2022年12月28日

この冬はTripledemicか?

この冬はTripledemicか?

 
Flu, RSV, and COVID: The Pediatric 'Tripledemic'



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 この冬はRSウイルス、インフルエンザ、新型コロナの3つの呼吸器感染症が同時に流行する
可能性が指摘されています。アメリカでは、既に小児で流行が起きているとの事です。
MedPage Todayからブログします。


1) アメリカでは、この数週間でRSと新型コロナの感染が小児で流行し、入院率も上がって
   いるとの事です。
   やがてインフルエンザの本格的な流行期を迎えると3者の同時流行ともなり、筆者は
   “Tripledemic”と造語して警告しています。

2) 小児の救急での喘息発作の頻度は、このコロナ禍で減少しています。
   マスクの着用、家庭での隔離、ディスタンスの効果と考えられます。
   しかし、今や世界はウイズコロナとなり、マスクもせず屋外での活発な活動が増えれば
   呼吸器感染症も増加し、長引く咳と共に喘息の誘発も起きてきます。
   新型コロナとRSは、喘息を誘因する感染症と指摘しています。
   (喘息の誘因としては、RSはやや後退しマイコプラズマが上がっています。)

3) 免疫機能の負債が同時感染を引き起こし、増悪化するという実験結果もでています。
   しかし筆者は、その機序についてはやや疑問を呈しています。

4) 小児のRSの重症例は、頻度としては少なく経過は良好なのですが、ひとたび重症化すると
   致命的ともなります。
   常に活動性の低下、呼吸数、顔色、喘鳴、not doing wellに保護者は注意して、救急での
   受診に備えなくてはなりません。
   小児の呼吸器感染症を甘く見てはなりません。

5) 溶連菌感染症の合併も念頭に置かなくてはなりません。
   急性中耳炎、化膿性咽頭炎の合併です。
   新型コロナによる細胞免疫機能の変化が、細菌感染に影響するとのデータは未だ不十分
   です。
   “生き延びたら強くなっている” との古くからの格言は誤りです。






私見)
 とうとうインフルエンザの流行期に入りました。
 医療の逼迫を懸念し、政府も対策を講じています。しかし却って問題点も生じかねません。
 本院では出来る限り、従来の診療体制に即して参りましょう。
 職員のここ数年の協力に感謝しています。
 RSとヒトメタニューモウイルスは収束傾向で、ややホッとしています。





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               インフルエンザは流行期の兆し





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              RSは収束傾向で本院でも実感しています。





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             ヒトメタニューモウイルスも収束しています。







Flu, RSV, and COVID_.pdf

1 12月23日 インフ報告.pdf

2 RS 情報.pdf

3 ヒトメタニューモウイルス情報.pdf












posted by 斎賀一 at 19:50| 感染症・衛生

2022年12月26日

至適血圧の変遷

至適血圧の変遷

Should We Change Target Blood Pressure?



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 高血圧の治療目標の変遷を記した記事が、MedPage Todayに載っていました。


1) 私たちが医学生の時は、年齢+100が治療目標でした。
   高齢者は高血圧に耐えられるとする考えは、SHEP研究が出され一蹴されました。
   その後は140/90が全ての年齢に適応される時代が続きます。

2) SPRINT研究が発表され、血圧の積極的治療の優位性が証明されました。
   140でなく120に下げた方が、心血管疾患の発生が抑制されたためです。
   しかし多くの患者が140から130に目標を定めた程度で、120は全ての患者には適応
   されていません。
   ガイドラインの勧奨を無視する形で、多くの患者さんが未だに140/80を目標に治療
   されています。

3) 中国からの報告では、高齢者も血圧が低ければ低い方が良しとする結果を報告して
   います。

4) 最近のJAMAの報告では、SPRINT研究の様に120に血圧を下げた方がベネフィットが
   高いが、その効果はそれ程長続きせず、血圧が元に戻て高くなって10年経過すると、
   利点は消失してしまいます。

5) 薬の副作用に関して十分な管理をし、患者さんとの同意を得る努力を臨床家は続け、
   120を目標に掲げなくてはなりません。






私見)
 血圧は従来通り“the lower is the better”との事です。
 「まあいいか」ではなく、一歩も二歩も踏み込んで、患者さんの全身の動脈硬化、眼底検査
 等を総合的に判断し、積極的治療に進むべきかもしれません。









Should We Change Target Blood Pressure_ _ MedPage Today.pdf









posted by 斎賀一 at 18:06| 循環器

2022年12月23日

クルミは女学生のストレスを改善します。

クルミは女学生のストレスを改善します。
 
The Effects of Walnuts and Academic Stress on Mental Health,
General Well-Being and the Gut Microbiota in a Sample of University Students


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クルミを食べると、特に女学生は勉学のストレスが軽減されるとの論文が出ています。
サマリーだけを読んでブログします。


1) 80人の大学生を、クルミ群とコントロール群に分けています。  
   75%が女学生です。クルミ群はクルミを毎日56gr(半カップ)16週間食べます。





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   学期の初め、試験期間中、試験後の2週間3つの間隔で評価しています。




2) 結果を纏めますと
   学習ストレスは、メンタルヘルスにマイナスの影響を及ぼします。
   学習ストレスは、大学での試験期間中の精神的ストレスと、うつ状態の自己申告のスコ
   アーのレベルを増加させました。 
   クルミの毎日の摂取は、メンタルヘルスの改善に作用しました。
   クルミを毎日摂取すると、総タンパク質とアルブミンのレベルが上昇し、学業に対する
   ストレスに対抗し、保護される可能性があります。
   代謝バイオマーカーに対する学習ストレスの悪影響に対して調べましたが、コルチゾール
   やアミラーゼなどのストレスバイオマーカーは、変化させませんでした。
   しかし、毎日のクルミの消費はα-アミラーゼレベルを低下させ、ストレスに対抗している
   ことを示唆しています。
   学習ストレスは、女性の腸内細菌叢の多様性の低下に関連していますが、くるみを毎日
   食べると、多様性が回復できる可能性があります。
   またクルミの消費は、長期的に睡眠を改善する可能性もありました。





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私見)
 本論文のlimitationは規模が少数である事と、男子学生は不明です。
 しかし取り敢えず、クルミを置いておきます。
 深い意味はありません。私も食べてみますから。






ナッツ.pdf






posted by 斎賀一 at 18:08| 脳・神経・精神・睡眠障害