2023年03月01日

新型コロナ後遺症(long COVID)と抗核抗体

新型コロナ後遺症(long COVID)と抗核抗体

Circulating anti-nuclear autoantibodies in COVID-19
survivors predict long COVID symptoms



5301.PNG



 新型コロナ感染の治癒過程で、10〜20%の人が後遺症を呈すると問題視されています。
急性期には自己抗体が進展し、それが病態の原因の一つとされています。
Long Covidの場合に自己抗体の消退がないか、または新たに自己抗体が生じた場合(de novo)
との関連性が指摘されています。
long Covidと自己抗体の抗核抗体(ANA)と血管系の因子(TNF-α,D-dimer)について調べた
論文が掲載されています。


1) 新型コロナ感染後の、回復期の患者106名を対象にしています。
   回復後、3,6,12か月に検査をしています。
   それぞれの時点で症状を記載しています。 (倦怠感、咳嗽、労作時呼吸困難)
   比較対象として、正常の人(22人)、他の感染性呼吸器疾患(34人)を調べています。

2) 結果
   ANAは回復期の3か月が一番高値で、3〜12か月にかけて平均3.99から1.55に減少して
   いました。しかし30%が12か月後まで陽性でした。
   興味があるのはlong Covidの12%が3、6か月時点では陰性でしたが、12か月の時点で
   ANAが陽性になっており、de novo型を示唆します。
   継続してANAの陽性者は、倦怠感、咳嗽、労作時呼吸困難が強い傾向でした。
   TNF-αとCRPは、12か月後にANA高値の予測因子でした。   
   またTNF-αとD-dimerは、12か月後の症状と関連性がありました。

3) 結論
   一般的な感染症でも初期にはANAが陽性ですが、暫くすると消退します。
   新型コロナの場合にANAが持続する事とlong Covid との関連性が示唆され、12か月後も
   持続するANA陽性は、long Covidの一部を示している可能性があります。






        5301-2.PNG


        5301-3.PNG
   







私見)
 本院でもコロナの後遺症を訴えて来院される患者さんがいます。
 私の印象にすぎませんが、20%もいない感じです。
 Long Covidの病態と診断方法に関して研究がなされていますが、かなり専門的です。
 本論文のANA,CRP,D-dimerを適時測定する事なら本院も可能のようです。
 しかし、あくまでも十分に注意した問診が基本かもしれません。










long covid Circulating anti-nuclear autoantibodies in COVID-19 survivors predict long COVID symptoms.pdf









posted by 斎賀一 at 18:44| 感染症・衛生