2023年03月18日

5〜11歳のコロナワクチンの間隔

5〜11歳のコロナワクチンの間隔

COVID-19 Vaccine Effectiveness Against
Omicron Infection and Hospitalization



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 小児は新型コロナ感染による入院率が低く軽症と言われていますが、小児の場合、入院する
症例は殆どがワクチン非接種者です。
5〜11歳でのワクチン効果とワクチン間隔を調べた論文は、今まであまりありませんでした。
 それに関してカナダからの報告です。
従来カナダでは、1回目と2回目の接種間隔は3〜8週と決められています。
日本では原則として、3週間の間隔を推奨しています。遅れた場合はなるべく早期に接種する
ことも勧めています。


1) 2022年1月2日より8月27日の間に、コロナ陽性者6,284名と陰性者8,389名を調べ
   ワクチン効果を見ています。

2) ワクチンの臨床症状での効果として、2回接種後では7〜29日後で66%です。
   ワクチン間隔として調べますと、間隔が56日以上ではその効果は57%で、
   間隔が15〜27日で12%、28〜41日で38%でした。
   しかし、全ての群で経過とともにワクチン効果は減弱しています。
   重症化の予防効果は94%ですが、120日以上経過で57%まで低下します。

3) 結局ワクチンの予防効果は、オミクロン株には5〜11歳の重症化に対してはありますが
   症状に対する効果は、4か月後急速に低下します。
   従来推奨されている間隔より延長された56日では、症状に対する予防の効果が
   2回接種後の90日後までありました。






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   (A図は間隔が開くほど効果があります。B図は2回接種後の経過時間を色分けし、
    2回目の接種間隔と比較しています。何れにしましても、120日経過すると、
    その効果は減弱します。)







私見)
 本院では厚労省の方針通り、3週間で2回目の接種を勧めます。
 しかし、小児は感冒などの疾患に罹患しやすいので、慌てず体調の良いときに8週間(2か月)
 までには接種するよう指導したいと思います。
 なお、3回目のブスター接種は2価のオミクロン対応ワクチンが、日本でも承認されています。
 下記にPDFを掲載します。








コロナワクチン 小児 本論文.pdf

5〜11歳厚生労働省.pdf












posted by 斎賀一 at 15:54| Comment(0) | 小児科

2023年03月15日

1型糖尿病にもSGLT-2iとGLP-1RAの併用は効果的

1型糖尿病にもSGLT-2iとGLP-1RAの併用は効果的

Glucagon-like peptide-1 agonists combined with sodiumglucose
cotransporter-2 inhibitors reduce weight in type 1diabetes



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 1型糖尿病は内因性インスリンの分泌が低下しており、インスリン療法が基本の病態です。
従って、GLP-1RAは適応外と認識しておりました。
 今回SGLT-2iとGLP-1RAの併用を、1型糖尿病に行った論文が掲載されています。
インスリン療法は糖尿病治療の主流ですが、低血糖と体重増加が懸念されます。
2型糖尿病ではSGLT-2iとGLP-1RAが、現在では主要な治療薬となっています。
GLP-1RAは血糖値に依存してインスリンの分泌を促し、グルカゴンの分泌も抑制します。
また食欲の抑制効果もあります。
SGLT-2iは腎臓の尿細管での糖の再吸収を抑制し、インスリンの作用とは無関係で尿糖を
増加し、低血糖を起こさずに血糖を低下させます。
また体重の減少、心筋梗塞、心不全に対しても有効です。
しかし当初より、両者の併用は糖尿病ケトアシドーシスを誘発しないか懸念されていました。


1) 本論文では、対象の1型糖尿病は内因性インスリンが枯渇していることをCPR測定で
   確認しています。
   インスリン療法を行っている1型糖尿病患者296名を登録しています。
   コントロール群(インスリン療法)が80名、SGLT-2iが94名、GLP-1RAが82名、
   両者併用が40名です。
   治療開始から1年間を経過観察し、体重とHbA1cの変化を見ています。

2) 結果
   (下記のグラフをご参照ください。)
   GLP-1RAとSGLT-2iは、体重減少とHgA1cの改善にともに効果がありましたが、更に
   その併用は効果が増大しています。低血糖を含めた副反応は全ての群で同じでした。
   また、糖尿病ケトアシドーシスの頻度も増加しませんでした。

3) 考察
   3群ともインスリンの量を減少出来ています。
   SGLT-2iとGLP-1RAとの作用機序の違いが、併用効果をもたらしているとしています。
   低血糖の報告は、GLP-1RAと併用療法では同じですが、SGLT-2iとコントロール群では
   倍でした。併用療法の場合には、インスリン量が同じ場合に低血糖が起きています。






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私見)
 本日、市原医師会の糖尿病研究会(三村会長)が開催されました。
 GLP-1RAの作用は多方面のようで、単に膵臓に作用してインスリン分泌を促すばかりでは
 ないようです。近々文献を整理してブログします。








本論文.pdf











posted by 斎賀一 at 19:09| 糖尿病

2023年03月13日

子宮頸がんワクチン(HPV)の早期導入(9~10歳)

子宮頸がんワクチン(HPV)の早期導入(9~10歳)

Early Initiation of HPV Vaccination and Series Completion
in Early and Mid-Adolescence



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アメリカのCDCは11〜12歳の導入を推奨していますが、9歳からの開始も表明しています。
日本では公費負担の対象は、小学6年生(11〜12歳)との記載です。(下記PDFを参照)
アメリカでもHPVワクチンの接種率が向上していないようで、2021年の時点で13〜17歳の
接種率は依然として61.7%です。
集団免疫の観点から、目標は80%以上です。もしも開始を9歳にしたら、接種率が上がるかを
検証した論文が、雑誌Pediatricsに掲載されています。


1) 開始年齢9〜10歳を11〜12歳と比較しています。
   9〜12歳に接種した19,575名を集計し、15~17歳時点での接種率を調べています。

2) 13歳時点での接種率は、9〜10歳群が74%で、11〜12歳群が31.1%
   15歳時点では9〜10歳群が91.7%で、11〜12歳群は82.7%でした。
   早期導入の方が勝っているようですが、接種3年以内での接種率を比較しますと、
   9〜10歳群が82.3%で、11〜12歳群が84.9%とやや低下しています。

3) 本論文では接種期間の延長を計画した「time pathway」か、接種開始を早めた
   「development pathway」かの問題提起をしています。
   明白な結論には達していませんが、本論文では接種率の向上のために、9歳からを推奨
   しています。








私見)
 日本では、子宮頸がんワクチンの再開までに紆余曲折がありました。
 開始年齢を下げる事は、副反応の保証と自己負担の問題でかなりの壁があります。
 本院でも子宮頸がんワクチンの再開から何ら問題がなく、接種時の疼痛も極力可能な細い針を
 使用することにより軽減されています。
 現段階では、実地医家としては接種することの意義をアナウンスしてまいります。










本論文.pdf

HPVワクチンに関するQ&A|厚生労働省.pdf

IZSchedule7-18yrs.pdf












posted by 斎賀一 at 17:31| ワクチン