもしれません。
   ・本研究では、一時的なQT延長とリスクとの関係については検討していません。





私見)
 心電図上ではQ波が心筋の興奮を示し、T波は興奮の消退を示します。
 従ってQ波とT波の間隔は、興奮の覚め具合を表しています。興奮状態で次の興奮が到達すると
 とんでもない状態となります。(最近は夫婦喧嘩もすぐにさめて、安泰です。)
 QT延長で特に治療はありませんが、糖尿病の心臓へのダメージを表しており、その意味でも
 心電図は恒常的な変化を示す有効なツールとして、今後も大いに参考にして参ります。









糖尿病 QT.pdf

オッズ比解説 (OR).pdf









posted by 斎賀一 at 16:37| Comment(0) | 糖尿病