フォシーガの心不全における費用対効果
〜患者さん並びに職員勉強編〜
Cost-effectiveness of Empagliflozin in Patients With
Heart Failure With Preserved Ejection Fraction
糖尿病治療薬のフォシーガは心不全にも有効との事で、心不全の治療を開始するための4本柱
として、エンレスト、ベータ遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に加わり、最近特に
処方されていますが、駆出率が40%以上と保たれている心不全(HFpEF)には費用対効果が
乏しいのでは、との論文が雑誌JAMAに載っています。
以前の私のブログでも紹介しましたが、NEJMの論文ではHFpEFにフォシーガを投与すると、
心不全の入院率と、心血管疾患の死亡率を低下させるとの報告から、フォシーガがHFpEFにも
処方されてきています。EMPEROR研究と同じモデルでその費用対効果を調べています。
1) 先ずは前知識として費用対効果を見る場合には、QALY(質調整生存年)と増分費用
効果比(ICER;incremental cost-effectiveness ratio)が指標となるとの事で
ネットにより勉強しました。下記のPDFをご参照ください。
QALYは心不全をQOLとして捉えています。1年間全く健康で過ごした場合をQALYが1と
します。死亡した場合は0です。
1QALYを得るためのコストがICERです。ICERが500万円までならその薬は費用対効果が
あるが、1,000万円以上の場合は費用対効果が低いとの判断になります。
(下記のPDFをご参照ください。)
2) フォシーガをHFpEFに処方した場合には、心血管疾患の死亡が9%削減でき、QALYは0.06
改善します。しかし1QALYに換算した費用(つまりICER)は$437,442となります。
フォシーガがプライスダウンすれば$174,000となります。
3) 円安と相まって当然、コストの閾値を超えています。
私見)
現時点では、HFpEFに対する処方は標準治療が主体で、BNPの上昇に加えて駆出率の低下傾向
の場合にはフォシーガのアドン療法となるかもしれません。
ガイドラインに従うと、エンレストはその先の戦術でしょうか。
本院では、心不全傾向で糖尿病患者さんにはSGLT-2阻害薬、高血圧患者さんにはエンレストを
アドンする方式にしていますが?
本論文 フォシーガのコスト.pdf医療の費用対効果を考える.pdfいのちの値段 QALYとICER.pdf「費用対効果評価」の基礎知識.pdf