2022年05月27日

卵とピーナッツの食物アレルギーの自然経過

卵とピーナッツの食物アレルギーの自然経過

<短 報>

The natural history of peanut and egg allergy in children up to age 6 years
in the HealthNuts population-based longitudinal study



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 卵アレルギーとピーナッツアレルギーの6歳までのoutgrow、つまり自然治癒に関しての
報告がありました。


1) 1歳時にプリックテスト、血液検査、食物チャレンジテストで卵アレルギー、または
   ピーナッツアレルギーと診断された5,276人を登録し、6歳まで経過をみています。

2) 1歳児でピーナッツアレルギーと診断された156人は、6歳までに29%がoutgrowして
   います。但し、早くからアトピー皮膚炎がひどい人は、危険率が3.23でアレルギーが
   継続し、outgrowに至る率が低下します。

3) 1歳児で生卵のアレルギーがある471人は、6歳までに89%がoutgrowします。

4) 1歳から6歳までの期間で新たに食物アレルギーが発生する率は、ピーナッツが0.7%で
   卵は0.09%です。つまり食物アレルギーの殆どが1歳児までに形成されます。
   結局6歳時での有病率は、ピーナッツアレルギーで3.1%、卵アレルギーは1.2%です。

5) チャレンジテストを含めた耐性化は、治療の選択肢として考慮に入れるべきとして
   います。







私見)
 以前の私のブログでも紹介しましたが、チャレンジテストは低年齢層で始める方が有効と
 されています。診断薬のトリイ製品の発売が中止となり、皮膚テストが困難となっています。
 本院でも戦略を練りましょう。








The natural history of peanut and egg allergy in children up to age 6 years in the HealthNuts population-based longitudinal study - Journal of Allergy and Clinical Immunology.pdf












posted by 斎賀一 at 20:25| 小児科

2022年05月25日

糖尿病治療の第一選択はSGLT-2阻害薬?

糖尿病治療の第一選択はSGLT-2阻害薬?

SGLT2 Inhibitors a Better First Drug in Type 2 Diabetes Than Metformin?



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 本論文にアクセス出来なかったため、ネット情報のみをブログします。
以前の私のブログでも紹介しましたが、心血管疾患がある糖尿病の方はSGLT-2阻害薬が
メトグルコと同等以上に第一選択薬とのガイドラインを紹介しましたが、今回雑誌Annals
of Internal Medicineに、更に踏み込んだSGLT-2阻害薬を第一選択薬として推奨する
論文が出ているようです。
残念ながら現時点で本雑誌にアクセス出来ませんでしたので、概略をブログします。
 アメリカ ボストンからの報告です。

1) 糖尿病の第一選択薬として、SGLT-2阻害薬とメトグルコを、12か月間比較検討して
   います。主要転帰は、心筋梗塞、脳卒中、死亡率です。

2) SGLT-2阻害薬の危険率は、0.96とやや優勢です。
   しかし心不全の発生率は、SGLT-2阻害薬の方が明らかに優勢でした。
   心不全での入院率は20%減で、危険率は0.80です。
   この結果はFDAからの報告の27〜35%減との結果と符合します。

3) SGLT-2阻害薬のこの利点に関しては、ハッキリとしたメカニズムは分かっていない
   ようです。
   ・利尿作用 ・それによる心臓の負担削減 ・心臓の代謝の改善
   ・動脈のstiffnessの削減 ・NA/Hチャンネルの関与
   以上が考えられているそうです。

4) アメリカの学会ADAも当然ながら、メトグルコを含めたライフスタイルの改善、患者優先
   のテイラーメイド医療、など総合的な判断が必要としています。
   ただし、メトグルコを併用するかは別として、患者の心血管疾患を配慮した場合には
   SGLT-2阻害薬とGLP-1作動薬は、選択肢となるとしています。








私見)
 糖尿病の治療は血糖を下げることが目的ではなく、動脈硬化を含めた心血管疾患の予防です。
 しかし、今まで通りに本院ではライフスタイルを含めたメトグルコ、少量DPP阻害薬から漸増
 して参ります。





SGLT2 Inhibitors a Better First Drug.pdf
















posted by 斎賀一 at 18:55| 糖尿病

2022年05月24日

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文

Albuterol–Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue
Inhaler for Asthma MANDALA研究
[This article was published on May 15, 2022, at NEJM.org.]



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 喘息発作の治療に、短期作用β刺激薬(SABA)が主役です。
喘息発作は気管支平滑筋の痙攣が病態ですが、その根底には炎症が存在します。
よってSABAだけでは発作改善には限界があり、逆にSABAの使用頻度が喘息のコントロール
不良の指標ともなります。喘息のガイダンスでもあるGINAも、喘息発作のレスキューとして
SABAと吸入ステロイドの併用を勧めています。
SABAの中でもアルブテノール(サルタノール、ベネトリン)は世界で一番使用されていますし、
FDAに承認されている唯一のレスキューとしてのSABAです。
アストラゼネカのPT027(アルブテノール+ブデソニド)合剤の試験結果が雑誌NEJMに掲載
されています。


1) 中等症以上でコントロール不良の喘息患者のレスキューが対象です。
   12歳以上の患者、3,132名を3群に分けています。
   高容量群 (アルブテノール90μg+ブデソニド80μgを2回吸入)
   低用量群 (アルブテノール90μg+ブデソニド40μgを2回吸入)
   単独群  (アルブテノール90μgを2回吸入)
   期間中に一日に吸入を行った回数は3群とも同じで、1.5回よりも少ないようです。
   また吸入の反応により高容量群と低用量群の間では、個人の判断で変更が可能として
   います。
   4歳から11歳の年齢層では、低用量群と単独群だけで試験を行っています。
   主要転帰は、重症発作時でのレスキューから最初の発作までの時間です。

2) 結果
   97%が12歳以上で実施されています。
   重症発作のリスクは単独群と比較して高容量群が26%軽減(危険率は0.74)
   単独群と比較して低用量群では危険率は0.84でした。
   副反応は3群ともに同じでした。(アルブテノールの容量が同じのためでしょうか) 
 
3) 考察
   本試験はコロナ禍でも実施されました。
   小児の症例が少ないのが残念ですが、今後の研究が待たれます。

4) 結論
   重症の喘息増悪(発作)では、トータルでアルブテノール180μg+ブデソニド160μg
   の固定吸入が有効でした。 




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私見)
 従来より、急性増悪の場合にはサルタノールもしくはベネトリン吸入後にステロイド吸入
 を行っていましたが、合剤が発売になれば治療の選択肢は増えるので、私としては歓迎です。
 取り敢えずは、サルタノール+フルタイド、サルタノール+シンビコート、
 コンプレッサーによるベネトリン+パルミコートも治療戦略でしょうか。







PT027, a novel fixed-dose combination.pdf










posted by 斎賀一 at 20:54| 喘息・呼吸器・アレルギー