2022年05月13日

新型コロナ(long COVID)の神経症状

新型コロナ(long COVID)の神経症状

Neuropathology and virus in brain of SARS-CoV-2
infected non-human primates



40513.PNG



 長引くコロナ感染症状の主な原因として、血管の内皮細胞の機能不全が挙げられています。
特に神経病理所見として、虚血と炎症が若い患者さんに注目されています。
長引く神経症状として倦怠感、めまい、頭痛、認知機能の低下が数か月続く場合をlong COVID
と定義しています。
どのような神経病理所見が認められるかを実際に証明する事は、重症患者での死亡例で得た病理
解剖でしかありません。

 今回、人間に近いサルでの実験結果が公表されています。
かなり専門的な内容なので、結論だけをまとめてブログします。


1) 8例のnonhuman model(さる、RMとAGMs)での実験では、コロナ感染をした群で
   重篤な呼吸器症状を呈していない例を選んでいます。
   主な神経症状は微小出血、微小血栓、脳の虚血が主体です。
   免疫細胞の関与よりは炎症の分子マーカーが増加していました。

2) 障害は神経細胞とグリア細胞(特にアストロサイトとミクログリア)の両方に認められて
   います。(アストロサイトは灰白質と白質の両方に存在し、原形質性と線維性の両方が
   ありますが、何れもその突起は血管に纏わりついていて血管との関連性が重要視されて
   います。)
   障害部位は脳幹、小脳に多く認められています。
   しかもその障害は非可逆性の可能性があります。

3) ウイルスのRNAは脳内には少量ですが、髄液中には認められていません。

4) 人体の剖検例の所見と本実験結果は、ほぼ同様の結果でした。
 





私見)
 若い人の長引く神経症状として倦怠感、めまい、頭痛、認知機能の低下を把握するのは
 患者さんも医療サイドもかなり困難が予想されますが、十分な慎重な問診が欠かせない
 ようです。







Neuropathology and virus in brain of SARS-CoV-2 infected non-human primates.pdf









posted by 斎賀一 at 20:25| 感染症・衛生

2022年05月11日

原因不明の小児重症急性肝炎

原因不明の小児重症急性肝炎

・The Alabama Doc Who Sounded the Alarm on Unusual Hepatitis in Kids
・CDC: 5 Deaths, 109 Cases of Kids' Mystery Hepatitis Under Investigation



40511.PNG
 
 

 既に報道で周知のことと思いますが、医療ネットのMedPage Todayに2つのレポートが
ありましたので、ブログします。
また、日本のネットにも情報がありましたので下記に掲載します。


1) 10月中旬にアラバマ州バーミンガムのマーカス・ブッフフェルナー医師は、嘔吐、下痢、
   そして重度の黄疸の症状で入院した幼い子供を診察しました。これは、CDCの調査に繋
   がる一連の最初のものでした。
   小児は明らかな黄疸を呈していました。検査結果はALT、ASTおよびビリルビンの増加を
   認めています。あらゆるウイルス検査をしていますが、唯一アデノウィルスが検出されて
   います。
   当初はアデノウィルスは擬陽性と考えていましたが、数週間後に同様の患児が入院して
   来ました。やはりアデノウィルスが検出されています。
   その後CDCがまとめた9症例は、1歳8ヶ月から5歳9ヶ月の小児患者です。
   新型コロナの感染とは全員が無関係でした。不思議なことに、肝内ではアデノウィルスは
   同定されていません。
   CDCは5月6日の時点で、100例以上の症例と5例の死亡を確認しています。

2) 5月6日の時点で、CDCは109例と5例の死亡を報告しています。
   全ての患児は10歳以下です。肝機能のトランスアミナーゼ(AST,ALT)は500以上に上昇
   しています。
   90%が入院し、14%が肝移植を検討されました。平均年齢は2歳です。
   アデノウィルスが半数以上で検出されています。消化管症状を呈するアデノウィルス41型
   が疑われています。しかし、アデノウィルスが真の原因かは未だ不明です。
   本患児は免疫不全の状態が想定されますが、罹患以前は免疫不全ではありませんでした。
   現在では新型コロナ感染との直接の関連性は否定的です。
   何らかの動物、ペットとの暴露も疑われています。






私見)
 本院でも新型コロナ、感染性胃腸炎において消化器症状で来院される小児が未だ多く見られ
 ます。報告によりますと明白な黄疸を呈しているようですが、黄疸に関しては慎重に診察する
 必要があります。







1 The Alabama Doc.pdf

2 CDC_ 5 Deaths, 109 Cases of Kids'.pdf

3 小児 肝炎.pdf









posted by 斎賀一 at 18:41| 小児科

2022年05月09日

胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープ

 
Longitudinal Ultrasound Assessment of Changes in Size and
Number of Incidentally Detected Gallbladder Polyps



40509.PNG

 

 最近、人間ドックで胆嚢ポリープを指摘され本院に来院された患者さんがいらっしゃいます。
以前のブログと新たな文献もありますので、参考にして下さい。


1) ヨーロッパにおけるガイドラインでは、経過観察によりポリープが2mm増加の場合に
   胆嚢摘出術を勧めていますが、本研究ではその考えはやや保守的として異論を展開して
   います。

2) 2010年1月1日から2020年12月30日までの研究です。
   対象者は肝がんサーベイランスです。
   9,683人の患者の内、753人(8%)に少なくとも1回のエコー検査でポリープを同定
   されています。更にその中の434人が複数回のエコー検査を実施しています。

3) 6mm以下が368例、7〜9mmが52例、10mm以上が14例でした。
   ポリープの数は9%で増加し、14%で減少しています。
   ポリープの大きさは10%で増加し、16%で減少、56%で変化はありませんでした。
   19例で胆嚢摘出術を実施されていますが、胆嚢癌はありませんでした。

4) 考察
   大腸ポリープとは異なり、胆嚢ポリープではシークエンス(ポリープから癌への移行)は
   稀で、しかも腫瘍性ポリープからの癌化は6%とされています。
   人間ドックや本院で見つかる胆嚢ポリープはほとんどがコレステリンポリープで、腫瘍性
   ではありません。
   アメリカ放射線学会では6mm以下のポリープは経過観察の必要はないとしていますが、
   7〜9mmの場合は年に1回の検査を勧めています。
   それでもポリープの増大に関しては、明白にコメントしていません。
   本研究でも胆嚢ポリープは数および大きさにおいて変動を認めており、自然史かもしれ
   ないとしています。






私見)
 取りあえず、日本でのガイドラインを下記に掲載します。

 





       40509.PNG






        40509-2.PNG










胆嚢 原文.pdf

胆嚢ポリープ・文献より.pdf

胆嚢ポリープの予後・20年間.pdf













  
  
posted by 斎賀一 at 19:42| 消化器・PPI