2023年04月14日

小児の急性重症肝炎はアデノ随伴ウイルスが関与

小児の急性重症肝炎はアデノ随伴ウイルスが関与

Adeno-associated virus type 2 in US children with acute severe hepatitis



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 小児における急性重症肝炎が世界的に流行し、日本でも散発的に発症していました。
アデノウイルスが原因ウイルスとして以前から浮上していましたが、最近雑誌natureから
アデノ随伴ウイルス(AAV-2)が再び注目されています。
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、1965年にピッツバーグ大学のDr. Bob Atchisonと
NIHのDr. Wallace Roweにより、アデノウイルス調製中に混入物として発見されました。
その後の研究により、彼らはAAVウイルス粒子の複製がアデノウイルス存在下でのみ可能で
あることに気づき、その名称分類をパルボウイルス科のディペンドウイルス属としました。

AAV-2 は、アデノ随伴ウイルスの中で最も広範囲に研究され、AAVファミリーの大部分の
“原型”といえるものです。
AAVはポリメラーゼをコードしておらず、自身のゲノム複製を細胞のポリメラーゼ活性に依存
しています。野生型AAVの複製や増殖が高い効率で生ずるためには、アデノウイルスなどの
ヘルパーウイルスの存在が必須となります。
また、野生型AAVはヒトゲノムに部位特異的に組込まれる唯一の真核生物ウイルスであることが
示されているため、遺伝子治療に利用されています。          (ネットより抜粋)


1) 少なくとも一つ以上のヘルパーウイルスの存在で、AAV-2が急性重症肝炎患者の93%に
   混合感染という形で認められています。
   つまり、急性重症肝炎の原因はウイルスの混合感染の可能性があり、AAV-2とヘルパー
   ウイルスとの間で遺伝子変化が生じた可能性を指摘しています。
   世界的には35の国から、原因ウイルが不明な小児の急性重症肝炎が1,300人以上報告
   されています。
   その多くが免疫機能の低下した小児ですが、基礎疾患のない小児においても稀ながら発症
   しており、原因ウイルスとしてアデノが推測されていました。
   特にスコットランドでは、アデノ41型が認められています。
   アデノ随伴ウイルス(AAV-2)は、ヘルペスウイルスやアデノウイルスなどのヘルパー
   ウイルスがなければ人に感染しませんが、肝炎にどのように関与しているかは未だ十分
   には解明されていません。

2) 小児急性重症肝炎の定義は
   ・従来の原因ウイルスが同定できない。  
   ・肝逸脱酵素(AST,ALT)が500以上
   ・10歳以下    
   です。アメリカでの16州で16例を調べました。
   AAV-2が93%に認められました。人アデノウイルスは100%です。
   アデノウイルス41型は79%、アデノウイルス40型は7.1%、
   アデノウイルス2型は7.1%でした。
   E-Bウイルス、ヘルペスウイルス、エンテロウイルスとの混合感染は85.7%でした。
   コントロール群では、ウイルス同定は稀でした。
   以上より、アデノ随伴ウイルス(AAV-2)が一つ以上のヘルパーウイルスと混合感染を
   起こすことが、急性重症肝炎の発症に関係する事が推測されます。

3) 考察
   コロナ禍でソーシャルディスタンを採ることにより、小児に正常な免疫機能を育む事が
   不足し、感染症に脆弱なポピュレーションを形成してしまった可能性があります。







私見)
 ウイルス流行には干渉作用があり、コロナ流行時では他のウイルス感染症が影を潜める
 という仮説ですが、私も何となく信じている一人です。
 今、感冒症状の小児患者さんが増えています。
 混合感染に気を配ることが、大事な時期に来ているようです。






本論文 アデノウイルス.pdf

原因不明の小児重症急性肝炎.pdf

小児重症急性肝炎に対する見解_.pdf















posted by 斎賀一 at 19:50| 小児科

2023年04月11日

アルコールの種類と尿酸値

アルコールの種類と尿酸値

Differences in the Association Between Alcoholic Beverage Type
and Serum Urate Levels Using Standardized Ethanol Content
 

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 日本発の聖路加国際病院の研究論文が、雑誌JAMAに掲載されています。
エタノールは尿酸産生の成分を有しており、また腎の尿細管からの尿酸排出を減少させます。


1) 対象者は20歳以上の78,153人です。  平均年齢は47.6歳
   2012年10月1日より2021年10月31日までの登録者です。
   アルコールの種類はビール、酒、焼酎、ワイン、ウイスキーです。
   エタノール20grを基準にしています。
   ビール500ml、酒167ml、焼酎100ml、ワイン208ml、ウイスキー62.7mlとなります。
   習慣飲酒者は58.8%です。

2) 結論
   ビールが主体の飲酒者は尿酸値が高めでした。ワインが主体の飲酒者は中等度です。
   酒主体の飲酒者は、尿酸との関連性が最も低いです。

3) 考察
   男性においてはビールとウイスキーが尿酸値が高く、女性の場合はビールが一番高い
   傾向です。男女共に酒が主体の飲酒者は最も尿酸上昇は低く、ビールは酒の2〜5倍
   上昇を認めています。
   女性においてウイスキーで高い関係が認められないのは、そもそもウイスキーを大量に
   飲酒する人が少ないからと推測しています。
   ビールが一番プリン体を有しています。しかもカロリーも一番高いです。
   ワインは抗酸化作用のポリフェノールが多く含まれています。
   一方で、酒も抗酸化作用のフェルラ酸を含んでいます。
   腸内細菌叢とアルコールとの関連性も指摘されています。ビールがこの腸内細菌叢を
   変化させます。
   ウイスキーにはプリン体は少量です。ウイスキーは短期間ですが尿酸を低下させるとの
   論文もあり、今後の研究が待たれます。また遺伝子レベルでの研究も必要です。






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私見)
 アルコールの種類に関わらず、多量に飲酒すれば尿酸が上昇します。
 ビールは特に注意が必要とし、日本初の論文としても、酒なら良いとは勧められないよう
 ですが...。








尿酸 アルコール.pdf










posted by 斎賀一 at 19:01| 泌尿器・腎臓・前立腺

2023年04月08日

もう一つの世界一・3+1の戦い

もう一つの世界一・3+1の戦い

クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2023



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 侍ジャパンの世界一には、涙が出るほど感動しました。
栗山監督がWBCの戦いの前に、先人の名監督の言葉を語っていました。

     三原監督の「人は奇策というけれど自分にとってはセオリーだ」
     野村監督の「指導者の器以上には組織は大きくならない」

 先人の野球哲学を徹底的に勉強した努力家である栗山監督。WBCでの采配には感動しました。
WBCの感動が消えない中で、パティシエ世界大会の再放送を遅ればせながら見ました。
結果を知らなかった私は、この3人ではメダルもだめだと放送前半では思ってしまいました。
日本での準備段階で、日本代表の3人に対して先輩パティシエの酷評が続きます。
「どこまで俺が言っても、お前が変わらなかったら何も変わらないんだよ。」

パリでの本番では、日本チームに対して大会主催者側のミスが続きます。
コンセントの不具合、冷凍庫の温度設定の故障...。
しかし日本チームは主催者側に文句も言わず、責任転嫁も考えず、柴田は「こんなところで
負けてたまるか。絶対に負けん。」
アクシデントに対して「初めて経験する事が起きてしまった。しかし絶対に大丈夫。」
チーム全体でギリギリ助け合います。また、努力家の三人には引き出しが多くありました。
鈴鹿は先輩の意見を聞きつつも、最後は自分の意志を変えずに崩壊するかもしれない大きな
飴細工のクジラを作りあげました。
最後の優勝の瞬間は、WBC準決勝の村上の逆転打と同様に涙が出るほど感動しました。
勝利インタビューに高橋は答えて「我々にはスターがいません。互いを信じてチームワークで
乗り切りました。」と締めくくります。
最強のスター集団のWBCとはやや趣を異にして、何か清々しい感動を覚えました。
 ただ両集団には共通する点もありました。互いを尊重しリスペクトする点です。
苦しみも勝利の喜びも、全員が共有していたことです。


 凡人の私も、頑固に負けてたまるかと踏ん張って、窮地でも冷静に対応したいものです。
さて問題は、私が指導者として集団以上の器かどうかです...。
まだ時間はたっぷりあります。






日本が見事優勝.pdf












posted by 斎賀一 at 16:26| 日記