2023年03月10日

子宮頸がん(HPV)ワクチンは中年(27~45歳)にも推奨

子宮頸がん(HPV)ワクチンは中年(27~45歳)にも推奨

Clinical and Public Health Considerations for HPV Vaccination
in Midadulthood: A Narrative Review



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 2019年にアメリカでは27〜45歳の中年(midadulthood)にHPVの接種を推奨してきま
したが、未だ接種率が上がっていないとの事です。
IDSAの雑誌からメタ解析のnarrative reviewでの報告です。


・HPVは肛門性器の癌、咽喉頭の癌、肛門性器のいぼ(コンジローマ)、呼吸器で繰り返す
 乳頭腫の原因ウイルスです。
 HPVは200種類ありますが、その内12種類が発がん性のポテンシャルが高いと言われて
 います。
 日本でも採用された9価ワクチンは、子宮頸ガンと肛門性器のガンの90%を予防できると
 されています。

・アメリカのFDAは、2018年に9価ワクチンを27〜45歳にも拡大して推奨しています。
 4価では中年(midadulthood)に安全性と効果が証明されていますが、9価は未だ証明
 されていませんが、有効性が類推できるとしています。

・以前の報告では効果は35〜45歳で84%、24~34歳では91%と若干の低下はあるものの、
 それ程の差異はないようです。効果期間は10年とされています。
 男性の場合、27〜45歳で4価ワクチンによる陽性化を100%認めています。

・Midadultでは、ワクチンを接種していない場合は9価ワクチンの中の少なくとも1つには
 感染の機会があります。それに対して集団免疫の効果があるかのエビデンスはありません。
 ワクチンによる抗体価は女性で10年、男性で5年と推測されています。
 接種率が17歳で65%以下を考えますと、midadultでの接種は集団免疫の立場からも推奨
 すべきです。

・更にmidadulthoodでの新しいパートナーの獲得や、コンドームなしの性交渉などの現代
 からも、HPVのリスクの増加が懸念されています。







私見)
 論文では、臨床家と接種者との間での積極的なコンセンサスが大事としています。
 パートナーを信じつつも、御身大事からmidadulthoodでもワクチンは接種すべきかも
 しれません。集団免疫の必要性から、接種率を上げる事が必須です。






HPV adult.pdf






posted by 斎賀一 at 10:33| ワクチン

2023年03月08日

重症ツツガムシ病にジスロマックとビブラマイシンの併用

重症ツツガムシ病にジスロマックとビブラマイシンの併用

Intravenous Doxycycline, Azithromycin,or Both for Severe Scrub Typhus
[n engl j med 388;9 nejm.org March 2, 2023]


  
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 ツツガムシ病を最初から念頭に置かなくては診断の遅れとなります。
発熱と発疹で、ツツガムシ病と日本紅斑熱を疑います。そのためにも安易な抗生剤を初期で投与する事は、薬疹を除外するため控えなくてはなりません。日本では、ツツガムシ病は殆どが軽症との事ですが、しかし、今回雑誌NEJMからの文献では、対岸の火事ではなく、日本も楽観視出来ないようです。


 1) 未治療の場合に、ツツガムシ病の死亡率は6%と言われていますが、
    70%は重症例となります。多臓器不全を起こし、入院例の1/4は
    死亡の転帰となります。重症例に対する治療のランダマイズされた
    研究は、今までありません。

 2) 18歳以上で、重症ツツガムシ病の患者1684人が対象です。
    平均年齢は48歳。合併症としては、呼吸器系が62%、肝臓が54%、
    心血管系が42%、腎臓が30%、神経系が20%でした。
    重症例とは、少なくとも一器官が障害されている場合です。
    主要転帰は、28日での何らかの死亡例、7日以上の合併症(心血管系、
    呼吸器系、中枢神経系、肝臓、腎臓)、5日経過する発熱です。
    二次転帰は、ICUの入室期間、入院期間、人工呼吸器、回復期間です。

 3) ビブラマイシン静注、ジスロマック静注、これら2剤の併用の有効性を
    比較しています。患者を、7日間のコースでビブラマイシン静注を行う群、
    ジスロマック静注を行う群、ビブラマイシン静注とジスロマック静注を
    行う(併用療法)群のいずれかに割り付けました。

 4) ビブラマイシン静注とジスロマック静注の併用療法は、重症ツツガムシ病
    の治療選択肢として、それぞれの単剤療法よりも優れていました。
 


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 5) ジスロマックとビブラマイシンの併用が有効なのは、細菌のリボゾームに
    おける、メッセンジャーRNAの抑制の機序が異なっているためと推定して
    います。ジスロマックとビブラマイシンともに、組織移行性は高く、
    血液濃度の数倍とも言われています。しかし、ジスロマック場合は、
    細菌のDNAのクリアランスは迅速であり、その点、リケッチアにも有効の
    ビブラマイシンを追加する事の意味があるとしています。



私見)
 本院では、マイコプラズ症の治療ではジスロマック耐性が認められており、与薬は控えています。代替として、成人ではミノマイシン、小児ではビブラマイシンを採用しています。ツツガムシ病では、早期の治療が必須です。下記の「今日の臨床サポート」によると、日本では耐性が現段階では問題視されていないようです。
 実地医家の初期の経験的治療として、ミノマイシン、ビブラマイシン、ジスロ
マックの単独処方することも考えられるようです。
 下記に、以前の私のブログからツツガムシ病の資料を掲載します。同時に「今日の臨床サポート」を宣伝を兼ねて拝借します。いつも申し訳ありません。




日本紅斑熱 ツツガムシ病.pdf

ツツガムシ病11.pdf

ツツガムシ病 今日の.pdf









posted by 斎賀一 at 21:15| 感染症・衛生

2023年03月06日

肝硬変から肝細胞癌の発生頻度

肝硬変から肝細胞癌の発生頻度

<短 報>
Risk factors for HCC in contemporarycohorts of patients
with cirrhosis :Hepatology



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 肝硬変の患者に絞って、肝癌発生を調べた論文が掲載されていましたのでブログします。


1) 肝硬変患者の2,773名(平均年齢60.1歳)が対象です。
   内訳はC型肝炎ウイルス活動群が19.0%、ウイルス治療治癒群が23.3%、
   アルコール性肝硬変が16.1%、非アルコール性脂肪肝が30.1%です。
   肝癌が発生、肝移植、死亡まで経過を追っています。
   統計学的には、毎年7,406名を追跡調査することになるそうです。

2) 年間の肝癌発生は135名で、1.82%/年でした。
   ウイルス治療治癒群の肝癌発生率は、1.71%/年
   アルコール性肝硬変では、1.32%/年
   非アルコール性脂肪肝では、1.24%/年でした。

3) 明らかに肝硬変患者でも非アルコール性脂肪肝では肝癌発生は低いのですが、
   その非アルコール性脂肪肝と比較しますと、ウイルス治療治癒群でも危険率は2.04倍、
   喫煙での危険率は1.63倍、体重増/肥満が1.79でした。

4) 以前の報告からすると、肝癌発生頻度は低い結果でした。
   危険因子として喫煙、肥満が挙げられています。
    




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私見)
 DAAによりC型肝炎が治ったと安心しないでください。
 喫煙、肥満、アルコールに注意しましょう。高々、10年間で1.5割の肝癌発生です。
 何事ものんびり構えて、血の一滴まで頑張りましょう。










Risk factors for HCC.pdf

C型肝炎治療薬.pdf

肝細胞癌_.pdf










posted by 斎賀一 at 18:28| 肝臓・肝炎