心拡張不全(HFpEF)の総説
Heart FailureWith Preserved Ejection Fraction
A Review
A Review
以前のブログでも心拡張不全に関して掲載しましたが、雑誌JAMAに総説が
載っていましたので、ブログします。
心収縮の機能が保たれている(心収縮率50%以上)の心不全を、心拡張不全と定義しています。心拡張機能の測定は種々提案されていますが、それらを組み合わせて検査をしなくてはなりません。また本論文でも記載していますが、血液検査のBNP(本院ではNTpro-BNP)は絶対的ではありません。あくまでも主体は、心不全
の臨床症状としています。
1) 拡張不全の患者は、年間の入院率が1.4倍増加し、年間の死亡率は15%
で、軽症の心不全との認識ではありません。
拡張不全の病態は、決して心臓だけに限局していません。肺、右心、
血管、腎臓、肝臓、全身の代謝、骨筋肉、臓器のリモデリングなどの
総合的な病態として捉える必要があります。
2) 拡張不全のリスクとして、高血圧、高齢、糖尿病、脂質異常、肥満が
あります。殆どの患者は、高血圧をボーデンとしています。高血圧の
治療により、2〜8年間で最大40%の改善が認められます。高血圧は
心臓肥大、心筋の線維化を誘発し、さらに心筋のstiffness(固くなる)
から心筋拡張機能の低下を招きます。
その他の臓器病変と、代謝の変化が相まって、拡張不全の病態が形成
されます。拡張不全の65%に、心不全の臨床症状が出現します。
安静時、並びに労作時の呼吸困難、うっ血の心不全所見(下肢浮腫、
腹水、経静脈拡張、ギャロップリズムなど)レントゲンと心エコーの
所見等です。
心エコー検査の所見については省略(本院ではIVCD、左房拡張、Tr、
E/A波、TEI指数などを適時簡便に外来では用いています。詳細を期す
場合は、専門の技師の方にお願いしていますのでご理解ください。)
拡張不全の診断に、H2FPEFスコアーの2以上を目安とします。
(本論文及びcirculationより)
急性期では、NTpro-BNPは300以上、慢性の場合は、125以上で拡張
不全を考えます。しかし、クリアランスの問題や、NTpro-BNPが正常
範囲の拡張不全もあり、絶対的な基準ではありません。
しかも、呼吸困難の50〜60%は、心不全ではなく他の疾患です。
3) 拡張不全と言えども、臨床症状がある患者には治療が必要となります。
第一選択薬は、SGLT-2阻害薬(ジャディアンスとフォシーガ)です。
うっ血所見がある場合は、利尿薬を併用します。
心不全の場合は、利尿薬の半減期が変化します。ラシックス(2.7時間)、
ルネトロン(1.3時間)、ルプラック(6時間)ですが、入院率に
関しては、利尿薬の差がありませんでした。
拡張不全と診断後の66%に、心房細動の合併が認められています。
エンレストとアルダクトンAの効果に対しては、明白な結論が
出ていません。
4) 食事制限による体重管理、有酸素運動、食塩制限も基本です。
私見)
心不全の基本は、臨床症状を主体としています。拡張不全の治療の選択肢が増えるほどに、きめ細かな患者さんの訴えが重要となります。AIには任せられません。
本論文.pdf
circulationより.pdf
SGLT-2阻害薬と心不全_.pdf
駆出率の保たれている心不全には塩分制限は.pdf
心不全ガイドライン・2022AHA.pdf
心不全にSGLT-2阻害薬は第一選択薬.pdf
心不全治療薬としての利尿薬・ループ利尿薬.pdf
新しい心不全治療薬を強く推奨.pdf
糖尿病治療薬・フォシーガ.pdf