2022年09月30日

従来型ワクチンのブスター接種後の有効期間

従来型ワクチンのブスター接種後の有効期間
 
Durability of Booster mRNA Vaccine against SARS-CoV-2
BA.2.12.1, BA.4, and BA.5 Subvariants



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 4回目のブスター接種を行った方のワクチンの有効期間を調べた報告が、雑誌JAMAに掲載
されています。オミクロン対応のワクチンが今後2種類予定されていますが、本論文は従来型
ワクチンのブスター効果についての報告です。
オミクロン株は武漢変異型に比べてワクチンの作用をすり抜けて(エスケイプ)、その効果を
減弱させると言われています。
ブスター接種の1〜3、4〜6、7〜9か月後の中和抗体を調べています。


1) ブスター接種をした参加者はファイザーワクチンが24名、モデルナワクチンが22名です。
   14名が(14/46)がブレイクスルー感染をしています。
   全ての新型コロナウイルスに対する中和抗体は、ブスター接種後1〜3か月後のほうが
   7〜9か月後に比べて1.7倍多い結果でした。(逆に言えば1.7倍低下しています。)

2) 30日後の中和抗体の低下率は武漢変異型で17.53%、オミクロン変異はBA.2.12.1で
   18.44%、BA4/5で19.55%と、その低下率は増加しています。
   新型コロナに感染した人の場合は、その後のブスター接種によって中和抗体が一層増加
   しています。所謂ハイブリット型です。





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私見)
 オミクロン株対応のワクチンによるブスター接種が始まっていますが、概ね従来のワクチンと
 同程度と考えています。
 下記のグラフからBA4/5では4〜6か月で効果は減弱していますが、オミクロン対応では若干
 マシかもしれません。






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        (点線以上が有効値)


 ウイズコロナが叫ばれていますが、本当の意味では一般的な経口薬が市上されてからだと
 思います。









コロナワクチンDurability of Booster mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 BA.2.12.1, BA.4, and BA.5 Subvariants.pdf









posted by 斎賀一 at 20:39| ワクチン

2022年09月27日

オミクロン対応ブスターワクチンに対する見解

オミクロン対応ブスターワクチンに対する見解

<その2>

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 MedPageTodayとJ.watchに、ファイザー社とモデルナ社の2価ワクチンに対する最新情報が
出ていました。簡単に纏めてみます。


§MedPageToday

ワクチンの承認機関ACIPによりますと、最新の2価ワクチンは従来型にオミクロンBA.4とBA.5を
追加した成分が含まれています。(今回、日本で実施される2価ワクチンは従来型+BA.1です。)
委員の投票で13対1の賛成多数により最新の2価ワクチンが承認されたとの事ですが、その多くの
メンバーはこの新たな2価ワクチンの展開には躊躇したそうです。

反対したメンバーの一人が述べています。
「人体での報告が未だ十分に発表されていないのが気になります。新しいワクチンは常に慎重に
検討されてきました。それでもそれを受け入れてきた歴史も私は承知しています。全く反対して
いるのではありません。これは感性の問題です。」
論評した別の委員からはインフルエンザワクチンを例にとって、述べています。
「インフルエンザはシーズンによって型が変化するが、その安全性と臨床効果を検証せずに採用
しています。」
別の専門家は述べています。
「ワクチンが入院率や死亡率を削減していることを認めながらも、躊躇して承認に賛成した。」
ACIPの座長は「承認が遅れればBA.4とBA.5による死亡例と入院例の増加に繋がる。」と警告も
しています。
多くのメンバーが悩みながらも、2か月の間隔で新しい2価ワクチンの承認に賛成票を投じて
います。勿論6か月猶予のケースも当然あります。

一方で、メーカー側からは人体での臨床結果は、ヨーロッパのBA.1の2価ワクチンの結果報告
から新しい2価ワクチンは推測できると述べています。



§Journal watch

二つの2価ワクチンは、何れも臨床データは現在調査進行中です。
動物実験と予備研究において何れの2価ワクチンも、中和抗体は従来のウイルス及びオミクロン
変異に対しても高値に誘導しています。そして、その有効期間に関しても現在調査中です。
またアメリカのFDAが承認したBA.4とBA.5に対する2価ワクチンは、現在世界のどの地域でも
実施されていません。
2価ワクチンの両方とも、接種後の心筋炎の発生は未だ不明ですが、その他の安全性は従来型と
同じようです。
両方の2価ワクチンは、ブスターとして2か月を開ければよいとされていますが、多くの専門家は
間隔を開けることを推奨していますし、新型コロナの自然感染から、少なくとも3か月は開ける
ことを勧奨しています。
インフルエンザワクチンとの同時接種も推奨しています。
5回目のブスター接種をいつ実施するかも今後の課題です。
ハイリスクの人は秋の早い時期に接種を予定した方が良いかもしれませんが、一般的には冬の
感染症が到来するまでには接種すべきです。







私見)
 アメリカのオープンな議論は、不安を抱える一般の実地医家にとっても参考になり歓迎です。
 インフルエンザワクチン、コロナワクチンがやがて3種類。
 接種時期と対象者の混乱など、ラベリングに関しての注意勧告もありました。
 心して参ります。














posted by 斎賀一 at 19:15| ワクチン

2022年09月26日

オミクロン対応のモデルナ2価ワクチン

オミクロン対応のモデルナ2価ワクチン

<その1>
A Bivalent Omicron-Containing Booster Vaccine against Covid-19
[This article was published on September 16, 2022, at NEJM.org.]



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 雑誌NEJMに、オミクロン対応のモデルナ2価ワクチン(mRNA-1273.214)の文献が掲載
されています。


1) モデルナ2価ワクチン(mRNA-1273.214)をブスターとして接種し、28日後の安全性、
   反応原性(局所反応などの接種による有害事象)、免疫原性(ワクチンによる有害事象)
   を調べています。

2) 結果
   ブスター接種としてモデルナ2価ワクチン(従来のワクチン+オミクロンBA.1対応
   ワクチン)の437例と従来のワクチンmRNA-1273の377例を比較しています。
   最初と2回目のブスター接種の間隔は、平均で2価ワクチン群は136日に対して、従来
   ワクチン群では134日とほぼ同じでした。
   オミクロンBA.1に対する中和抗体は2価群で2372.4、従来群では1473.5です。
   更にオミクロンBA.4とBA.5に対する抗体も、2価群では727.4、従来群では492.1
   でした。
   またアルファ株、ベータ株、ガンマー株、デルタ株においても2価群の方が優勢でした。  
   有害事象も、反応原性と免疫原性ともに両群で差はありませんでした。 
   臨床の場でのワクチン効果は、本研究では不明です。

3) 結論
   中和抗体は2価のワクチンの方が明らかに誘導し優勢です。
   更に安全性の懸念も従来と同じでした。

   下記に有害事象のグラフを掲載します。




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   下記に中和抗体のグラフを掲載します。




        40926-3.PNG








  
私見)
 従来のワクチンでも十分に効果はあるものと考えます。
 臨床的有効性と有効期間は今後の研究によりますが、2価と言えども有害事象は同程度です。
 接種可能なワクチンを優先してください。
 再度、厚労省のガイドラインを下記に掲載しますが、ファイザーの2価ブスターもモデルナと
 同じものと考えます。





オミクロン株ワクチン 厚労省.pdf








posted by 斎賀一 at 20:38| ワクチン