小児の急性重症肝炎はアデノ随伴ウイルスが関与
Adeno-associated virus type 2 in US children with acute severe hepatitis
小児における急性重症肝炎が世界的に流行し、日本でも散発的に発症していました。
アデノウイルスが原因ウイルスとして以前から浮上していましたが、最近雑誌natureから
アデノ随伴ウイルス(AAV-2)が再び注目されています。
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、1965年にピッツバーグ大学のDr. Bob Atchisonと
NIHのDr. Wallace Roweにより、アデノウイルス調製中に混入物として発見されました。
その後の研究により、彼らはAAVウイルス粒子の複製がアデノウイルス存在下でのみ可能で
あることに気づき、その名称分類をパルボウイルス科のディペンドウイルス属としました。
AAV-2 は、アデノ随伴ウイルスの中で最も広範囲に研究され、AAVファミリーの大部分の
“原型”といえるものです。
AAVはポリメラーゼをコードしておらず、自身のゲノム複製を細胞のポリメラーゼ活性に依存
しています。野生型AAVの複製や増殖が高い効率で生ずるためには、アデノウイルスなどの
ヘルパーウイルスの存在が必須となります。
また、野生型AAVはヒトゲノムに部位特異的に組込まれる唯一の真核生物ウイルスであることが
示されているため、遺伝子治療に利用されています。 (ネットより抜粋)
1) 少なくとも一つ以上のヘルパーウイルスの存在で、AAV-2が急性重症肝炎患者の93%に
混合感染という形で認められています。
つまり、急性重症肝炎の原因はウイルスの混合感染の可能性があり、AAV-2とヘルパー
ウイルスとの間で遺伝子変化が生じた可能性を指摘しています。
世界的には35の国から、原因ウイルが不明な小児の急性重症肝炎が1,300人以上報告
されています。
その多くが免疫機能の低下した小児ですが、基礎疾患のない小児においても稀ながら発症
しており、原因ウイルスとしてアデノが推測されていました。
特にスコットランドでは、アデノ41型が認められています。
アデノ随伴ウイルス(AAV-2)は、ヘルペスウイルスやアデノウイルスなどのヘルパー
ウイルスがなければ人に感染しませんが、肝炎にどのように関与しているかは未だ十分
には解明されていません。
2) 小児急性重症肝炎の定義は
・従来の原因ウイルスが同定できない。
・肝逸脱酵素(AST,ALT)が500以上
・10歳以下
です。アメリカでの16州で16例を調べました。
AAV-2が93%に認められました。人アデノウイルスは100%です。
アデノウイルス41型は79%、アデノウイルス40型は7.1%、
アデノウイルス2型は7.1%でした。
E-Bウイルス、ヘルペスウイルス、エンテロウイルスとの混合感染は85.7%でした。
コントロール群では、ウイルス同定は稀でした。
以上より、アデノ随伴ウイルス(AAV-2)が一つ以上のヘルパーウイルスと混合感染を
起こすことが、急性重症肝炎の発症に関係する事が推測されます。
3) 考察
コロナ禍でソーシャルディスタンを採ることにより、小児に正常な免疫機能を育む事が
不足し、感染症に脆弱なポピュレーションを形成してしまった可能性があります。
私見)
ウイルス流行には干渉作用があり、コロナ流行時では他のウイルス感染症が影を潜める
という仮説ですが、私も何となく信じている一人です。
今、感冒症状の小児患者さんが増えています。
混合感染に気を配ることが、大事な時期に来ているようです。
本論文 アデノウイルス.pdf
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小児重症急性肝炎に対する見解_.pdf