U型糖尿病患者におけるQT延長
Prevalence of QT prolongation and its risk factors
in patients with type 2 diabetes
in patients with type 2 diabetes
糖尿病は心血管疾患の合併が一番の問題です。
心電図でのQT延長は心疾患の中でも多く見られる所見ですが、Torsade de Pointes
といった重篤な不整脈に繋がる病態としても重要です。
QT延長は一般でも認められる心電図所見で、それ程心配ではありませんが、糖尿病患者に
とっては心血管疾患の予後の予測因子として注目されています。
高血糖と冠動脈疾患はQT延長の強い予測因子です。
一方で、低血糖発作は血清K値と関係なくQT延長を引き起こします。
1) 14歳以上のU型糖尿病患者を14年間追跡調査しています。
心電図検査とその1か月以内の血液検査を実施しました。
登録患者782人の13%、102人がQT延長を伴っていました。
2) 考察
U型糖尿病患者でQT延長は、13%認められました。
女性、高齢者、肥満に多く見られます。
・糖尿病合併症の高血圧、脂質異常症にQT延長は高率に見られます。
高血圧は心肥大、交感神経の亢進とも関与し、QT延長を引き起こすと推測できます。
・本研究ではQT延長が総コレステロールの低値と関係があるような結果ですが、スタチン
服用の治療が関係しているかもしれません。
・インスリン治療もオッズ比が高い結果ですが、インスリン治療は糖尿病治療の長期化、
コントロール不良、高齢者との関連かもしれません。
また、インスリンは交感神経の刺激、血清Kとの関係もあるようですが、インスリンが
直接に関与はしていないようです。
・ループ利尿薬は直接には関与していませんが、電解質異常が関係しています。
アルダクトンAはQTを短縮しますが、電解質異常を起こすとQT延長となります。
・抗血小板療法と抗凝固薬も、オッズ比が高いのは心血管疾患の病態が進んでいるための
処方だからかもしれません。
・本研究では、一時的なQT延長とリスクとの関係については検討していません。
私見)
心電図上ではQ波が心筋の興奮を示し、T波は興奮の消退を示します。
従ってQ波とT波の間隔は、興奮の覚め具合を表しています。興奮状態で次の興奮が到達すると
とんでもない状態となります。(最近は夫婦喧嘩もすぐにさめて、安泰です。)
QT延長で特に治療はありませんが、糖尿病の心臓へのダメージを表しており、その意味でも
心電図は恒常的な変化を示す有効なツールとして、今後も大いに参考にして参ります。
糖尿病 QT.pdf
オッズ比解説 (OR).pdf