2023年04月28日

小児の腸重積・ロタウイルスワクチンとの関係について

小児の腸重積・ロタウイルスワクチンとの関係について

[2008~2020 年度の13 年聞に当院小児科で経験した腸重積症における感染性胃腸炎]
小児科Vol. 64 No.3 2023



50429.PNG



先日、本院でも腸重積の患児が来院しました。
年間に数例経験しますが、エコー検査にて偶然に診断することもあり、気が抜けない疾患です。
また、ロタウイルスワクチン接種の際に保護者の方から腸重積の副反応が心配で質問されます。
今回雑誌「小児科」より論文が載っていましたので、雑誌の宣伝を兼ねてブログします。

 腸重積症は、小児における急性腹症の代表的疾患です。
口側腸管が肛門側腸管に引き込まれて、腸管壁が重なる状態を腸重積と称し、それによって引き
起こされる腸閉塞症が腸重積症と定義されます。
 腸重積症は1歳未満の乳児に好発し、3か月未満の乳児や6歳以上の学童では少なく、男女比は
おおよそ2:1で男児に多いことが知られています。
40例(95%)では、エコー検査にてターゲットサインなどの特徴的所見を認めて腸重積症と診断
したが、残る2例ではエコー所見が乏しく、臨床症状を根拠に診断的治療として、空気整復を
行っています。

全症例で初期治療として空気整復が行われ、41例(98%)が整復されていて、2例で再発を
認めています。
42例中13例(31%)の便検体から病原体が検出され、感染性胃腸炎の関与を認めた。
10例(24%)でアデノウイルスが検出され、うち1例ではカンピロバクターも同時に分離
された。
ロタウイルス、ノロウイルス、サルモネラも各 1例ずつ検出され、ロタウイルス陽性例は
ロタウイルスワクチン未接種であった。
年齢別の病原体検出率では2歳児で病原体検出率が最も高く(56%)、全例がアデノウイルスで
あった。

国内での腸重積症の発生リスクについての検討では、ロタウイルスワクチン導入後に生後3か月
以降で腸重積症の報告数が増え始め、ワクチン導入前後での月齢別リスク比は、3か月児でl.8と
高くなっていたが、統計学的な有意差は認められていない。
RVワクチン既接種例の便検体からロタウイルスは検出されておらず、ロタウイルスワクチン
接種の関与が示唆された症例はなかった。しかし諸外国では、ロタウイルスワクチン導入後から
若干、腸重積症発生率の増加が指摘されている。
国立感染症研究所感染症疫学センターによるわが国のロタウイルスワクチンのベネフィット・
リスク推計では、ロタウイルスワクチンの副反応によって腸重積症が1例生じる。だが480例の
ロタウイルス胃腸炎の入院例が予防できるとされ、ロタウイルス胃腸炎が重症化しやすい乳幼児
にとってロタウイルスワクチンの思恵は大きいと考えられる。






        50429-2.PNG

        50429-3.PNG




 
        50429-4.PNG





   
腸重積症 小児外科学会.pdf


    
    

posted by 斎賀一 at 17:58| Comment(1) | 小児科

2023年04月26日

新型コロナの5類変更について

             新型コロナの5類変更について

   <業務連絡>


    厚労省より、5月8日から5類感染症へ変更の指導が出ています。
   主に療養期間の内容ですが、診療内容にも大きく変更があります。
   24日にコロナ関連の勉強会がありました。
   参加した医師の基本的な考えは従来通りの診療体制を継続するとの事でした。
   この3年間で培った感染症に対する診療は、ニューノーマルとなっています。
   改善すべきは検討を要しますが、実地医家の特徴と任務を堅持してまいりましょう。






   コロナ 厚労省.pdf









posted by 斎賀一 at 18:21| 感染症・衛生

2023年04月25日

COPDガイドライン・2023

COPDガイドライン・2023

Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2023 Report:
GOLD Executive Summary



50425.PNG




 新しいガイドラインは若干の変更がありました。


・診断基準は呼吸器症状、気道および肺胞の組織変化、呼吸機能検査としての一秒量と一秒率
 の3点から判断します。

・COPDをACOPD、BCOPD、ECOPDの3群に分けています。
 Eの意味は exacerbation(急性増悪)のEです。
 ECOPDは14日以内に増悪する呼吸苦、咳嗽と喀痰です。
 気道感染、大気汚染、その他気道の障害が原因です。その重症度は、呼吸苦の程度、呼吸数、
 心拍数、サチュレーションにより決定します。

・繰り返す急性増悪の場合は、CT検査を推奨しています。



個人的に注目した文献の細部を記載しますと

1) 雑誌NEJMの論文を以前の私のブログでも紹介しましたが、呼吸機能の発達のピークは
   若い時で、その後は早い時期から退行していきます。

2) COPDの原因として感染症も重要ですが、その中でも緑膿菌が注目されています。

3) COPDに新しい概念
   Early COPD、mild COPD、young COPD、Pre-COPD、PRISm等がありますが、
   未だ明白な定義と病態は解明されておらず、今後の研究が待たれます。
   PRISmに関しては下記のPDFをご参照ください。

4) 胸部レントゲンでは診断に限界があります。
   ・横隔膜の平坦化、透過性の亢進、血管影のtapering
   ・寧ろ他の疾患との鑑別に有用です。
    CTを推奨しています。

5) 吸入療法が主体ですので、前もってデバイスの教育を十分にしておく事が大事です。
   患者の好みや適応力にも関係してきます。


6) どの吸入を用いるかは、下記の図表を参考にして下さい。

   要点を纏めますと

   ・初期治療はLAMAかLABA
   ・次のステップはLAMA+LABA
   ・次は好酸球を参考にして、吸入ステロイド(ICS)を加える。
    好酸球の基準にはグラデーションがあり、吸入ステロイドが有効の時もあり、
    好酸球の数だけで決めるのは絶対的ではない。
    LABA+ICSの長期使用はあまり勧めない。寧ろ好酸球が多ければ、
    LAMA+LABA+ICSの導入が基本。
   ・LAMA+LABA+ICSの効果が認められない場合や好酸球が増多していない場合は、
    経口薬のroflumilast(日本では上市されていないようです)を処方。
    喫煙者でない場合はジスロマックを処方。

7) COPDは慢性気管支炎の合併が27~35%存在します。

8) ECOPDは結局のところ、臨床家の事後評価です。
   初期治療ではSABAもしくはSAMAを使用する。

9) 経口ステロイドも有効で、40mgを5日間が基本です。
   好酸球増多がない場合は、効果が乏しいようです。

10) 抗生剤はアモキシリン+クラバモックス。
    時にマクロライド、キノロン系を使用します。

11) 心血管疾患で選択制のβ1-ブロッカーの適応があれば、COPDが合併している場合に
    使用してもよい。
 
 




        50425-2.PNG




           50425-3.PNG




        50425-4.PNG



 
 
  

私見)
 本ガイドラインから、本院が参考になった点は

 ・吸入のデバイスの指導は出来れば事前に時間を掛けて、患者さんの好みを把握しておく
  ことが大事です。
 ・好酸球は変動します。慢性気管支炎、喘息、COPDの患者さんには定期的に末梢血液像から
  好酸球の変動を調べておくことが大事です。
 ・COPDの診断には患者さんの呼吸器症状の診察と、鑑別疾患の検索が大事です。








COPDガイドライン.pdf

PRISm 呼吸器内科医.pdf

Japanese_CAT_combined.pdf








posted by 斎賀一 at 12:38| 喘息・呼吸器・アレルギー